第一部、第二部に続きまして、第三部です。
第一部では、政府による「産業政策」の有効性が低く、「競争政策」や「規制緩和」の有効性が高いことについて軽く触れました。
経済発展のためには、旧来の発想から抜け出ることの必要性を直感的に理解していただけると助かります。
第二部では、「規制を導入する難しさ」と「規制を緩和する難しさ」について触れました。
旧来の発想を批判する人達による主張は往々にして正しいこともあるのですが、人々にとって受け入れがたさも同時に持つことを直感的に理解していただけると助かります。
第三部では、ようやく本題の「第3の道」の考え方について触れます。
民主党の政策が旧来の産業政策の枠組みから抜け出せないでいること、規制緩和についての無理解でいることの批判内容について説明してきました。
では、民主党の成長戦略には希望はないのでしょうか。
正直いって現実に打ち出されている成長戦略には大きな期待をもてません。
批判者の指摘がほとんどの場合正しいと思います。
しかし、「第3の道」として主張されている「需要サイドの成長戦略」は決して間違っているものではありません。
これについては批判者の皆様が理解されていないことがありますので説明させていただきます。
(理解しないというより方法論が貧弱すぎて納得できないというべきでしょうか)
民主党が主張する「第3の道」は、「需要の喚起」による「内需の拡大」のことであり「消費の拡大」のことです。
GDPの6割を占める個人消費を拡大することで経済成長を促そうとする考え方です。
「需要を喚起する力は供給側が持つ」「所得を増やす効果が需要側にはない」という批判者のロジックはわかるのですが、ここでいう「需要の喚起」というのは、それとは少し意味が違います。
民主党の「第3の道」をよりよく理解するために、少し説明します。
この部分は話を単純化し過ぎと批判覚悟で書いています。
経済というのはサービスと対価の交換によって成り立っていますが、理論上「交換」は無限に行うことができます。
市場に流通する「マネー」の量が一定だとしても、交換自体は無限に行うことができるのです。
だから市場の実態として、流通している貨幣の量よりもマネーの量は多くなります。
もちろん交換するモノやサービスには資源などによって制限がかかるので、実際には無限というわけにはいきません。
また、逆にマネーの量を増やしたとしても市場で交換する必要性がなければ交換数を増やすことはできません。
これだけを踏まえると、国がマネーを一度発行してしまえば無限とまではいかなくてもマネーが市場を回りまわってみんな裕福になるのではないかと考えることができるかもしれません。
しかし、そういうわけにはいかないのです。
ここに登場するのが「需要」です。
先ほど、「マネーの量を増やしたとしても市場で交換する必要性がなければ交換数を増やすことはできません」と書きましたが、この「交換する必要性」というのが「需要」です。
私達人間は、欲しいモノがある(交換する必要性がある)時、自分が持っているマネーとモノを交換しようとしますが、欲しいモノがない時、自分の持っているマネーを将来のために取っておきます。
これが「貯蓄」です。
(欲しいモノがあるけど貯蓄する場合、もっと欲しいモノが他にあるのかもしれません。)
新興国のように開発途上にある国では、みんな欲しいモノばかりなので、みんなガムシャラにお金を使います。
先進国のようにモノで満たされてしまった国では、セレブ気分を味わったり、旅行したり、マネーゲームしたりとサービスにマネーが使われるようになります。
このとき、どのくらいマネーを供給すると、どのくらいマネーが回るかといったものを「乗数効果」と呼びます。
発展途上にある国では乗数効果が高くなるのは説明した通りです。
先進国ではモノで満たされているので、モノに関する乗数効果は必然的に低くなり、それでは経済の成長力が低下してしまうので、サービス分野の乗数効果が高くなければなりません。
しかし、ここで日本がぶち当たっている壁があります。
サービス分野というのは不景気に弱いのです。
人間、将来に向けての見通しが悪いとき、生きていくのにあまり重要ではないサービスなんかにお金を使うのをやめます。
そして、モノは溢れているのでモノを買うためにマネーを交換する必要がありません。
将来欲しくなるもののために「貯蓄」しようと考えます。
そうです。
将来に向けての見通しが悪いとき、つまり「不安」でいっぱいの時、マネーは貯蓄に回ります。
人々はせっかくマネーを持っていても、それを使おうとしないので、乗数効果は低下します。
最近(といってもこの手の議論は昔からありますが)、中央銀行がマネーを大量に発行すれば「貯蓄」する必要がなくなり、「不安」がいっぱいでも人々はマネーを使うのではないかという話題が流行いたしました。
しかしながら、この手法を実現することは非常にテクニカルで非現実的です。
まず、どの程度マネーを供給すればよいのか、誰にもわかりません。
「不安」で乗数効果が低下している状況下で、供給量が小さければ「貯蓄」に回って効果がないですし、供給量が大きければ逆に皆がマネーを使い過ぎてマネーの価値を低下させてしまいます。
マネーが大量供給される状況では誰もがマネーを大量に手に入れられるので、売り手は交換比率を変更します。
マネーの交換価値が低下して、交換されるモノの値段が上がるのです。
これが「インフレ」です。
(国を跨いで為替が暴落するリスクもあります。)
他にも、乗数効果が低下している時に、マネーを供給すると何が起こるかといいますと、交換したいものがありませんので金融商品と交換されるようになります。
乗数効果が低下しているとき、中央銀行は金利を下げてマネーを市中に引き出そうとしますので人々は「貯蓄」していてもまったく儲かりません。
ただ「貯蓄」してマネーを持っていてももったいないので、少しでも利益が得られるように金融商品に投資するのが一般的です。
(一律的に乗数効果が低い時と書いてますが、投資利益が低い時と同義語で考えてください。)
こうすると金融商品に紐づいている資産が高騰します。
「資産バブル」とか「資産インフレ」とよばれるものです。
(ちょうどいいマネー流通量に調整するのが中央銀行の重要な役割だと考えましょう)
話を戻します。
今、日本では「将来不安」に溢れています。
連日のように不正や不平等や不安を煽る情報が駆け巡っています。
こんな「不安」でいっぱいなのに「マネーを使え」という方が無理なのです。
人々は冬を越す動物のように縮こまり、リスクを取らずに状況が好転するのを待っています。
人々のマネー交換活動を活発化するためには、乗数効果を上げるしかありません。
乗数効果を上げるためには「不安」を払拭することです。
さて、まえおきが終わり、ようやく本題の本題です。
ここでようやく民主党の「第3の道」の登場です。
日本経済が落ち込んでいる病理、それは「不安」です。
誰もが「安心」を求め彷徨っています。
これまでの実績からして、政府は供給側の力を伸ばすことが苦手です。
供給側の成長は民間の力を伸ばすことによって実現するしかないのです。
あえてできることは規制改革、高度社会インフラ整備などです。
しかし!
他にも政府が主導してできることもあるのです。
日本社会を覆う「不安」を振りほどき、皆で「安心」を共有することができれば、需要側の意識を喚起できるかもしれません。
そうすれば日本に眠る潜在的マネーを引き出し、乗数効果を上げることができるのです。
供給と需要の両輪を回すことができるのです。
※
ここでは潜在力を引き出すのに「安心」が重要だと述べているのであって、それだけで経済が発展すると述べるものではありません。
と。
そのために何が必要でしょうか?
(実態よりも)人々に「安心して生活できる」ということが広く認知されることです。
これが民主党の「生活が第一」の理由なのだと考えてみてください。
民主党はバラマキを指向しているわけではなく、「安心」を認知してもらうことを指向していると。
では、安心して生活できるために何が必要でしょうか?
いわゆるセーフティネットの構築でしょう。
では、セーフティネットの構築のためには何が必要でしょうか?
・・・という議論をしていくことが重要です。
以上より、簡単ではありましたが、民主党の「第3の道」についての考え方を説明してきました。
(え?ここで終わり?とがっかりされた方すみません・・)
とてもコンセプチュアル(概念的)なお話ですが、このコンセプトを皆さんが認識することがまず大事です。
コンセプトが誤解されたまま批判されることが多々あるからです。
ここで述べたことを踏まえて、ようやく次の方法論の議論に着手できるのです。
さて、民主党の方法論を見ていくと・・・ん?
第一部では、政府による「産業政策」の有効性が低く、「競争政策」や「規制緩和」の有効性が高いことについて軽く触れました。
経済発展のためには、旧来の発想から抜け出ることの必要性を直感的に理解していただけると助かります。
第二部では、「規制を導入する難しさ」と「規制を緩和する難しさ」について触れました。
旧来の発想を批判する人達による主張は往々にして正しいこともあるのですが、人々にとって受け入れがたさも同時に持つことを直感的に理解していただけると助かります。
第三部では、ようやく本題の「第3の道」の考え方について触れます。
民主党の政策が旧来の産業政策の枠組みから抜け出せないでいること、規制緩和についての無理解でいることの批判内容について説明してきました。
では、民主党の成長戦略には希望はないのでしょうか。
正直いって現実に打ち出されている成長戦略には大きな期待をもてません。
批判者の指摘がほとんどの場合正しいと思います。
しかし、「第3の道」として主張されている「需要サイドの成長戦略」は決して間違っているものではありません。
これについては批判者の皆様が理解されていないことがありますので説明させていただきます。
(理解しないというより方法論が貧弱すぎて納得できないというべきでしょうか)
民主党が主張する「第3の道」は、「需要の喚起」による「内需の拡大」のことであり「消費の拡大」のことです。
GDPの6割を占める個人消費を拡大することで経済成長を促そうとする考え方です。
「需要を喚起する力は供給側が持つ」「所得を増やす効果が需要側にはない」という批判者のロジックはわかるのですが、ここでいう「需要の喚起」というのは、それとは少し意味が違います。
民主党の「第3の道」をよりよく理解するために、少し説明します。
この部分は話を単純化し過ぎと批判覚悟で書いています。
経済というのはサービスと対価の交換によって成り立っていますが、理論上「交換」は無限に行うことができます。
市場に流通する「マネー」の量が一定だとしても、交換自体は無限に行うことができるのです。
だから市場の実態として、流通している貨幣の量よりもマネーの量は多くなります。
もちろん交換するモノやサービスには資源などによって制限がかかるので、実際には無限というわけにはいきません。
また、逆にマネーの量を増やしたとしても市場で交換する必要性がなければ交換数を増やすことはできません。
これだけを踏まえると、国がマネーを一度発行してしまえば無限とまではいかなくてもマネーが市場を回りまわってみんな裕福になるのではないかと考えることができるかもしれません。
しかし、そういうわけにはいかないのです。
ここに登場するのが「需要」です。
先ほど、「マネーの量を増やしたとしても市場で交換する必要性がなければ交換数を増やすことはできません」と書きましたが、この「交換する必要性」というのが「需要」です。
私達人間は、欲しいモノがある(交換する必要性がある)時、自分が持っているマネーとモノを交換しようとしますが、欲しいモノがない時、自分の持っているマネーを将来のために取っておきます。
これが「貯蓄」です。
(欲しいモノがあるけど貯蓄する場合、もっと欲しいモノが他にあるのかもしれません。)
新興国のように開発途上にある国では、みんな欲しいモノばかりなので、みんなガムシャラにお金を使います。
先進国のようにモノで満たされてしまった国では、セレブ気分を味わったり、旅行したり、マネーゲームしたりとサービスにマネーが使われるようになります。
このとき、どのくらいマネーを供給すると、どのくらいマネーが回るかといったものを「乗数効果」と呼びます。
発展途上にある国では乗数効果が高くなるのは説明した通りです。
先進国ではモノで満たされているので、モノに関する乗数効果は必然的に低くなり、それでは経済の成長力が低下してしまうので、サービス分野の乗数効果が高くなければなりません。
しかし、ここで日本がぶち当たっている壁があります。
サービス分野というのは不景気に弱いのです。
人間、将来に向けての見通しが悪いとき、生きていくのにあまり重要ではないサービスなんかにお金を使うのをやめます。
そして、モノは溢れているのでモノを買うためにマネーを交換する必要がありません。
将来欲しくなるもののために「貯蓄」しようと考えます。
そうです。
将来に向けての見通しが悪いとき、つまり「不安」でいっぱいの時、マネーは貯蓄に回ります。
人々はせっかくマネーを持っていても、それを使おうとしないので、乗数効果は低下します。
最近(といってもこの手の議論は昔からありますが)、中央銀行がマネーを大量に発行すれば「貯蓄」する必要がなくなり、「不安」がいっぱいでも人々はマネーを使うのではないかという話題が流行いたしました。
しかしながら、この手法を実現することは非常にテクニカルで非現実的です。
まず、どの程度マネーを供給すればよいのか、誰にもわかりません。
「不安」で乗数効果が低下している状況下で、供給量が小さければ「貯蓄」に回って効果がないですし、供給量が大きければ逆に皆がマネーを使い過ぎてマネーの価値を低下させてしまいます。
マネーが大量供給される状況では誰もがマネーを大量に手に入れられるので、売り手は交換比率を変更します。
マネーの交換価値が低下して、交換されるモノの値段が上がるのです。
これが「インフレ」です。
(国を跨いで為替が暴落するリスクもあります。)
他にも、乗数効果が低下している時に、マネーを供給すると何が起こるかといいますと、交換したいものがありませんので金融商品と交換されるようになります。
乗数効果が低下しているとき、中央銀行は金利を下げてマネーを市中に引き出そうとしますので人々は「貯蓄」していてもまったく儲かりません。
ただ「貯蓄」してマネーを持っていてももったいないので、少しでも利益が得られるように金融商品に投資するのが一般的です。
(一律的に乗数効果が低い時と書いてますが、投資利益が低い時と同義語で考えてください。)
こうすると金融商品に紐づいている資産が高騰します。
「資産バブル」とか「資産インフレ」とよばれるものです。
(ちょうどいいマネー流通量に調整するのが中央銀行の重要な役割だと考えましょう)
話を戻します。
今、日本では「将来不安」に溢れています。
連日のように不正や不平等や不安を煽る情報が駆け巡っています。
こんな「不安」でいっぱいなのに「マネーを使え」という方が無理なのです。
人々は冬を越す動物のように縮こまり、リスクを取らずに状況が好転するのを待っています。
人々のマネー交換活動を活発化するためには、乗数効果を上げるしかありません。
乗数効果を上げるためには「不安」を払拭することです。
さて、まえおきが終わり、ようやく本題の本題です。
ここでようやく民主党の「第3の道」の登場です。
日本経済が落ち込んでいる病理、それは「不安」です。
誰もが「安心」を求め彷徨っています。
これまでの実績からして、政府は供給側の力を伸ばすことが苦手です。
供給側の成長は民間の力を伸ばすことによって実現するしかないのです。
あえてできることは規制改革、高度社会インフラ整備などです。
しかし!
他にも政府が主導してできることもあるのです。
日本社会を覆う「不安」を振りほどき、皆で「安心」を共有することができれば、需要側の意識を喚起できるかもしれません。
そうすれば日本に眠る潜在的マネーを引き出し、乗数効果を上げることができるのです。
供給と需要の両輪を回すことができるのです。
※
ここでは潜在力を引き出すのに「安心」が重要だと述べているのであって、それだけで経済が発展すると述べるものではありません。
と。
そのために何が必要でしょうか?
(実態よりも)人々に「安心して生活できる」ということが広く認知されることです。
これが民主党の「生活が第一」の理由なのだと考えてみてください。
民主党はバラマキを指向しているわけではなく、「安心」を認知してもらうことを指向していると。
では、安心して生活できるために何が必要でしょうか?
いわゆるセーフティネットの構築でしょう。
では、セーフティネットの構築のためには何が必要でしょうか?
・・・という議論をしていくことが重要です。
以上より、簡単ではありましたが、民主党の「第3の道」についての考え方を説明してきました。
(え?ここで終わり?とがっかりされた方すみません・・)
とてもコンセプチュアル(概念的)なお話ですが、このコンセプトを皆さんが認識することがまず大事です。
コンセプトが誤解されたまま批判されることが多々あるからです。
ここで述べたことを踏まえて、ようやく次の方法論の議論に着手できるのです。
さて、民主党の方法論を見ていくと・・・ん?