湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

文藝首都と林京子

2017-07-31 18:36:02 | 文学
勝目梓の自伝的小説「小説家」を読みました。

主人公である「彼」の人生が大きく三つに分けて描かれています。その第三章にあたる、前の東京オリンピックあたりからの話がとても興味深かったです。特に同人誌「文藝首都」(昭和8~44年)のことが詳述されている箇所に引き込まれました。一部を引用します。
『文藝首都』は他の同人誌と違って、門戸を一般に広く開放していたので、所定の会費を納入すれば誰でも会員になれた。会員は作品を投稿することができる。集まった投稿作品は、同人の中から選ばれた編集委員が手分けして読み、二名の読み手の推挙があれば誌上に掲載される、というシステムになっていた。掲載に至らなかった投稿作品には、それを読んだ編集委員の評が付けられて返送された。
 雑誌は毎月の刊行が守られ、彼が後に編集委員を務めていたころは、月々の投稿作品の数が百篇を優に超えていたから、いわば月ごとに会員の間でコンクールが行われているようなものといえた。そのようにして一定水準の実力を示した会員は、編集委員会の議決によって同人に加えられ、さらには編集委員に選ばれる者も出てくる。
 編集委員は常時十数名をかぞえていたし、それぞれの年代も文学観もまちまちだったから、掲載作品の選定になんらかの偏向が生じるということは起きなかった。新人の育成を謳った同人誌としては、これはまことに理に適った運営方式だった。
 その他にも、毎月の掲載全作品についての合評会が、全国の支部ごとに開かれていたし、作家や評論家を招いて話を聴く集まりなども行われていたので、書きたい欲求を抱えて孤立している作家のタマゴや文学愛好者たちにとっては、『文藝首都』は恰好の交流の場になっていたのだった。

この後に合評会や二次会の様子も描かれています。
彼と同時期に在籍した有力な同人たちのエピソードの中に、今年逗子で亡くなられた林京子さんに関する記述もありました。

林京子は常におっとりとした物静かな雰囲気を漂わせていた。しかし、たおやかな外観とは対照的な、飾り気のない硬質な文体からは、気質の芯の強さ、精神の骨太さが窺えた。当時すでに林京子は、そうした推進力の強い文体で、自身の原爆体験を作品化しはじめていた。
そして「彼」は「文藝首都」で頭角を現し芥川賞や直木賞の候補にあげられたりしながらも、19歳で同人に加わった中上健次の本気度・才能・文学的スケールに圧倒されて迷走し始めます。「文藝首都」廃刊後に加わった同人誌の合評会で出会った森敦の深淵さにも圧倒され、純文学から娯楽小説に転換していったのでした。
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泪橋と鈴ヶ森刑場跡

2017-07-29 00:29:25 | 旅行
村松友視「泪橋」冒頭より引用します。
 刑場に曳かれてゆく科人が、家族や縁者と今生の訣れをする場所にちなんで、そこをながれる川は立会川と呼ばれた。立会川に架かった浜川橋には泪橋と別名がつけられ、鈴ヶ森という名だかい刑場のなごりを今にとどめている。
という訳で、久々に東京文学トリップ。新逗子駅から京急電車で1時間旅すると立会川駅に到着です。
これが立会川に架かる浜川橋。

橋のたもとに設置された江戸感が半端ない案内板。

 泪橋から旧道をすこしくだったところに大経寺という小さな寺がある。その大経寺の境内と地つづきとなって保存されている一角が、鈴ヶ森刑場趾である。
 今から三百六十余年前の慶長四年に処刑された丸橋忠弥を第一号として、白井権八、八百屋お七、天一坊、日本駄右衛門、白木屋お駒、村井長庵、海賊灘右衛門など、芝居や物語で有名な罪人たちが、ここで処刑されている。この刑場は明治三年に廃止されたが、十万人もの罪人の御仕置場として人々に恐れられていた。
 一般に鈴ヶ森刑場とよばれたここは、幕府の正式呼称では、小塚原の浅草獄門場に対し、品川獄門場といわれた。はじめは五反二畝五歩というから、約五千百六十平方メートルという広さをもっていたが、元禄十年の検地以来、一反二畝に縮小されたという。だが、現在は第一京浜国道と旧東海道のまじわるところに、大経寺の境内をふくめても猫のひたいほどの土地がのこっているだけである。

「泪橋」が収録されている「時代屋の女房」を手に訪れたのですが、ガイドブックとしても役立っちゃうレベルの記述ですね。
写真奥に見えているアーチ形の建物が大経寺です。

お上に追われて獄門首にされる科人たちへの哀れみみたいなものが、この辺の風となってずっとのこってる……
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知っ得!ずし検定作成中

2017-07-28 19:20:39 | 湘南
逗子全域を一つの大きな「自然の回廊」と見立て、散策やハイキングを楽しめる道としてつなぐ整備を進める「自然の回廊プロジェクト」。その一環として設置が進んでいる案内板のひとつが富士見橋のたもとに。

知っ得!ずし検定プロジェクトチームでは現在、自然の回廊案内板にリンクしたご当地検定を、まずは択一の初級問題から作成中です。例えばこんな内容。
東海道の脇街道として人馬の往来を支えた浦賀道(うらがみち)の一部だった旧田越橋の場所に現在架かっている橋の名前は?
①渚橋 ②富士見橋 ③新田越橋 
   答え② 
 
問題集が完成したあかつきには、解説も掲載する予定です。上の問題の解説はこんな感じ。
葉山に御用邸ができた明治27年(1894年)、田越橋と呼ばれていた木橋が何度めかの落橋でなくなっていた場所に、富士見橋が架けられました。一本上流側に既に田越橋が新設されていたので、別の名前になったのです。という訳で、選択肢③の「新田越橋」という橋はありません。
養神亭には徳富蘇峰、日夏耿之介、芥川龍之介、山村暮鳥、大岡昇平などの文人が宿泊しました。
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花火の俳句

2017-07-27 10:33:32 | 文学
昨日の葉山花火大会。観覧していたほぼ100%が地元民って感じでした。まったりしていいわ~

お題「花火」で行った先日の湘南句会から5句。
古里は花火の音も間遠うなり
失職は本意にあらず遠花火
姿より花火は音の座敷かな
逗子湾のすべてが花火となりにけり
あなたから目そらしじっと持つ花火

4句目以外は、しんみり感のある作品でした。最後の句は、打ち上げ花火ではなく手持ち花火を詠んだものです。
女性俳人の詠んだ中に手持ち花火の名句がいろいろありますよね。
手向くるに似たりひとりの手花火は  馬場移公子
手花火の小さく闇を崩しけり     蔵本聖子
ちれちれと鳴きつつ線香花火散る   三井葉子
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照らすの詩パート4

2017-07-26 08:15:44 | オリジナル
共通テーマ「照らす」でTが書いた詩を投稿します。

白駒池で

春蝉の声が響いている道を登って行った
原生林の中を
木洩れ陽がしま模様に照らし出し
真緑の苔は湿った太古の香りがした

ちいさな湖は
森の中に嵌め込まれた青いガラス
木々は湖面に映り
五月の陽は明度高く反射していた

五十年前
玲瓏な山の中で
赤い唇のあやつり人形が
糸を切って歩き出した日
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曇るの詩パート5

2017-07-25 00:00:50 | オリジナル
共通テーマ「曇る」でEが書いた詩を投稿します。

徒食

五十になってもスネをかじる徒食者
本人の思いこみでは
育て方をまちがったのであり
はたからみればたがのはずれた不出来もの
風雨の急には耐えられそうにない

情報獲得は学校でも可能だが
生き方は日々の暮しの中でしか身につかない
続いてきた旧家には生き方の伝統がある
男と女が出会っただけの核家族には
かなめになる核がない

家庭は欲望を満たすだけの場に堕し
子が育つ場であることを失念する
不平と不満のぶつかりあいを見て育つ子には
悲しむべし 人として見習うべき
手本はどこにもない

生きるとは 耐えてなにかをなしつづけること
うっぷんをはらすだけを覚え それでよしとする
悪いのはあなた 私ではない
はなはだしくは 生んだ責任をとれと迫る
徒食に平然としていられるわけだ

困惑と悲鳴に似た事件が報道される
当初は密集地に限られていたが
近年は辺地でもおこる
腐蝕が浸透しているのだ
腐蝕はこやしにもなる 待つしかない
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照らすの詩パート3

2017-07-24 00:00:24 | オリジナル
共通テーマ「照らす」でTが書いた詩を投稿します。

君へ

はじめは大きく泣いていたが
しばらくすると
 ここはどこ?
まだ見えないはずの目を大きく開けて
指を口に持っていき
じっと考えている様子
苦しい何時間かを耐えて
必死に出て来ようとした世界
君の全てで感じとれ
 君が来るまでには
 膨大な時間と
 数知れない人達がいたんだよ
日々変化する顔は
君迄たどりついた人達の表情なのだ

大きく伸びをして 君は
私達がいなくなった未来まで照らしている
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曇るの詩パート4

2017-07-23 00:08:47 | オリジナル
共通テーマ「曇る」でEが書いた詩を投稿します。

終末

後世のエリザベス一世の生母
アン・ブリンが処刑台に登る
城内は 陽がかげり
冷気が圧する
台上には 他に
オノを持つ男と
ムチを持つ男
ムチ?
不意にムチが鳴る
アンが振り向く
オノが落ちる

人生よ なぜ
お前はかのように済まないのか
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照らすの詩パート2

2017-07-22 00:00:47 | オリジナル
共通テーマ「照らす」でEが書いた詩を投稿します。

源郷

子どもたちがキャーキャーさわいでいる
隣りにいて
少しも気にならない
むしろページがはかどる
 生命の源郷
その余光をたっぷりと
身内に保っている

もう忘れかけているが
ほどなく登る
 古里への道程
子どもたちの声が
あかあかと照らし出す
それはまぎれもない
桃花源
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昨日のプレバト!!

2017-07-21 13:58:21 | 文学
昨日オンエアされたプレバト俳句のお題は「夏祭」。

凡人4位の松本明子さんの作品「初浴衣掬う金魚に袂ぬれ」の添削句を、夏井先生がささっと3例提示されたのが印象に残りました。
添削 金魚掬う水に袂をぬらしつつ 
  金魚掬う水面に触るる袂かな 
  金魚掬う水にぬれたる袂かな

「袂」を残し「初浴衣」を捨てることで浴衣と金魚の季重なりを解消し、省略した5音分で袂の濡れ具合を表現し分けたという訳です。
それぞれ想像できる光景が微妙に違いますね。

さて本日は16時から逗子市民交流センター1階で湘南句会を開催します。お題は花火。飛び入り・見学大歓迎です。
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