blog-atom 2

…漁師アトムの航跡… ~ある沖乗り漁師の綴記~

【16航海目】!

2022年11月26日 | モバイル

「晩秋の ひだまり惜しみ 舞う蜻蛉」

11月22日・18時、気仙沼入港 

23日は勤労感謝の日で市場休み
自身も作業後に帰路についた。

自宅の庭に午後の日差しが優しく清々しい…

落葉が進んだ庭木の残りの葉に
ひだまりが暖い色合いを醸し、周りを羽に艶のないトンボが舞う…

サンマ漁も終盤、時期的に哀愁感が漂う季節のはざま

自宅を後に、夕刻 船に戻った…。

24日、水揚げ後、待機時間を経て時化休みが決まった。
切り揚げ後に予定していた作業を前倒しして一つ済ませ
再度帰路についたが、荷物を取って船にとんぼ返り…

大荒れになりそうな時は時化休みでも落ち着かない…
周辺を見渡せる船にいた方が落ち着く…
帰宅してのんびりリラックスできる時間は、あともう少し先に確実に訪れる!

25日朝5時、気仙沼出港…
季節風強くうねりも高め、沖に向けたが10時頃にコース変更、西へ…
僚船と共に陸中宮古沿岸沿いにて漂泊…。

14時30分、S/B 。



陸中海岸の山景が見える…

日没から北よりに調査、サンマは見えず…
20時過ぎからは南よりに調査…

21時頃から綾里崎沖で薄群れを3回程操業
魚体組成は悪い…。

次第に風が強まり帰途航となった…。
23時30分、気仙沼入港!


【15航海目】!

2022年11月22日 | モバイル

11月19日・朝4時気仙沼入港、今期初の母港水揚げ…

時化の中で漁灯を仕舞う際に損傷、亀裂が入った大笠の竿を修理し
8時、気仙沼出港 Co88° 東へ!

11月も中旬から下旬にさしかかるが、いまだに公海に漁場を求め
約500哩沖へと船を走らす。

次第に冬海へと海況が変貌を遂げる…
嵐と季節風との凪間にサンマを追うようになる…。

時化海操業での漁撈機械への負荷が大きく、交換も相次ぐようになってきた。
漁場が遠い分、多くの作業をスピーディーにこなさなければならないが
揺れる船上、体を支えるのにも困難な中、思うようにいかない事が多い…

昨年から痛む右膝が時に悲鳴をあげ、時化海への耐性がどんどん失くなっていく…。
多くを鑑みて、苦しい事の方がよりウェイトを占めるようになってきた!…
沖乗り漁師40年を過ぎ、多くの漁師がいた中学の同級生は私だけとなった今…

諸々への耐性は各々に個人差があって然るべき事だ…
自分の事は自分にしか解らない事でもある…

20日・14時30分、S/B 。
季節風がやや強い…
更に沖へ…!

東経152° この時期にこの海区でのサンマ漁
一昔前には考えられなかったが、サンマの回遊コースの変化と
その資源量の減少に合わせるように、
大震災後の船の新鋭化によって可能となっている!

17時、各船調査中のポイント着
北風が北東に周り、強まってきた…
寒気の影響で、風力は予報より強い…!
18時、冷たい雨が降り始めた…!

同海区には外国籍船が2隻、日本船8隻と少ない…
サンマは見えず、南よりに調査。

21時頃から薄群れを数回操業…
雨が降ったり止んだり、風も強まったり弱まったり…
サンマは群れず、浮かない…
気象に左右されているのもあるようだ…。

公海の長い夜が明け、漁灯を仕舞い 西へ…
また時化に追われた格好だ…!

僚船と共に帰途航走、強い季節風の中 約1昼夜半は遠い…!
遠い漁場、時期的に厳しさは増す!

気仙沼向け、22日・18時頃の入港予定





【14航海目】!

2022年11月19日 | モバイル

時化休みが続いた事で、自身の仕事も落ち着き、
コインランドリーで自室の寝具を洗ったり、掃除を済ませて久々に帰宅できた。
11月も中旬となり帰路途中の道は、色付いた広葉樹の落葉が進んでいた…
久しぶりに船から離れると、車窓からの景色 見慣れた道も新鮮だ…!

高校生の息子との久々の会話で良い息抜きもできた。

11月14日・朝7時、気仙沼出港 Co83° 東へ…。
気温がグッと下がり、季節のステージは晩秋から初冬へと移う。
沖へ進むにつれ、うねりが高く船は大きく揺れる…

18時、S/B 。
海はまだ時化ている…
漁灯のみ拡げ、甲板の操業準備はせず 更に沖へ!

夜が明けてもなかなか凪ない…
また発達しそうな低気圧 次の時化が近づいてきている!

日本の領海ラインを抜け外国籍船団が操業している公海のポイント
北緯38°50`付近向け。
前航海よりだいぶ南ではある…。

15日・15時、S/B 。
北風がやや強いが、うねりは低くなった…

日本船のほとんどが時化休み後の調査であり、各船散らばってサンマを追う…
東に外国籍船の赤い漁り火が見える…

時間の経過と共に良い凪となったが、すぐ次の時化がすぐそこまできている…
どうやら嵐の前の静けさである…!

操業しては航走のパターンで多方面に調査!
日付けの変わり目を跨いで南下…。
1時過ぎに少し纏まった群れを操業。
しかしその頃から冷たい雨が降り始め、うねりが高まり南東の風が強まった…
嵐となり漁灯を仕舞い、夜明けより120哩程微速で北上…
幾分風の弱いポイントへ時化交わし、17時30分・漂泊。

時化となり、夜明けまで漂泊…
大きく揺れる船、横になっても体を支えながら…。

午後になり幾分風は弱まり北よりに航走
15時、S/B 。

次第にうねりは低くなって20時過ぎには良い凪になった…
しかし束の間で、冷たい雨が降り始め季節風が吹き付ける…!

数回の操業で僅かな漁獲、日付けが変わった頃 冷たい雨が一時雪になった…
今期の初雪は北緯39°の公海洋上…。
暑い暑いで始まった漁も、いよいよ寒い時期に突入
漁は後半戦になったと云う事でもある!

夜明けより西へ…
強い季節風を受けながら、帰途航となった。
18日午後からはトラブった箇所の甲板補修作業
寒気の影響で気温も低く、波飛沫も冷たい…

船は気仙沼向け、19日朝4時半頃の入港予定。


【14航海目・反転】!

2022年11月12日 | モバイル

母港・気仙沼に入港後、本船の整備業者に依頼し異音の原因を調査…!
結果、高段側の吐出弁が割れていた…
尚、それによってピストンリングのリングすきまが狭くなっており
それで叩き音を発したようだ…。

あまり負荷もかけないように慎重に運転していたつもりでも これだ…!
なんだかなあである…。

サンマ漁、水揚げの為に向かう港も各船との兼ね合いがあったりするので
入港地も、簡単に決まらず、何らかの場合も依頼する業者への連絡が
簡単には決定できない事もしばしばある…

今回は、漁撈長が時間を作ってくれての気仙沼入港である。

修理後、女川へ微速で迴港!
迴航中、修理後の冷凍機を起動し状態を確認しながら…

朝4時・女川入港、給水  5時半から水揚げ 燃料補給 氷の積み込み…
水揚げ中に時化休みが決まり、9時30分女川出港、気仙沼向け迴航…
迴航中は冷水造り…。

気仙沼入港 係留後、海水系統のメンテナンス作業
冷水造りは16時に全冷却を終えて、倒れるように寝台に入った。
前夜の修理作業も含め蓄積しているものがあった…

解禁から83日を数え、今漁期初めての休み…
やりたい事・調べたい事もあったけど、睡魔に襲われ朝方まで熟睡…
自身の休み約12時間は睡眠に充てた。

どの仕事もそうだが、携わる者にしか解らない苦しみや悲しみ・葛藤がある…!

サンマ漁も以前のような近場、沿岸域を主漁場にして操業していた頃と、
公海の遠いポイントにサンマを求め移動しながらの操業では、
同じ船上であってもおかれる状況は相当異なる!
時間と消費燃料を要し、遠い漁場まで行く!
沖出し・到着して無事に操業・漁後の帰航と云うサイクルが当たり前の中
「漁場着も不具合で漁をせずに帰途」 とならないように各船の機関に携わる者達は
気を付けてはいる、だがそれでもうまくいかない事もある…
特にエンジンに不安がある場合はメンタル面・心理的にも
かなりのプレッシャーを抱えながら漁期間を過ごす事になるのだ…!

11日・朝4時、凍結室と冷水の保冷、修理後の冷凍機は順調だ…。
6時・気仙沼出港  Co53°

15時、S/B 。
低気圧が発達する気象予報がでており、公海の操業ポイントは大時化になる事から
公海には向けず、僚船と共に陸中沖を調査…

陸中黒崎沖の低水温域付近から北上、東へ西へ
そして沿岸域、更には沿岸沿いを南下
凪良く調査も、サンマは見えず…

次第に南西からの風が強まり始め、朝3時を過ぎた頃
漁灯を仕舞い 気仙沼向け 微速で帰途航…!




12日・朝8時頃の入港予定。

右舷側に町明かりを見ながら思う、「今期も沿岸域での操業はなしか」…


【13航海目】!

2022年11月09日 | モバイル

10月31日19時30分、女川入港。
入港後、破網した箇所の補修作業を行い、漁の後半戦に備えた!
「のんびり」という事を忘れる程多忙が続く…

いろんな事が思い通りにいかないまま、もう November だ…!

暦を1枚捲り、11月1日・水揚げ後 6時30分、漁灯を出しながら女川出港!

近場の低水温域を調査しながらの公海向け。

昨期、ロシア海区内での操業はなかった…
サンマの回遊が沖合いとなって公海へと漁場を求めたからである…

今期はロシアの軍事進行により国際情勢が変わり、
それによって多方面に影響が及んでいる!
今の時代にナンセンスな戦争が、我々が携わる漁にも影響し
日本船はロシア海区内操業が出来ない!
この先、サンマの回遊が以前のようにロシア海区内から
北海道・東北の沿岸沿いを回遊するように戻ったとしても
ロシア海区内操業ができなければ、漁は厳しいだろう…
益々、サンマ漁は困難が付きまとう事になる…!
回遊魚は各国の領海や200海里のラインなど関係なく游ぎ、エサを追う…
人間の都合など、知った事じゃない、生きることに必死なのだ!
我々がその資源を追って海からの恩恵として授かっているだけなのである…。

日付けが変わり、11月2日00時30分 S/B 。
日本の領海と公海とのライン際、薄群れを3回程操業
僅かな漁獲で夜明けより微速で北東へ…
10時30分、漂泊。

2日・15時、S/B 。

日暮れから北よりに調査もサンマは見えず 北東へ…

弱い南風だが うねりは高め、18時頃から雨が降り始めた…
November rain は時折ハイパー豪雨に…!
すぐ次の時化が来る気配だ…

漁師に時化はつきものだけど、マグロ延縄漁船 等と違い
サンマ漁船は時化海操業仕様ではないし、適してもいない漁種である…。
漁具や漁撈機械にも必要以上の負荷が掛かるし、危険度も増す…

公海に漁場を求めるようになってからというもの
サンマ漁は時化海とも向き合うようになって、大変な漁に変わってきている…
時化海での海難を防ぐ為には、多くの諸々に気を付けなければならない…
運が悪い方向に向かわないように、やらねばならないことはきちんとやって!

降り頻る雨の中、多方向に範囲を拡げて調査…

今期のような漁模様、各漁撈長方の苦労は相当だ
時期的に夜も長くなって、かなり疲労も蓄積しているだろう…。
獲る魚がいないと云うのは漁師にとって切実である…!

雨が止み暗闇の中、西の水平線付近に稲妻が走る…

サンマは見えず、調査航走が続き、数回の操業の後 沖へ…!
僚船と共にポイント移動。

3日・15時、S/B 。
良い凪だが、どうやら嵐の前の静けさ の ようだ…!

凪はいいが漁模様は冴えない…
回数操業中の23時頃から雨が降り始め、雷鳴に雷光が船の上 稲妻も走る…
瞬く間に風が吹き荒れ、嵐に…
日付けが変わり、微速で西よりに海区移動。

4日・15時、S/B 。
うねりが高く、南東の風がやや強め…

日没から操業も魚体組成が変わり、著しく悪い。
南へ調査…
やや纏まった群れを操業も漁獲は伸びず…

雨が降り始め、風が南西に変わって強まった!
時化模様の中、相変わらず漁模様は低調…
夜明けより微速で南下し、漂泊。

5日・15時、S/B。

S/B 前の保冷作業中にNo2冷凍機が異音を発するようになった…
いわゆる叩き音…
二段圧縮・単段圧縮を試しても異音を発する為、休止…
No 1冷凍機を切り替えて作業を継続
冷水冷却と魚艙・凍結室の保冷を、この冷凍機1台で
切り替えながらやっていく事にした。
益々、時間が不足するそんな状況下となった…

夕刻から雨が降り、うねりが高め…
風が北西に変わって強まった…!

公海洋上 ついに季節風の到来である。
海面が風波で一面まっ白に…

強い季節風の中、調査は続くもサンマは見えず…
僅かな漁獲で夜明けより漂泊。

6日・15時、S/B 。
良い凪となった…!

日没後、久しぶりに跳ねるサンマ…
ここにきてやっとサンマの動きが活性化の兆し…!
南よりに調査…

調査・操業中、連日のように冷たい雨が降る…
時に豪雨となって雨粒が大きくなり
良い凪の海面に白いドットマークを描き、消えていく。
季節的にも体感的にも初冬めいてきた…。

7日・15時、S/B 。
珍しく良い凪が続いている。

日没過ぎからやや纏まった群れを操業!
サンマが群れ始め、動きも活発になり跳ねる!

しかしその後は、灯付きが悪くなり、漁獲は伸びない…。
夜明け前に、やや纏まった群れを操業し
夜明けより西へ!




8日・15時、S/B 。
ありがたい事に凪が続いている事で、調査しながらの帰途航…!

しかし、サンマは見えない。
今期も東北の沿岸沿い域にサンマは回遊してこないようだ…

22時30分、漁灯を仕舞い帰途航走
都合により気仙沼経由女川向け!

14時30分頃の気仙沼入港予定。