朝早く起きると山には靄がかかり、墨絵のような美しさ。
ワンコの散歩に出ると、リスに出会った。
落ちている胡桃を拾っている。
もう冬の支度が始まっているのだろうか。
今日は夫の誕生日。
「お父さん、おめでとうって言おうね」と娘に話すが
怪訝そうな表情をする。
いなくなった人に「おめでとう」を言うということが
理解できないのだろうか・・・
いつも
「お父さん、行ってきまぁす」と「ただいまぁ」は言うのだけれど・・・
やけつくような夏がすぎ
日暮れが早くなった。
仕事から帰るともうあたりは薄暗い。
懐中電灯をもってワンコの散歩に出る。
これから、また、あの心も凍てつくような冬が来ると思うだけで
とても心細くなる。
でも、
不思議なえにしに支えられ
力づけられて
なんとか生きている。
精一杯とはいえないのだけれど
それでも、
今というこの瞬間を、
夫があんなに願いながらもかなわなかった
この瞬間を
私一人で生きている。
夫の苦しみ、悲しみ、それでもあきらめなかった未来への思い。
それらをすべて抱えて、生きていくのだと思う。
住民票妻といふ字が抹消され 世帯主とぞ書き込まれをり
青い空白い雲あり 紅く咲く曼珠沙華にもかなしみあらむ
追記
「お父さんはお誕生日に何が食べたいとおもう?」と娘に聞いてみた。
「ケーキかなぁ?それともお刺身かなぁ?」と言うと
しばらく考えて「お刺身!」と答えてくれた。
「そうだね、お父さんお刺身が好きだったねえ」
で、夕食は海鮮丼にすることに。
買い物から帰って来て、二人でお墓に行った。
そこに夫はいないと思うのに
お墓に行けば、夫に話しかけ、大泣きする毎日なのだが、
今日は娘と二人で
「お誕生日おめでとう」と言ってきた。
58回目のお誕生日だよ、
一緒に祝いたかったね・・・・・