湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

浮かぶの詩&虫の詩

2017-04-30 00:00:42 | オリジナル
Hが書いた「浮かぶ」の詩とSの「虫」の詩を投稿します。
明日は「浮かぶ」「虫」の詩の合評会です。よろしくお願いします。

浮遊(仮)

進歩したのだろうか
成長しただろうか

進歩していると言われ続け
その気になった

流されているような
漂っているような

ある姿は美しい
ただそこにいるだけで
心地良く美しい

移ろい行く影は私を追いかけない
隣を通りすぎる

何もあの時とは変わっていない

古びたと言われる幸福


弱虫

カネでカイケツできぬどん底だってあって
二つ半のとき世界一になれと
母にまかれたハチマキがいまとれない
どん底などとカンタンに云うな という人もいるが……
どん底の目鼻立ちは虫の屍の数を超えたし
神だけは死なぬものと信じていたが
なんでもありの時代がとうとうやってきて
本日は晴天なりの本日
かゆいやら痛いやらさみしいやら
一つしかないオモチャもいまだ慣れず
笑えない喜劇が長すぎ
ハチマキまいたまま銀髪の弱虫になり
笑われっぱなしの泣くこともできぬ喜劇
泣きたいワタシは
いつもハンカチを用意しているのだが
あしたの朝 太陽は 核戦争で
上がらないかもしれぬ
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浮かぶの詩パート6

2017-04-29 00:12:34 | オリジナル
共通テーマ「浮かぶ」でSが書いた詩を投稿します。

浮かぶ

なにが浮かぶ
浮かぶときいてと
友人にきくが笑ってくれない

ジョークずきのわたしだから
声をあげすぐアハハと笑ってほしいのだ
軽くね!

要するに考えるときは
重ったるくではなく
軽く ということです

満員電車のなかで
人と人のあいだに浮かぶように
立つとか……

わたしのジョークずきは父の血だ
ねむれぬ夜 数人の顔が眼に浮かぶ
笑顔は 父だけである
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虫の詩パート9

2017-04-28 00:00:51 | オリジナル
共通テーマ「虫」でSが書いた詩を投稿します。

とおいものにあこがれる

地を這うぼくら虫は
とおいものにあこがれます
虫というものは言葉を話しません
異国に妻子がいても
青いシトロエンを持っていても
楽器を奏でるたくさんの指のことも
信仰についても哲学も美学についても
すべてはヒミツです語りはしないのです
鳴くことはありますが たとえば
詩の中の一節に
空を泳ぐ人参や毛皮などを見つけると
それらがありありと見え鳴いてしまうのです

広い空は
大きな雲まで浮かべてぜいたくです
羽のある仲間の
それはあこがれのまとですよ


今日が「虫」「浮かぶ」の詩の提出締切です。よろしくお願いします。
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虫の詩パート8

2017-04-27 00:58:13 | オリジナル
共通テーマ「虫」でSが書いた詩を投稿します。

虫への手紙

死にたい死にたい死にたいと
思いました
サクラの咲くまぶしい朝に
きょうはあなたがた蟻さんたちの葬儀の日です
 キリエ・エイソン(主よ あわれみたまえ)
きのうの朝 あなたたちの行列の頭上に
私は
ヤカン2ハイの熱湯をかけ あなたがたを殺しました
近所に大きなビルがあります
身を投げることもできたのです
 (主よ あわれみたまえ)
殺人者は祈らねばなりません
私はいつから祈らなくなったのでしょう

何という静けさでしょう
あなたがたアリさんたちの歌声(気配)がきこえません
明日は 祈れるかもしれません
過去を私は剥製にしてポケットに入れるなんてできないのです
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虫の詩パート7

2017-04-26 00:00:51 | オリジナル
共通テーマ「虫」でSが買いた詩を投稿します。

二ひきの虫(或る心象)

私そっくりの虫が歩いてくる
あるいは 歩いてこない?
私は盲いなどだ
だが たしかに笛の音が耳のそばで聞こえている
友情の笛か敵意の笛か分からない
笛の門外漢かプロなのかも分かりかねるのだ

立ちどまったままの
虫二ひき
両者とも笛を吹きつづける
自慢の笛か自尊の笛か
束縛し合い
両者が吹きやめぬかぎり
「解放」はない
虫よ 虫たちよ
いつものようにゆっくり
すれちがってしまいましょう
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虫の詩パート6

2017-04-25 00:00:16 | オリジナル
共通テーマ「虫」でSが書いた詩を投稿します。



自分を責める虫などいないでしょう
あの日 右へ曲がればよかったとか
なぜ愛していると言えなかったかなど

考える虫はいないでしょう
自分を
虫けらだなどと
虫は考えないはず
死ぬ話はべつのことで
虫の死は人の死と似ているが
死に対し 虫は恐怖も希望も味わわない
あらゆる死は自殺よりもきたならしい(注)
と考えた人がいるが同感である
こんな論文みたいな詩は
次の一行で終わらせたい
 「ふんころがしの一生はすてきだ!」

(注)文芸批評家アルヴァレズの「自殺」の考え方。本の題名が思い出せません。
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虫の詩パート5

2017-04-24 00:00:37 | オリジナル
共通テーマ「虫」でTが書いた詩を投稿します。



目覚めると
私の体のところどころから
緑の光がもれ出している
遮光カーテンを閉めてあるので
天井や壁に光が反射している
部屋はセラード(ブラジル)の草原で
私は大きな蟻塚

 今 蛍の樹の夢を見ていた
 群がる光の点滅で
 樹が鼓動している
 この世に戻ってきた人の魂が蛍だとしたら
 どれかが合図をしてくれないだろうか
 私はそれを探して見入っていた

そうか あの人はもういないのだ

蟻塚になった私の中には
泣き虫の幼虫がいて
ひかっているのだ
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浮かぶの詩パート5

2017-04-23 10:59:21 | オリジナル
共通テーマ「浮かぶ」でAが書いた詩を投稿します。

汀の国

移動と停止の行間に
とある季節が露呈し
放射性の海が
視界に入る

神の子孫を利用する
この国の名は何
紙束を抱え
海に浮かぶ
何という旗
ミサイルに狙われる
汀が見える
白く柔らかい島の
終点に向かって
進むほど
線路は巻き戻る

ホームの端で線路が切れ
そこで支線が終わっている
向かい合わせのシートに
北を向いて腰掛けている


「浮かぶ」「虫」の詩の締切は今月の28日(金)です。
未提出のH・I・K・S・Xさん、お待ちしています。
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港の人創立20周年

2017-04-21 16:41:32 | 文学
Aの詩集「チランジア」の発行元である鎌倉の出版社、港の人からPR誌「港のひと」最新号・創立20周年記念特集号が届きました。

巻頭に掲載されているのは、北村太郎の「少年の夢 または いつまでも来ない人」という詩です。
出だしを引用します。

(ねえ 何を夢みているの?)
だれもいなかった 光りの
輪のなかに 詩集がひろげてあった
少年の耳には ほそくなってゆく雨と
脚をこする虫たちしか きこえなかった


創立20周年記念出版として、北村太郎の名詩集「港の人」を来月復刊するそうです。おめでとうございます。

↑「チランジア」も掲載されている新刊案内「港の人の本」
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虫の詩パート4

2017-04-20 12:22:15 | オリジナル
共通テーマ「虫」でAが書いた詩を投稿します。

色のない蝶

色のない春であった
持たされた買物籠の底に
少しの銭が入ったがまぐち
水蒸気が立つ黒く太い道に
シジミ蝶が群れる帰化植物
そこだけが切実に動いている

買物籠の底が地面につかぬよう
畦道にしゃがみ
膨らませた掌の中に捕えると
シジミ蝶の小さな羽は
思いがけない強さで
硬く掌を叩く
羽ばたきの速さに
追いつこうとするように
鼓動が早まって
耐え切れず両手を開く

黒い道は急な上り坂になり
灰色のアスファルトに出る
その先が小さな商店街だった
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