奈良県の建築家が日々思う設計事務所の家づくり日記、住まいの設計や住宅設計、注文住宅、注文建築、暮らしの事、収納の事

住宅の設計・リフォーム、暮らしのデザイン提案を家具や生活習慣まで丁寧に考えています。

暮らしの空間に濃淡が生まれる構成要素の設計デザインに灯りと明るさのバランスと感度の提案、過ごし方の意識に質感を丁寧にレイアウトする空間構成を大切に。

2022年07月14日 | 設計の事デザインの事

人生の潤いを生み出す暮らしの空間を

設計デザインのチカラで・・・・・。

やまぐち建築設計室ホームページ 

 

 

よく考えられた住まい「家」を建てると

暮らしが楽しくなる。

 

 

 

 

暮らしの空間に照明の計画。

タスク域照明とアンビエント域照明。

 

 

 

 

直接的な照明と間接的な照明。

両方を兼ね備える

タスクアンビエント照明計画。

 

 

 

 

省エネ的にも

照明の役割として

空間領域的にもそれは重要で

タスクアンビエント照明とは、

簡単に言うと、

作業(task)領域と

それを取り巻く周辺(ambient)を

ちょうどよく照らす

照明のことです。

 

 

 

 

間接照明を使ったり・・・・・。

 

無駄に全体を

均一に照らすのではなく、

必要なところに

必要な明かるさで照らす、

というある意味

至ってシンプルな考え方。

 

 

 

 

全てが明るい空間、

そうではない空間の存在。

 

これにより無駄な電力を抑えつつ

効率的であり「効果」を得る

雰囲気も生み出す事が

可能になりますから。

 

 

 

 

何よりもそれにより

光の範囲に濃淡が

生まれることで

場の持つ雰囲気に

奥行きや立体感が生まれます。

 

 

 

心地よさを生み出す

空間構成としての明かるさの考え方。

 

素敵なカフェやレストランを

想像してみてください。

 

キチンと考えてデザインにより

計算された空間は

店内は薄暗い暖色系の照明(ambient)、

厨房は調理に必要な明るい照明(task)、

テーブルには料理を照らす

ペンダント照明(task)が存在して

そこにほんのりと漂う香り、

背景に流れる心地よい音楽、

一緒に過ごしたい人がいて、

そして美味しい料理やお酒が

組み合わさることで

雰囲気が醸成され、

とてもリラックスできる

という体験は

皆さんも感じた事があるのでは?。

 

少し話はそれますが、

谷崎潤一郎の

小説「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」には

僕にとって非常に印象的な

一節が登場します。

 

つまり金蒔絵は

明るい所で一度にパッと

その全体を見るものではなく

暗い所でいろいろの部分が

ときどき少しずつ

底光りするのを見るように

出来ているのであって、

豪華絢爛な模様の

大半を闇に隠してしまっているのが、

言い知れぬ叙情を催すのである。

(中公文庫「陰翳礼讃」P26より引用)

 

見えるべきもの全てが

一度に見えない方がいい、

という辺りを初めて読んだときは

一瞬ドキッとしましたが、

鈍い光により部分的に

見える状態にこそ

趣が生まれるというところには

妙に納得したものです。

 

光ではなく陰に焦点を当てるという

逆転の発想で生まれる

谷崎潤一郎の美意識。

 

部屋が明るいと

全てが一度に見えてしまい、

空間が均質になり味気ない。

 

しかし部屋に適度な闇が潜むことで、

明るさに濃淡が生まれ、

そこに「言い知れぬ叙情」が

浮かび上がってくる。

 

そしてこの「言い知れぬ叙情」こそが、

居心地の良さに

密接に関連しているというところ。

 

以上のような経験から、

僕が照明提案を調整して

プランニングをする際には

明かりと灯りというものを

強く意識するよう心がけています。

 

建物がどんなに素晴らしくても

明かりと灯りで失敗していたら、

居心地の良さも残念な結果となります。

 

だからそれらを囲う空間に

光の反射や色の濃淡を意識する

提案を「空間」として

カタチにしているんです。

 

素材の選定や提案もそういうところ。

明るさや濃淡、

色の見え方感じ方は

「光の反射」ですからね。

 

勿論それらは

住まい手さんの価値観に応じて。

 

何の変哲のない部屋でも

明かりと灯りで成功していたら、

そこに居心地の良さが生まれます。

 

明かりと灯りはそれくらい

空間にとって無視できない要素。

 

決して蔑ろにすべきではないと

感じています。

 

明かりには照明だけではなく、

もちろん外からの光も含まれます。

 

プランニングをする際、

居心地の感度と

部屋構成に

そういうったところ

少し考えてみてください。

 

僕がいつも住まいを考える際に

検討要素に入れている事があるのですが、

それは室内外で

明かりの重心を落とす、

ということ。

 

理想的には

天井には照明器具を設置せず、

ペンダント照明は極力長く垂らし、

壁面のブラケット照明は

ぶつからない程度の高さまで下げ、

開口部は高さを控えめにする。

 

もっと採ろうと思えば

採れるはずの明かりを

敢えて絞ることで、

逆説的に室内に残った明かりの重み

ありがたみが増します。

 

座ったり腰を掛けた時に

居心地がいいと感じられるためには、

明かりの重心を適度に下げ、

天井を薄暗く

フェイドアウトさせるということが

居心地にとっては重要なのでは?

と僕は考えています。

 

これだけ色々話を展開してきましたが、

いやいや暗いより明るい方がずっといいよ、

という価値観を持っている方が

沢山いることも知っています。

 

明るさも過ごす為には

大切な要素なので。

 

居心地の良さの尺度は

人それぞれで、

そこに絶対的な答えはありません。

 

それでも今回僕が書いた

このような価値に

少しでも興味を持ち、

照明の考え方も「暮らし」を

丁寧に考える為の

キッカケとなれば幸いです。

 

住宅計画での思考の範囲は

家の事を考えつつも

暮らし全体の意味に意識を向けて。

 

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