湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

深いの詩パート5

2021-01-30 18:33:52 | オリジナル
共通テーマ「深い」でAが書いた詩を投稿します。

目の深奥から

鼻から顎をマスクで覆い
目深に帽子をかぶって歩く
案の定店先にいるわ
一秒だけ警戒の光を発したら
あとは目を弁当に向けて
テイクアウトするものを指差すだけ

帰り道の地面に映る
頭部の薄い影は
私の形をしていない

表情丸出しで人に会い
空気を直接震わせて話すのが
今ではなんだか
裸で出かけるほど
あり得ないことに感じる
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名前の詩パート7

2021-01-28 10:17:12 | オリジナル
共通テーマ「名前」でAが書いた詩を投稿します。

ほぼ対称

その日のランチタイムに
アケミ嬢が言った
シンメトリーが苦手なんですよ
あるじゃないですか
左右同じ形してるお城や教会

生物は左右対称形だ
私なんて苗字も左右対称だ
でもよく見ると
文字の右足は払いで
左側の足ははねていて
完全な左右対称ではない
人間もそうだ

完全なシンメトリーは
この世界にはないのだ
アケミ嬢の嫌いな建築物だってよく見ると
左右のステンドグラスの絵柄が違うかもしれない
右の棟には色褪せがあり
左の棟には補修跡があるかもしれない
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寒中俳句

2021-01-25 18:27:01 | 文学
先日のNHK俳句で、今年は2月2日が節分だからその日までが大寒だと言ってました。
あと1週間ほどで暦の上では春になるんですね。春を待ちながら「寒」の俳句を詠んでみました。

大寒の朝の硝子窓に触るる
浪音に重なり初めし寒九雨
寒雷や顔を見合わす待合所
寒中に大晴ありてリュック負ふ
カツカレー肴に寒の昼餉かな
洗濯物とベランダに居る寒晴間

明日は湘南句会の投句締切日です。よろしくお願いします。
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コロナ俳句

2021-01-23 22:40:26 | 文学
2月1日発行予定の「逗子文化の会ニュースレター」に、コロナ禍での湘南句会について寄稿しました。
コラムの中で、昨年私たちが詠んだ次のコロナ関連句を紹介しています。
物干にマスクぶらんこめきて揺れ
順を待つブランコあれは去年の春
感染症伝える記事ある兜かな
てのひらに消毒貰う夏至の塾
アクリル板越しの落鮎塩光る


今年もいくつかコロナ俳句が誕生しそう。早くコロナ終息を詠めますように
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深いの詩パート4

2021-01-22 06:44:48 | オリジナル
Tが書いた詩を投稿します。



夏の深い森しか知らなかった
夫に連れられて初めて来た四十五年前から
蝉は鳴き 虫は動き回り
木々は重たげに葉を揺らし
薄暗く 湿っていた
森のはずれに小さな墓石が三十個ほどある
ほとんど苔むして彫られている字も分からない
夫の先祖の墓だ
隣に二メートル四方の小さな神社もある
夫の家のものだという
この森で何があったのか もう誰も知らない
墓や神社の周りはいつもざわついていた
何百年もの時間がすこしづつ浸み出していた

きのう森へ行った
落葉樹の森は
裸木の間から薄い陽が零れて
枯葉の上に細かい網目模様の影ができている
それに捕らわれて全てが眠っている
気を感じられない乾ききった森を初めて見た
木の根元に腰を下ろすと
私の上にも網目の影が落ちている
眠りに就くのには一番いい場所だ
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名前の詩パート6

2021-01-21 01:36:35 | オリジナル
共通テーマ「名前」でTが書いた詩を投稿します。

蕗子さん
私の名前「路」の上に草冠をつける蕗子さん
二か月半前から部屋に灯りがつかなくなった
安否確認は警察にしてもらった
個人情報保護の観点からどこで何をしているのかは教えてもらえない
どこかの病院に入院しているのだろう
今は分かったところで見舞いに行くことはできない
自粛生活とその後の暑い夏で半年は外出しなかったらしい
それでも詩はきちんと書いていた
「詩なんか書いている場合じゃないわ。筋力をつけないと歩けなくなるわよ」
「きたえるのは嫌い。詩を書くのは好き」
全て好き嫌いで生きてきた人だ
「独り暮らしだから気を付けないと」
「歩き過ぎてもいけないの」
他人の言うことは聞かなかった
イロニーを含んだ独特の詩はもう読めないのだろうか
「これは散文だわ」
厳しい批判も聞かれないのだろうか
どこかの病院のベッドで詩を考えていてほしい
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絵画&俳句

2021-01-20 18:33:09 | 文学
文芸をライフワークにしたいので今生では絵には手を出しませんと言っていたのに、辛抱できずに去年水彩画を始めてしまいました。
言葉書きとのコラボってことで、絵を描いている時のことも俳句に詠んでます。
ジョーヌ・ブリヤンで描くレモンや外は雨
静物画描き終え皆でレモン分け
ビリジャンをティッシュでぼかし大根
(だいこ)描く



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磁石・白鳥の句

2021-01-19 23:48:53 | 文学
今日のカナブン俳句教室で講師特選いただきました。お題は「磁石」。
空缶数多吸い上げ四日の大磁石
資源物処理場の仕事始めの光景を詠みました。
お題「白鳥」では次の句が入選。
倉敷川
クラボウの空へ白鳥綿花めき(添削後)


季語ではないお題も出るのでひねり甲斐があるカナブン句会。
今年も愉しんでやっていきたいと思います。
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名前の詩パート5

2021-01-18 19:40:49 | オリジナル
共通テーマ「名前」でAが書いた詩を投稿します。



いつもどおり
鈴さんと会うつもりで横須賀へ
ちょうどの時間に入り口をくぐると
麗さんが駆け寄って
鈴さんの急逝を知らせる

表現することが好きで
好奇心に忠実に動いていた
あなたの鈴がもう鳴らない
声の鈴
体の鈴
言葉の鈴が

いつもと違う風が吹く教室から
麗さんは早めに帰って行った
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深いの詩パート3

2021-01-16 20:56:47 | オリジナル
共通テーマ「深い」でEが書いた詩を投稿します。

深い

地が深いか
天が深いか
地の深さは最大地球の直径
有限
天の深さはビッグバン以来の
138億光年の2倍
とてつもない深さだが
これとて有限
宇宙は膨張しているという
ならば膨張を許している
場があるはず
その場は不可知
涯がない
人はそれを求めて懊悩する
懊悩のはて詩人は
狂気の一歩手前で立止る
 人の眼に隠れて
 熟れて行く果実 *
その周囲に天を託して
わずかに慰めをえる

小さな脳細胞が
極限を包摂して静まる
深さ

   *引用 高見順
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