夫が発病してからだろうか、
もうずっと長いあいだ
「眠る」ということを忘れている。
夫が元気だったころ、
寝つきの悪い私は
翌朝のために
少しでも早く布団に入りたかった。
夫は布団に入ると
すぐに眠りにつくことができる人で
寝つきの悪い私は
夫の眠りを妨げないよう
暗闇の中で身動きひとつしないで
眠りが訪れるのを待った。
あのころ、
いのちのおわりを考えることはなかった。
なんと傲慢だったのか。
かぎりある時間だと気づいていたら
眠ることより
ふたりの時間をたいせつにすればよかったのに。
いまになって
こんなに眠れぬ夜を過ごすのなら
あのころ、
眠らずにふたりの時間をたいせつにすればよかったのに!
決して戻ることができない時間。
わたしには
過去しか見えない。
わたしには
夫のいない未来はない。
もうずっと長いあいだ
「眠る」ということを忘れている。
夫が元気だったころ、
寝つきの悪い私は
翌朝のために
少しでも早く布団に入りたかった。
夫は布団に入ると
すぐに眠りにつくことができる人で
寝つきの悪い私は
夫の眠りを妨げないよう
暗闇の中で身動きひとつしないで
眠りが訪れるのを待った。
あのころ、
いのちのおわりを考えることはなかった。
なんと傲慢だったのか。
かぎりある時間だと気づいていたら
眠ることより
ふたりの時間をたいせつにすればよかったのに。
いまになって
こんなに眠れぬ夜を過ごすのなら
あのころ、
眠らずにふたりの時間をたいせつにすればよかったのに!
決して戻ることができない時間。
わたしには
過去しか見えない。
わたしには
夫のいない未来はない。