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1961年(昭和36年)に公開された 『荒野の七人』は、確か難波の高島屋1階なんばロキシーの上に在る「なんば大劇場」で観たと記憶する。
ロキシーの横手にある螺旋階段を上がると間接照明に照らされた豪華な深紅の絨毯を敷き詰めたロビーに出る。
総ガラス張りのエントランス脇には、荒野の七人が馬上豊かに駆ける姿を油絵的にリアルに描きだした大きな看板が備えられてワクワクと胸が躍ったね。
当時は、映画は娯楽の頂点にあった。映画館へ足を運ばないと観れない時代だった。テレビが、白黒からカラー放送になろうかという頃だったかね。
今のように映画案内や予告編なんかが頻繁に放映されないから新聞や雑誌で情報を拾ってた。限られた情報は、限りなく夢を膨らますんだね。
新聞の劇場案内欄ってのに決まって目を通してた。大阪、神戸、京都の何処其処の映画館の上映品目と上映時間が小さく明示されてんだね。
前にも書いたかね? なんば大劇場で観た「荒野の七人」は大満足だったよ。もう、100点満点文句なしの最高の西部劇だったね。
エルマー・バーンスタインの主題曲の躍動感溢れる軽快なる響きに酔いしれて、70ミリ大画面に激映りする世界で一番格好いい人たちにウットリしたよ。
興奮してるから格好いいとこばかりが衝撃で、当時としては、いささか変わった銃声音に違和感を覚えたけれど斬新でいいって解釈よろしく馴染むんだね。
パコンッ、パコンッと実際の銃声音を取り入れてるな? そうか、なるほど、なんてね。実際の銃声ってのは意外と勢(せい)がないもんね。
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『ユル・ブリンナー スティーブ・マックィーン』
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此の時は、ユル・ブリンナーのガン捌きの拙さなんか無理やり良い方に解釈して記憶から間引いてたね。と、云うよりも格好良さの波が打ち消すんだね。
砂浜に打ち寄せる波だね、荒れた砂面を一気に洗い流して形跡を残さない。
馬車に積まれた遺体は白人ではない、偏見から町外れの丘の上の墓場には葬らさないって、男たちが銃を構えて阻止してる。葬儀屋が難儀しているんだね。
「オレが行こう」 とユル・ブリンナーが手綱(たずな)をとる。昔なじみのスティーブ・マックィーンがショット・ガンを借りて助手席に乗る。
豪華で大きな劇場内一杯の70ミリ大画面に映し出されて葬儀屋の馬車が往く。ここで主題曲が流れて、もう、最高。
葉巻を咥えていかにも強そうなユル・ブリンナー、銃の扱いは手馴れて隙が無いスティーブ・マックィーン、この人の身のこなしは芸術だね。
オレは、この映画は、なんば大劇場の70ミリ大画面に於いては、初っ端のこのシーンだけでも価値があると思ったね。
The Magnificent Seven Theme ? Elmer Bernstein
後、この興奮を、もう一度ってリバイバルだったかなあ? 2番館の映画館で観たんだね。
クリス・アダムズ(ユル・ブリンナー )は、ファニング射撃の名手なんて紹介してる雑誌を読んで笑ってしまったよ。
トリガー(引き金)を引いたまま、左手の平で激鉄を叩いてリボルバーを回転させ連射するんだけど、シャムの王さまは、なんともぎこちない。
このファニング射撃でスカッとさせてくれたのは、マカロニウェスタンで唯一観れる映画だった 「荒野の用心棒」だね。
クリント・イーストウッド面目躍如の拳銃捌きだったね。一時、流行って駄作のオンパレードのイタリア製西部劇は、なんでもかんでも笑うんだね。
オレも、よく笑うんだけど、こいつら観てたら笑うのやめようかなって思ったよ、何がオモロイねん? 自分がダブって恥ずかしくなるよ。
見知らぬ町にやって来たイーストウッドの馬の足元を撃ってからかった奴等が馬囲いの柵に腰掛けヘラヘラ笑ってる。酒場の主人の話から
町の事情を察したイーストウッドは、奴等の前に戻って来る。髭面にポンチョを被り、本家アメリカの西部劇とは趣が違って斬新だね。
徐(おもむろ)にポンチョを両肩に捲り上げる、ガンベルトと銃が覗くね。馬鹿笑いしてた悪ども5~6人が緊張して身構える。
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『荒野の用心棒』 クリント・イーストウッド
間隔を空けて身構える馬鹿どもなんだけど、一呼吸、抜く手も見せぬ早業でファニング射撃が的を外さず鮮やかに決まって勝負がつく。
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『荒野の用心棒』 ファニング射撃 ガンマンってのは、このぐらい銃をこなしてこそガンマン(拳銃使い)と云うんだよ。
手を叩いて 「シャーウィ~ダンスッ」のシャムの王さまは、激鉄叩くんじゃなしに置いてる感じだね。其れも遣り場に迷ってる感じだよ。
ステーブ・マックィーンの反射的身のこなしが際立つから、シャムの王さまは力んで格好ばかりつけてるだけなのが目立つんだよ。
なんでも上に登りつめていい目をすると潰しが利かんのかねえ? 胸張って威厳を保つシャムの王さまから抜けられないね。
盗賊どもの反撃食らって慌てふためいてウインチェスター銃のスライドもおぼつかず射撃の姿勢が潰れて女性的な撃ちかたなのが悲しい。
毎年収穫の時期になると35人の盗賊を率いて村の食料を掻っ攫って行く首領カルベラ(イーライ・ウォラック )に困り果てた村人が用心棒を
探して町に来るんだね。義を見てせざるは勇無きなり、クリス(ユル・ブリンナー )は、引き受けて相棒のヴィン(マックイーン)と仲間を集めにかかる。
ブリット(ジェームズ・コバーン )、ハリー(ブラッド・デクスター )、ベルナルド(チャールズ・ブロンソン )、チコ(ホルスト・ブッフホルツ )
リー(ロバート・ヴォーン )、それぞれに腕のあるガンマンが集まるんだね。
此の映画は、興行成績の良さもさることながら、この映画を機にトップスターになった役者を量産したね。
スティーブ・マックィーン、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソン、ロバート・ヴォーン、ホルスト・ブッフホルツ とほとんどの役者が
此の後、それぞれが主役を演じる役者になった。其の意味合いでも特異な映画だね。そんなのは、あんまり興味ないけどね。「なんやねん」
面白いんだよ、ブラッド・デクスターって人は、これまでも、いろんな映画の脇役で顔を売ってる役者なんだけど、一人、蚊帳の外なんだよ。
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『手前から、チャールズ・ブロンソン ブラッド・デクスター ロバート・ヴォーン』
で、映画の中でもガンマンと云うより銭になることなら参加するってタイプの男を演じてる。此の人には、何の活躍場面もないんだよ。
一旦、命が大事って仲間から去るんだけど、盗賊集団と戦ってる仲間を見捨てることが出来ずに馬を駆って戻って来たとこ撃たれて死んでるの。
僅かな金で割が合わない仕事の裏を勘ぐってんだね。死に際に「ホントのこと云え」って、クリス(ユル・ブリンナー )を促すんだね。
憐れに思ったクリスは 「実は50万ドル、分け前は一人7万ドルだ」と大ウソを聞かせて、「来て良かったあ」って満足しながら息を引き取るんだね。
棚からぼた餅の夢見る男なんだね。「おまえと一緒やね」 似てるね。「だから現実も脇役で終るんだよ」 そういうもんか、身につまされるね。
此の映画の不思議なのはね、各所に素人臭い描写が散らばっているのにも関わらず全体的には格好いいと云わせるところだね。
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ブリット(ジェームズ・コバーン )を仲間に誘いに行くシーンなんだけど機関車の停留場の脇で柵に持たれて眠る男が居る、早撃ちに自身のある奴が
ブリットのナイフ投げの早さに難癖つけて「試そうぜ」なんて煽るんだね。相手にしなかったブリットが立ち上がり、皆の見る前で互いに的を外して試すんだね。
勝負はブリットが早いんだけど納得しない。本気で試すって聞かないから相手になる。早業のナイフは、銃を抜きかけの男の胸に突き刺さるんだね。
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終始、寡黙なジェームズ・コバーンが光るんだね。此の人は、脚が長いんだねえ。ちょっと、オレにくれよって、思ってしまうよ。
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『ジェームズ・コバーン』
銃の腕の衰えに自信が揺らぐガンマン、リー(ロバート・ヴォーン )の存在は濃くは無いんだけど、昔の自分を語りつつ飛びまわすハエを片手で
握り摑まえる、手の平を広げ 「昔は全部を掴んだよ」って敏捷性の衰えを笑うんだね。キザに装って様になってるんだね。
盗賊集団との戦いの中、その喧騒が途切れたような間隙に立ち、一呼吸おいて村人が捕まってる家のドアを蹴り開け飛び込みざま3人の盗賊を撃ち倒す。
早撃ちの腕は衰えていない。昔の自分が居ることを確かめて外に出る。この映画のおかしなところが、此処から始まるんだね。
銃撃戦たけなわの時は見所や繋ぎはいいんだけど、ほとんどの盗賊を倒した頃を見計らったように残りの6人が欠け出すんだね。
それも、誰それが撃ったから当ったというリアル感が全くないんだね。「はい、弾が当ったよっ」って、どれも監督の声が聞こえるような描写なんだね。
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『ロバート・ヴォーン この直後、「はいっ、弾丸(タマ)が当ったよっ」 ジョン・スタージェス監督の声を合図に独り芝居で死ぬ』
リー(ロバート・ヴォーン)も、僅かな時間、自分の腕を確かめた充足感を味わい佇んでいて銃声が響く、死に方は上手いんだけど繋がりが無いから
ピンとこない。ベルナルド(チャールズ・ブロンソン )も寄り添い来る村の子供たちを庇い撃たれて死ぬんだけど、あまりにも独り芝居なんだね。
臨場感が嘘みたいに全くないんだね。そのための撮影ってのが丸解りなんだね。白けてしまうんだよ。贔屓(ひいき)の客を苦しませんなよ。
ブリット(ジェームズ・コバーン)もそう、独り勝手に撃たれた振りしてナイフを投げて死んでる。この間の繋がりは、効果音と効果曲だけだね。
「映画は、みんな、そうだろうが」 当たり前じゃないか、ホントに弾丸喰らって死んでしまったら役者が全滅するわっ。
馬鹿か? そんなのを感じさせる演出がいかんと云っておるんだよ。日本の黒澤明の 「七人の侍」 のリメイクだから、
これを観た黒澤監督が、ジョン・スタージェス監督に日本刀を贈って讃えたらしい。封切りの一発のみの観賞だったんだろうね。
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映画は、映画館で一発もんだね。何度も観ると、必ず、おかしなところに気付いてしまう。でも、変わらずに面白いって思わせる映画もあるね。
盗賊たちが村で寝込んでいる隙に7人が(実際は6人)が戻って来て反撃するんだけど、この時のスティーブ・マックィーンの銃撃戦は絵になって残るね。
パコンッ、パコンッって乾いた銃声が妙に活きるんだね。最初の銃声で気付いた盗賊がマックィーンを狙い撃ちしてくる。
奔って撃ち、身体を捻って撃ち、脚をやられて倒れつつ後方に撃ち返す、その身のこなしが鮮やかで、此処は何度観ても格好いいね。
此の人は、見せる役者だね。クリス(ユル・ブリンナー)が、加勢に戻って撃たれたハリー(ブラッド・デクスター)を抱きかかえ来る。
迎え入れるドアを開け放って飛び出しざま、クリスら二人を援護して両手支えで銃を撃つシーンなんか、いつまでも残る絵になってるよ。素晴らしい。
寡黙でありながら優しさが漂うベルナルド(チャールズ・ブロンソン)に村の子供が慕って離れないんだね。自分達の親を弱虫で卑怯だと非難した子供の尻を叩き
「銃を持って戦うより土地と家族を守るほうがよほど勇気がいる。お前達の親は村と家族を守るために決断したのだから悪口を言ってはいけない。」って𠮟る
シーンがある。その台詞と、盗賊が全滅してクリス(ユル・ブリンナー )とヴィン(スティーブ・マックイーン)が村を立ち去る際に、
クリスが 「勝ったのは我々はでなく村人たちだよ」って云う台詞が、批評家たちが決まって捉えて尤もらしく讃えてんだけど、それほどのもんか?
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『スティーブ・マックイーン』
地に根ざして生きる者たちの力強さを讃えてんだけど、独り芝居で死んだ4人のガンマンはどうなるんだ? 勝ったのはガンマンではないのか?
似非(えせ)ガンマンのクリス(ユル・ブリンナー)が自分に云った台詞か? それだったら、よく解るよ。
何も云わず風のように去っていくヴィン(スティーブ・マックイーン)のための映画だったね。
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『荒野の七人』
人それぞれに好みもあるだろうけど、此の映画は、エルマー・バーンスタイン作曲の主題曲が、大きな波になって粗を消し去り繋げて名作にしてるね。
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『どうでもいいんだけど、盗賊の首領カルベラ(イーライ・ウォラック )の写真もちょっと貼っておこうか』
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「チコ(ホルスト・ブッフホルツ)ってのに全然触れてないね?」 ああ、ドイツの若者か、「ドイツ人か?」 そうだよ。
ドイツ人の割には、西部劇に馴染んでたね。ただ、こいつは、なんか書くことがないんだね。
此の映画で国際スターになったね。 後に、当った試写会で 「イスタンブール」ってのを観たね。
自分が百姓上がりでぐれてガンマンになった経緯から、劣等感がさせるのかして百姓の村人等を見下すような節があるんだね。
でも、村人の娘には恋するんだね。都合のいい奴だよ。銃の扱いは似非(えせ)ガンマンのユル・ブリンナーより手慣れてる。
最期は、生き残ってクリス(ユル・ブリンナー )とヴィン(スティーブ・マックイーン)とともに村を去るつもりで峠に立つんだけど迷ってる。
「行けよ」 クリスが背中を押す。村の娘は、彼が去ってしまうのか、残ってくれるのか気を揉んでる。其処へ馬の蹄の音が戻って来るんだね。
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『最期は、スティーブ・マックィーンだね』
『暁の7人』 『荒野の七人』 と、偶然、7が続いて今日は7月7日の七夕さんだね。
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