湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

物の詩パート15

2016-04-24 11:06:21 | オリジナル
共通テーマ「物」でSが書いた詩を投稿します。

手袋

それは 前後の脈絡もなく
夜の流れの中
駅の雑踏で
毛糸の手袋をはめたままの握手
ユトリロが
好きだった青年との再会
喫茶店に入って
ココアを飲むのは
ひどく断片的なことで

もう ユトリロは好きじゃない
と彼は云う
似たもの同士の気らくさから
イタリア留学のはなし
エッチングのはなし
二度の結婚
子供のはなし
で おしまい

ときどき しみじみと
わたしたちは声を上げ笑った
それから また
手袋をはめ握手して
遠ざかると ふたりの顔は
ほこりっぽい風景にあわせて
小さなデスマスクになったように 思う

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