人生いろは坂

人生は山あり谷あり、そんなしんどい人生だから面白い。あの坂を登りきったら新しい景色が見えてくる。

映画「おくりびと」

2008-09-30 11:42:56 | Weblog
 日常茶飯事のように殺人事件が絶えない。無差別な殺人があれば、
自分の人生を精算したいとして他人を巻き込むような殺人事件もある。
 このように人の命が簡単に奪われてしまう一方で、何故か身の回り
から死というものが遠のいているようにも見える。この奇妙な現象は
いったい何だろう。

 一つには死を間近に見つめることが少なくなったからだろうか。
家で死を迎えることが少なくなり、病院で亡くなることが多くなった
こともあるだろう。
 私が子どもだった頃、人の死というものは実に身近であった。近所
のおばあちゃんが亡くなったと言えば周辺の人が総出で死を悼み野辺
送りを行ってきた。

 戦争中は常に死と隣り合わせで生きてきた。戦地に行ったものは
もちろん、内地でも日々空襲によって死と隣り合わせであった。
その頃、命はごく身近なものとして感じていたのではないだろうか。

平和になって何故、人の命が軽く扱われるようになってしまった
のだろうか。今日ほど人の死が軽視されている時代はないように
思える。
 その一方で常に死というものに怯え不安を抱いていて、現実から
目を反らそうとしているのが私達だ。人の命はかけがえのないものだ。
それはこの世に生を受ける確率を考えてみれば良く分かることだ。

 映画「おくりびと」は様々な死というものを取り上げつつ、死とは
何かと問いかけている。一人の青年が社会一般からは忌み嫌われて
いる死者の入棺の準備をするという仕事を通じて、死というものに
向き合っていく。
 地味なテーマではあるが、誰しもが直面することを真正面から
とらえていて面白い。それでいて暗さを微塵も感じさせないのは
監督の差配と言うべきだろうか。
 ここで詳細を記すよりは一度鑑賞されることをお勧めしたい。良い
映画である。

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