人生いろは坂

人生は山あり谷あり、そんなしんどい人生だから面白い。あの坂を登りきったら新しい景色が見えてくる。

地球一周の旅から10年(24) ニュージーランド(立憲君主国)

2014-12-26 05:48:43 | Weblog
 地球一周の旅で唯一のオーバーラウンドツアーがニュージーランド南島のツアーであった。数多くのツアーは、ほとんどが
寄港地を基点に出発し、その寄港地へ戻ってきて次の寄港地へ向けて出発する。しかし、オーバーラウンドツアーの場合
旅行期間が長くなるので船は待っていてくれない。従って、次の寄港地で船に乗り他の船客と合流することになる。

 こうしたオーバーラウンドツアーは少なくともツアー地近くの港から出発すると言う時間的なメリットがある。更には次の
寄港地が近ければ近いほど時間的に有利となる。つまりは旅行先からツアーが始まりツアーが終わっても、そう遠くない寄港地
まで飛行機で移動すれば再び船旅へ合流できるのだ。

 イースター島からの長い航海の末にニュージーランド北島のオークランドに着いた。ここも大きな街だった。近代的な街が
大抵同じように市の中心部に高層ビルが集中し、遠目には尖った山のように見える。これがこの旅行を通じて発見した船旅での
感想であった。人はどこでも同じようなものを作るらしい。ただし近代的な街の形を見ることが出来るのは船旅だけだ。航空機
での旅ではこの姿を見ることは出来ない。

 ニュージーランドは南島と北島に分かれている。人口が集中しているのは首都のある北島だ。しかし、南島の方が大きい。
私達のツアーは北島の寄港地であるオークランドから飛行機で南島へ移動した。南島の中心都市はクライストチャーチ市だ。
ここには有名な教会があり、この教会がクライストチャーチと言う。信仰の対象が街のシンボルであり、この街の名前になって
いる。

北島から南東への移動のとき、眼下には有名なサザンアルプスの山並みが幾重にも波打つように連なっていた。標高はヒマラヤ
山脈には及ばないが、これらの山々には万年雪が残っていて、その内の幾つかは大きな氷河となって山を下っている。さして
標高が高いとは言えない山脈に氷河が出来るにはその訳がある。

 一般的に氷河が出来るには山に降った雪が固まり氷にならなければ出来ない。そして固まった分厚い氷は自らの重さに
耐え切れなくなって山を下り始める。これが氷河である。私達は辛抱強く気象条件が整うのを待ってヘリコプターで氷河見物を
行った。

 雪が積もって氷となった山頂付近は凸凹の氷の広場になっていた。軽飛行機なら着陸できるくらいの広さがある。さすがに
この氷原の周辺は雲の上になっていて空の青さが際立っていた。目を凝らせば星が見えるのではないかと思えるほどの濃い青空で
ある。そして周辺の峰々に残った雪が太陽の光を浴びて白く輝いている様子が幻想的だ。私はともすれば滑って転びそうになる体を
家内に支えて貰いながら何枚もの写真をカメラに収めた。二度と再び見ることはないであろう景色であった。

 ヘリコプターはいったんは氷原に着陸し、再び飛び立った。今度は氷河の真上を氷河沿いに降りていく。初めは氷の塊だった
ものが傾きを増すにつれ次第にヒビが入り割れていく。大きな割れ目はまさしくクレバスだ。こうして更に下ると勢いを増し
周辺の山を削りながら一気に急こう配の斜面を流れ落ちていく。そのスピードはさして早そうには思えないが、中には一年間に
数百メートルと言うスピードのものもあるようだ。

 氷河の先端はヘリコプターからでなくても見ることが出来る。ある場所まで流れてくると途切れたように先端部が現れる。
この途切れたような氷の壁が氷河の先端だ。近年、この先端部がますます山深くなっていくらしい。全ては温暖化によるものだ。
こうした先端部から解けだした流れが、平野では大河となって流れていた。その水は削った岩の微粒子を溶かしていて白く
濁っていた。

 私達のニュージーランドツアーの大きな目的は氷河見物だった。幾つかの氷河の先端部を見て歩き、そして氷河の真上を
ヘリコプターで飛んだ。氷河が生まれる場所へも降り立った。全ての目的は達したわけである。ここでニュージーランドに
ついて、もう少し詳しく触れておこう。

 ニュージーランドと言えば、なだらかな山の斜面と羊を連想する。確かに南島にはなだらかな草だけの丘陵地帯が連なっている。
しかし、この牧草地はその昔、島の反対側と同じように原生林だったらしい。しかし、原住民たちが食料にするためにモアという
巨大な鳥を森から追い出すときに焼き払ったために森はなくなり草原になったと言われている。巨鳥を森から追い出すために火を
使ったらしい。

 そのために原生林は消えてなくなり、その後をヨーロッパからの移民たちが羊を飼うための牧草地として利用しているらしい。
ニュージーランドは今でこそ白人中心の国であるが、沖合の太平洋上に点在している島々やオーストラリア大陸、更には、先に
見てきたイースター島までポリネシア人達の祖先が住み着いた島や大陸である。ちなみにこの国ではポリネシア人の末裔たちを
マオリ族と言う。今でも彼らの集落が集中している場所が南島にはある。

 ニュージーランドと言えば思い出すのはキャプテン・クックとヒラリー卿だ。キャプテンクックはイギリスの探検家であり船長だ。
サザンアルプスの中には、このクック船長の名を取って名付けたクック山という有名な山がある。私達はほんのわずかな時間しか
山頂までの全容を見ることは出来なかった。比較的高い山なのでいつも雲がかかっている。

 そして、このクック山(マウントクックとも言う)で登山訓練をしたのが、ヒマラヤ初登頂に成功したヒラリー卿だ。この人の
功績を称えて銅像が立っている。その銅像が向かっている先にクック山がある。ちなみにこの英雄はニュージーランド紙幣にも
印刷されている。

 昔の絵葉書を見るとサザンアルプスを背景に色とりどりのルピナスが咲いている写真を見かけることがある。羊と同じように
ニュージーランドのシンボル化と思っていたら、実は外来種で自然保護を厳しくしているこの国にとってはあってはならない
厄介者のようだ。ある婦人がイギリスから持ち込んだものが気候風土とマッチして増えたもののようだ。

 従って、在来種を駆逐するものとして、今は絶滅を目指しているらしい。日本のように何が入って来てもお構いなしの国とは
随分違うようだ。また、この国にはいなかった外来種の動物(フクロギツネ)が、天敵となるものがいなかったためにやたら増えて
困っているとも聞いた。この動物を持ち込んだのは毛皮が目的だったらしい。あの最南端のウシュアイアでもビーバーを
持ち込んだために森林が食い荒らされていた。しかし、いったん持ち込んだものの駆逐はなかなか難しいようだ。

 長くなってしまった。次は隣国オーストラリアだ。
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