湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

鏡の詩パート4

2023-09-30 06:48:48 | オリジナル

共通テーマ「鏡」でMが書いた詩を投稿します。

三面鏡

 
母親は水商売をしていた
三面鏡を開いたら そろそろ仕事だとわかる
身支度を整えた母は 三面鏡を閉じ出かけてしまった
 
帰りは夜中
カミナリと風の強いその日は
怖くて寝付けず
泣きながら母を探しに裸足で外に出ていた
近所のおばさんが心配して 手招きをする
恥ずかしくて 家へ引き返した
そのことは 母は知らない
 
今日もまた出掛けてしまった
一人残された私は 三面鏡を割ってしまいたい衝動に駆られていた
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鏡の詩パート3

2023-09-29 09:07:25 | オリジナル

共通テーマ「鏡」でTが書いた詩を投稿します。

 YOKOSUKA REGGAE BASH 2023

昼下がり


埴輪が鏡の中で化粧をしている日は
行脚僧は昼寝をし
燃え過ぎた陽は レールの上であくびをする
影法師の中で肌色の唇はメロンを吸い
ガラス瓶の中の砂時計ははじけ
引き込み線の向こう
町があるのは乳房の中

ふいと骸は起き上がり
ローラースケートはいて高速道路を走っていく

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閉じるの詩パート6

2023-09-28 05:08:09 | オリジナル

共通テーマ「閉じる」でMが書いた詩を投稿します。

自己啓発本と自己暗示

 
本を開く 
ざっと目を通し 大きく深呼吸
「よし 大丈夫」と本を閉じる 
そんな習慣は 15年くらい前から始まった
 
結婚 出産を経て 
安定収入の無い生活は 必然的に共働き
選んだ先は 老舗和菓子工場
久しぶりの社会復帰は 不安的中
一週間 一カ月 半年過ぎる頃 
不器用な私は 同期の人とあっという間に大差がついた
 
そんなこんなで縋ったのが自己啓発本
職場が変わるたび増えていった
 
ちょっと中毒気味だったけれど 
今は本は閉じたまま
 
「脳みそは騙せる」と
脳博士がテレビで言っていたのを観て 
単純な私はその日以来 不安になると
「落ち着いて 大丈夫だよ」と
自分に暗示をかけている
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閉じるの詩パート5

2023-09-27 05:21:13 | オリジナル

共通テーマ「閉じる」でTが書いた詩を投稿します。

開閉


友人も持たず
掃除夫として職場とアパートのみを行き来し
六十年 自分のためだけに
膨大な物語と絵「非現実の王国」を書いた
ヘンリー・ダーガー
閉じていても彼の世界は豊かだった

世界に向かって開いていても
いいね を押して皆と同じことをし
同じ場所におしかけ
意見に合わないと誹謗中傷
今は皆貧しい人達だらけだ

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字の詩パート3

2023-09-26 17:43:25 | オリジナル

共通テーマ「字」でMが書いた詩を投稿します。

文字の威力

 
手紙が好きだ
今の感情を多少抑え気味に
でも 途中から熱くなり
書き終える頃は 伝えきったとすっきりする
たわいもない近況報告
変化のあった日常生活
お世話になった感謝の気持ち
きっかけが何であれペンを走らせる
 
文字には威力がある
憎しみ 悲しみもしっかり文字に入り込む
だからそんな手紙は書かない 書くこともないと思う
 
ある日
どうしても勤めたいところがあって
会ったこともない そのお店のオーナーあてに手紙を送った
そのお店と仕事に対する気持ちを
一文字一文字に託して
 
一カ月後 仮採用の返信がメールで届いた
手紙って
こんな奇跡も起こせるんだと
改めて知った
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閉じるの詩パート4

2023-09-25 18:38:30 | オリジナル

共通テーマ「閉じる」でAが書いた詩を投稿します。

安物買い

 

閉店セールで

安売りしている論を

ひとかかえ買って帰った

とりあえず台所の隅に

ころがしておいたら

次の朝腐っていた

 

あの店は閉店後

内外装を変え再び開店した

テカテカした新しい論を並べて

 

腐ったものを裏庭に埋めても

堆肥にすらならない

イズムばかりを取り揃えて

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閉じるの詩パート3

2023-09-23 11:10:53 | イベント
共通テーマ「閉じる」でZが書いた詩を投稿します。
閉じる
 
部屋のドアに 鍵掛けて
僕はもう何年も 閉じこもっているんだ
 
そんな僕が 一ヶ月に一度外出するして
お話しする相手と言えば  
八十を過ぎたおじいちゃんとおばあちゃん
おじいちゃん達も 本音を言わないし
僕も 本当の僕の心を言わないんだ
それでも 何か褒めて欲しくて
バスと電車に乗って 
おじいちゃん おばあちゃんに会いに行くんだ
僕は自分が 深い谷間に落ち続けている事ぐらい
充分わかっているのだけれど
また 家に帰ってドアに鍵を掛けてしまう
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鏡の詩パート2

2023-09-22 11:06:55 | オリジナル

共通テーマ「鏡」でAが書いた詩を投稿します。

なにかの鑑

 

十年前から話し合っている

地域の案件が進展しない

それを「着々と進んでいる」

と 彼は言う

ワークショップや会議の

回数をこなすことが着々と?

地域住民が脈略なく意見を出して

理解し合うことが着々と?

 

一流のジョークなのか

救いがたく呑気なのか

 

生い育った環境にも基本的性格にも

彼ほど恵まれていないが  

そろそろ肯定的楽観的な人になろうかとか 

一晩で温和な賢人になれたらいいのにとか 

無理無体なことを考える

実現したらどんなにストレスだろうかと

不自然な姿勢で寝転がりながら考える

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鏡の詩パート1

2023-09-20 22:45:02 | オリジナル
共通テーマ「鏡」でZが書いた詩を投稿します。神武寺のハンミョウ(道教え)の写真も、Zの撮影です。
 
私は 長い間自分の顔を見て居ないから
私の顔を 忘れてしまいそうだ
一ヶ月に一度 散髪屋の椅子に座った時
一瞬は我が面を見るのだが すぐに眼を閉じてしまう
散髪の終わり際 自身の面を見るが
それも一秒かそこらなのである
そんなわけで ほとんど自身の顔を忘れているのだが
 
マイナンバーをスキャンしたとき気が付いた
マイナンバーに貼ってある私の顔を例え私が忘れたとしても
お上は忘れずに私だと覚えているのだ 
もはや私の顔は私のものでなく お上のものなのだ
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字の詩パート2

2023-09-19 17:31:16 | オリジナル

共通テーマ「字」でZが書いた詩を投稿します。神武寺のタマアジサイの写真もZの撮影です。

文字

僕は 何度も 無視されるメールを書いた
それでも 返信を待ってはいたが 暫くすると
僕は 僕自身にメールしていることに気がついた
まるで 誰にも読まれない日記の様なメール
そんな一人ぼっちの 僕を支えてきたものは
何度も 繰り返し反芻した 一編の詩 映画の科白
否 そんなものを杖がわりにして生きてきた筈はない
 
僕が 倒れないで居られるのは
僕が出会った人たちとの 一杯の思い出
文字なんかで支えられる様な 僕ではないのだ
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