旅する小林亜星

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無時

2008-11-11 19:28:44 | 旅人
水曜の朝8時半にBlazing Paddlesに行くと

忙しないおばさんが白い防水おばけバケツに荷物を詰めるよに指示した。

あたしたちのほかには

ムキムキマンの白人男性2人がいて
カップルなのかなと。

水着の上に、ややぶかぶかのウェットスーツとライフジャケットを着て
いざいざ。

黄銅色のワンガヌイリバー。
3日分の食料と衣類とテントと寝袋と。

約90キロを3日間かけて下る旅。

カヌー経験、釧路湿原のみのあたしが前で
かなりの経験者のSueが後ろ。

時速10キロ。

ところどころに急流が出てきて
海かと思うよな波で襲い掛かってくるので

Sueが

「そこ、左側を急いでこいで、急流抜けたらすぐ真ん中に」

と迅速な指示をくれたおかげで

船頭が1メートルほど上下する中
奇跡的にも1回もカヌーの外に投げ出されずに済んだ。

テントは2時間おきに位置するロッジに泊まれなかったときの非常手段で
一度も使わなかった。

ハットは予想をはるかに超えるきれいさだった。

トイレはバイオルーだし
電気が通ってないので、食事はガスで調理、

太陽が沈むとともに寝袋に沈み
太陽が昇るともに寝袋から抜け出す生活。

久々のぼっとんトイレより難しかったのが時間。

無職生活中は時間管理が最大の課題なので
常にExcelで30分おきの自分の行動管理をしていた癖がぬけず

何時に何々をしなければならないという呪縛に。

時計代わりに持ってきた携帯の充電が切れ
誰かに聞かなければ、わからない時間。

おなかがすいたから食べる。
眠いから寝る。

目が覚めたから起きる。

という当たり前のナチュラル生活に馴染むのに苦労した。

1日目の夜は前述のストレート警察官二人組みと同じハット。

2日目の夜、Sueと二人きりになった。

なんとか火を熾した暖炉の前で
日がとっぷり暮れて

ろうそくの火でお互いの表情がなんとか読める距離で
どちらからともなく話をした。

Sueというひと。

絶対音感を持ってたからフルート奏者を目指したけどなれなかったこと。
社会に貢献してると思える仕事につきたかったこと。

9年間付き合ってた、たったひとりのボーイフレンドのこと。

26歳でビアンになったこと。
ひとりで生きてくことになるかもしれないと覚悟したこと。

Sueのガールフレンドのこと。
彼女とは6年半つきあってること。

付き合い始めて3週間でうまくいくと思ったこと。
彼女はSueをreinforceする存在だということ。

父親と20年絶縁してたこと。
ガールフレンドがいたから父親と和解する勇気がでたこと。

presumeとassumeの違い。

最終日の川はとにかく晴れだった。

漕ぐのがもったいなくて
永遠に水に漂っていたくて

Sueと漕ぐのをやめた。

耳を澄ませば
鳥がなんとも言えない透明の声でおしゃべりしていて

ひたすら続く緑色の帯に飽きない。

早くコンプリートしたい思いと
いつまでも終わりたくない思い。

Sueと共有した空間と時間。
同士以上の同士。
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