湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

詩集「ジャズ」から

2016-04-26 23:51:38 | 
Sは約30年前に一冊の詩集を出しています。
4月16日の合評会の時に、その代表作について作者による解説をしてもらいました。

   夕暮れ
焼場の帰りのような眼をして
夕暮れの街を歩く
知った顔に出会わないのがなぐさめで
壁に囲まれているより こうしていると
希薄になれて気分がいい
「生」は
死を裏返しただけで
解説困難ではないだろう
むしろ「死」がくせものだ
「死」は視えた そして
破壊は不可能だった……
なぜ 夕暮れが夕暮れで
いつからこの路地に
魚を焼く匂いが流れるようになったか
いつまで自分は生きるか
なぞはかぞえきれないほどある
ああ こうして歩いているみんなも私も
一寸先は闇である それが
死者と生者の連帯か
死者達の姿は 面影は変らないが
夕暮れは いつでも
あの日の夕暮れと 何かがひどく異っている


冒頭の一行は自分を客観的に描いたもの。
主人公は「生」の船酔いをしています。「生」の船酔いは死ねば治るわけで、それが救いなのです。
「視えた」と書くのが作者のこだわりで、例えば霊柩車が通るとか具体的に「死」が見える瞬間を表しています。
コメント
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