また写真館の続き。
木馬である。きんま、と読む。馬というより橇の上に丸太を積み上げ、木の線路(木馬道)の上を人間が引っ張って運ぶ。道ではなく、梯子状に組まれた線路の上を歩きながら橇を引っ張るのだから、おそるべき木材搬出方法である。伐採現場から、木馬道まで丸太を落とし、土場までこれで運ぶ。川を流すのは、その後のことだ。
これが、江戸時代、明治、大正、そして昭和に入って戦後も結構長く続けられていたことに仰天する。
おそらく積む木材の重さは1トン近くになったのではないか。重要なのは、線路で、わずかに下りの傾斜を付けてあること。だから人力でも動くのだが、それでもたまには詰まる。すると油を垂らして滑らすのだそうだ。逆に滑りすぎると暴走して危険なのだが、ブレーキはない。かろうじて橇に用意した紐を巻き付けて摩擦で止める。全身を丸太の前にさらして足で踏ん張る。失敗したら人体は踏みつぶされるだろう。
危険で重労働ゆえに、木馬挽きの待遇はよかったらしいが、今ではできる者はいないし、やりたい人もいまい。しかし、写真でわかるとおり、数珠つなぎで木馬を挽く時代があったのだ。