湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

終わったのだけれど

2024-04-28 05:37:44 | オリジナル

終わったのだけれど

 

こういうことがあったんだ

と 人は言いたがる

続く頻出語は

――けれど――

 

そんな話を

口から垂れ流して

他人に聞き流されて

死ぬまでの時間を潰すのはまっぴら

 

だから詩を投稿して

投稿された詩を

一語一語書き取って

合評会を開くようになった

書かれた言葉たちに

それぞれの人生のイメージが

星のようにちらばっていた

 

読んで感心してほしいだけとか

自分のことを一方的に喋りたいとか

忘年会目当てとかで参加した 

愛すべき人々

罪は問わないけれど――

 

とある合評会の死後に

毎月やってきたのだけれど――

と 十年分の嘆息を毎晩吐いて酸欠だ

私も死ぬのだと知った何十年も前は

ああ幸福だったと言って死にたい

などと おめでたく考えていた

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愛の詩パート4

2024-04-24 22:52:28 | オリジナル

共通テーマ「愛」でMが書いた詩を投稿します。

コロンの種

知らない間にその種が植え付けられていた

それがいつ蒔かれていたのか考えてみた

思い当たるのは十二年間一緒に過したあの犬だ

一人っ子の私を仕事で家に居ない両親に代わって

家の中でずっとそばにいてくれたのはコロンだった

庭で遊んでいれば心配そうに縁側からじっと私を見つめ

座っていれば常に膝の上に乗り

布団に入る時も一緒に入り

涙を流せばペロペロと舌で拭きとってくれていた

最期は苦しみに耐えながら学校から帰宅する私を待ち

安心したかのように私の膝の上で息絶えた

あのコロンの優しい種が私の中に蒔かれていたのだ

私が大人になり家庭を持ち子に恵まれた時

その種は芽を出し愛という花を咲かせた

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愛の詩パート3

2024-04-23 10:29:20 | オリジナル

共通テーマ「愛」でAが書いた詩を投稿します。

自己愛

 

あくびは伝染るというけれど

私があくびをしても気付かない

他者をつかまえれば自分の話を聴かせたい

更にこじれれば自分に従わせたい

 

相手を慮らねば逮捕

という世界だったら

そもそも戦争は起こらない

愛とは対象を気にかけること

という解釈はその人の辞書にない

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愛の詩パート2

2024-04-20 06:19:55 | オリジナル

共通テーマ「愛」でAが書いた詩を投稿します。

溢れる

 

泣いているところで目が覚めた

夜の涙がかさを増して夢から溢れ出そうだ

 

欲しいものがあって生まれてくるわけではない

なのに生まれたら欲しいものまみれ

玩具だの菓子だのジュースだの 

 いちばん欲しいのは愛なのに

服だの靴だのバッグだの

 いちばん欲しいのは愛なのに

 

欲に囚われて

愛を追い求めて

人間は実に滑稽だ

 

生命以外はなにも欲せず

誰の愛も欲しがらず

つるんと存在しているだけでいいのなら

夢から溢れた涙で昼間も暮らすことを

心配せずに済むのに

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雑草の詩パート2

2024-04-19 07:09:30 | オリジナル
共通テーマ「雑草」でZが書いた詩を投稿します。ホタルカズラの写真もZの撮影です。
雑草
 
雑草であったから モデルチェンジせざるを得なかった
俺の体と心
雑草であることで
指の関節は太くなり 腰は曲がった
それにとどまらず俺の心まで変態した
笑って皮肉を言えるようになり 
顔色を変えずに嘘をつくようになった
雑草であることは
人の縄張りを奪うことでしか 生き延びられないことなのだ
 
現在の俺は
温室育ちのお前等を羨むことなど一毫もない
俺は変態し空を飛び回っているが
お前等は相変わらず変態せずに
与えられた餌を食らっているからだ
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愛の詩パート1

2024-04-18 07:02:46 | オリジナル
共通テーマ「愛」でZが書いた詩を投稿します。姫リンゴの写真もZの撮影です。
 
お前に聞いて欲しいことが山ほどある
お前と二人だけで一日中話がしたい
お前の気持ちを聞きたいのではなく
俺の思いの丈をお前に聞いて欲しいのだ
俺が話ができるうちに 
 
お前のためならと心に決めている連中は
程なく鬼籍に入ってしまう
そうなる前にお願いだから
どうか 俺の話を聞いてくれ 
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自転の詩パート2

2024-04-17 20:31:18 | オリジナル

共通テーマ「自転」でZが書いた詩を投稿します。フデリンドウの写真もZの撮影です。

ターンオーバー 

 

山道整備ボランティア終わりの間際

「よくできましたね」と
腕組みをしたボランティアの年寄りに言われた
かつて世間体を憚っていた頃の俺なら
「いや たいしたことありませんよ」と返したろうが
その時 老いた我が頭は我慢より素直を選択した
そう 俺はターンオーバーしたのだ
 
マウント行為などされてたまるか!
俺は「よくできました」など聞きたくないのだ!
俺は その年寄りのボランティアに
「そんな所に突っ立っていないで 少しは手伝ってくれよ」と
震える声で怒鳴ってやった
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雑草の詩パート1

2024-04-15 03:30:39 | オリジナル

共通テーマ「雑草」でAが書いた詩を投稿します。

草かんむりの日々

 

外出を極力控えて胸苦しくなると

近所のハイキングコースを歩いた

時折すれ違う人とは道の端と端で

マスクの下から挨拶

しばしば立ち止まって

雑草図鑑、山菜図鑑を調べた

 

あの疫病のおかげで

有毒植物を識別できるようになり

いくつかの山菜の食べ方を知り

似たような黄色い小花をつける雑草を

見分けられるようになった

庭の草を抜く前に

その名を呼んでやるようになった

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自転の詩パート1

2024-04-08 18:48:37 | オリジナル

共通テーマ「自転」でAが書いた詩を投稿します。

サドル

 

別の自転車屋が指摘しなかった

ギアの不具合を一目で見抜いた彼から

必要な作業と代金を即座に提示された

 

そこまではいいとして 

その後の話が長い

次の為政者に名乗りを上げた人がいるけど

俺は別の人間を推したいよ

まちを引っ張っていくのは

地域と住民に愛ある人でないと

 

そこまではいいとして

翌日さらに修理がいると電話してきた

チェーンもシフトワイヤーも

あれもこれも替えねばならず

新車を買った方がいいと言う

愛車のサドルの上から見てきたこのまちが

別のまちになってしまうかもしれない

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反復の詩パート2

2024-03-27 18:10:36 | オリジナル

共通テーマ「反復」でEが書いた詩を投稿します。

くりかえす

 

古書店で目に止まった

中学生用の理科参考書

めくっていると

物体固有の本質はなんと

質量・重さだけだとか

あとのことはすべて現象

 

人も物体にすぎない とすれば

あなたも私も単なる質量

人は古来なぜか

生まれ生きては死ぬことを

あきずにくりえしてきた

この私もどうやら

粒子の一粒として

どこやらに静まることになる

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