二号

ニュージーランドに到着した夜、
かつて愛し合った語学学校の寮に

あたしを完結してはくれなかったインド人が会いに来てくれた。

実は来週から転職してマレーシアで働くことになったらしい。
引越しは今週末で、フライトは来週の月曜。

急すぎる。
まるであたしから逃げてくよう。

彼がニュージーランドにいるから
ニュージーランドに来たわけではないし

３月のよな不適当な関係は望んでなかったので
あまり深く関わる気もなかったけれど

最後の最後で何か困ったときの心の拠り所にはしていた。

目に見えない大きな支えを失ったようで愕然として
ニュージーランド到着１日目にして泣いた。

ひとりで生きてかなくちゃ感が一気に増した。
元来ひとはひとりで生きてかなくちゃいけないんだけど。

しばらくしてこれが彼との縁なのだと思えた。
彼とはほとほと縁がなかったんだと。

それならば利用できるものは利用しようと

「捨てる食器とか調理器具とかあったら頂戴！
　あと、スティーヴン・キングの小説を何冊か！」

とお願いしたら

次の日いくつかの新品の食器とフライパン、ナイフ、フォーク・スプーンと
彼のお気に入りの５冊のスティーヴン・キングを持ってきてくれた。

お願いしといてなんだけど
何かを買ってもらうと二号さんみたいな気がした。

でも心からこれでよかったんだと思える、彼の門出。
彼にも、あたしにも。