共通テーマ「物」でSが書いた詩を投稿します。
手袋
それは 前後の脈絡もなく
夜の流れの中
駅の雑踏で
毛糸の手袋をはめたままの握手
ユトリロが
好きだった青年との再会
喫茶店に入って
ココアを飲むのは
ひどく断片的なことで
もう ユトリロは好きじゃない
と彼は云う
似たもの同士の気らくさから
イタリア留学のはなし
エッチングのはなし
二度の結婚
子供のはなし
で おしまい
ときどき しみじみと
わたしたちは声を上げ笑った
それから また
手袋をはめ握手して
遠ざかると ふたりの顔は
ほこりっぽい風景にあわせて
小さなデスマスクになったように 思う
手袋
それは 前後の脈絡もなく
夜の流れの中
駅の雑踏で
毛糸の手袋をはめたままの握手
ユトリロが
好きだった青年との再会
喫茶店に入って
ココアを飲むのは
ひどく断片的なことで
もう ユトリロは好きじゃない
と彼は云う
似たもの同士の気らくさから
イタリア留学のはなし
エッチングのはなし
二度の結婚
子供のはなし
で おしまい
ときどき しみじみと
わたしたちは声を上げ笑った
それから また
手袋をはめ握手して
遠ざかると ふたりの顔は
ほこりっぽい風景にあわせて
小さなデスマスクになったように 思う