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湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

門の詩パート4

2025-07-06 17:30:13 | オリジナル

共通テーマ「門」でAが書いた詩を投稿します。

裏切られて

       

単純に信じていた

あの子の柔らかい肌に

ついているのは

傷跡ではない

いつでも開く

いくつかの傷口

 

錆びついた門扉が

きしみながら動くように

どういうきっかけでか開いて

旧い記憶から

新鮮な涙が迸り出る

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門の詩パート3

2025-07-03 18:40:05 | オリジナル

共通テーマ「門」でIが書いた詩を投稿します。

校門

出て来るわ 出て来るわ 下校時間小学校の校門から

先生とお喋り 友達と手をつないで

でもね きっと貴方も見たことがある筈だ

昔の僕のように 一人で重いランドセルを背負って

トボトボ歩いている子供に言ってあげたい

本当はね 下校して学校の門を出てからが

これから生きて行くのに大切なことを教えてくれる教室なのだと

どろんこ遊びのほうが学校の勉強よりはるかに大事なのだと

そんな当たり前のことを誰か

一人トボトボ歩いている下校する子供に大声で言ってはくれまいか

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門の詩パート2

2025-06-30 04:48:35 | オリジナル

共通テーマ「門」でYが書いた詩を投稿します。

寡黙

 

からからからから

祖父の帰宅の音

欅の数寄屋門を開ける音

からからからから

 

禁じられたわけではないのに

家の者 祖母もわたしも

出入りはお勝手の木戸から

 

祖父の深いグレーの瞳

上背のある広い肩幅

盆栽と囲碁

肘掛け付きの座椅子

 

寡黙は晩酌に剣菱を一合

無邪気は尋ねてみた

 

おじいちゃんのこわいものは何?

 

それは 人間だよ

 

祖父の背中の古い傷

赤紫のただれ

引きつった皮膚の盛り上がり

その理由を誰にも語らず

鬼籍に入ったのは平成六年

九十六歳の大往生

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門の詩パート1

2025-06-28 22:55:32 | オリジナル

共通テーマ「門」でFが書いた詩を投稿します。

夢幻

 

交差点でぼんやり立ち尽くす婦人(ひと)

歩行者信号は青なのに

――渡らないんですか?

気づいた婦人は

濃い緑を湛えた明眸を

斜めにそよがせると

歩行者信号の奥に拡がる

赤い鳥居の立つ深い森に吸いこまれた

僕も一緒に 声をかけたばっかりに

 

見知らぬ森の深い渓谷を

岩をよじ瀬を渡り奥へ奥へと遡る

緑の密度はいよいよ増して

息づまる濃厚な薫り

放っているのは萌芽したての

薄緑の密生だ

僕は構わずその香りを深呼吸する

飛び散るしぶき

清流は岩を噛んで

僕の足元をすくい

よどみの中に立ちつくす

光が中天から差し込み僕を固定する

 

歩行者信号は赤に変わった

途端に喧騒が鼓膜を敲き

濃厚な香りも飛び散る水も

 

コンクリートの乾いた白い熱さに変わった

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細い太いの詩パート3

2025-06-12 09:45:18 | オリジナル

共通テーマ「細い太い」でYが書いた詩を投稿します。

価値ある炭素

   ーー鉱石を切る削る

     研磨する

     炭素なら役立つべきだ

多すぎる持ち物を処分しよう

押入れは平成の発掘

マトリョーシカとなったダンボールから

手渡された日の白いリボンと

ぱかっと開く青い小さな箱

小粒の永遠不滅不変普遍が

暗い押入れで

つんとお高く炭素の「価値」を放つ

 

もっさりと太くなったこの薬指

関節と肉は

eternal foreverより

bread and butterだ

 

あの頃のおふたりさん

薬指に何を乗っけたかった?

 

永遠不滅不変普遍の炭素よ

ずるいね あんたは

 

わたしにはさよならがあるんだよ

生まれて来たから仕方なく朽ちてゆくんだよ

わたしの指が枯れたら

最後にもう一回迎えるよ

きっと今より感傷的なプランで

あんたの弔い方を思いつくよ

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茶の詩パート3

2025-06-08 23:01:31 | オリジナル

共通テーマ「茶」でFが書いた詩を投稿します。

混乱

 

今日も暮れた

西空に茜を残して

また一日

この世が短くなった

 

ため息をついて 茶を呑んだ

細かい粟粒ほどの乾煎りされた

芳ばしい韃靼そば茶

ひと口呑んで指を折った

残された歳月の長さを問うた

しかしそれは指先を掠めて

だまって過ぎてゆく

今日の気配を消して

うしろ姿もみせずに

未練のかけらの散る音もなく

 消える

 

気づけば わたしは

過去にさえ置き忘れられた

草にうもれ苔むした石仏のようだ

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細い太いの詩パート2

2025-06-06 06:57:05 | オリジナル

共通テーマ「細い太い」でFが書いた詩を投稿します。

 

北に向かって

二百粁先のSAを目指す

スピードだけが唯一の機能と

かたくなな顔をした道が

はじめは四車線しばらくして三車線、二車線と

いつの間にか細まり

それにつれて走る車の数も減ってくる

大きな川、鋼鉄の鎧のような巨大な長い橋

広々とした人影のない田園

堤には桜の大木の並木

近づいてくる山並の斜面は

若葉の緑の濃淡に

淡いピンクや白のアクセント

 

ハンドルを握るのは僕

となりは夢のなか

ラジオからは今風のやかましい音楽

長いトンネルを抜けて

また山 そしてトンネル

目に優しい山また山の風景

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茶の詩パート2

2025-06-05 18:53:10 | オリジナル

今日オンエアされたテレビ東京「昼めし旅」に、小坪のまさかり丸が! まかない美味しそうでした。

では、共通テーマ「茶」でAが書いた詩を投稿します。

 

失われた井戸端

 

「そろそろ帰」

言いかけると

泉さんがややこしい話題を唐突に出してくる

浮かせた腰をいやいや沈め

再び彼女と向き合う

 

十年前に初めて会って すぐになぜか

泉さんと二人でお茶をするようになった

席につくと脈略なく尽きることなく近況を語る

店の人にも臆面なく話を振る

面白い人だと思った

突っ込んだ質問をしてくるので

今まで人に言ってこなかったことをつい喋らされる

憐れむべきところを「へえー」と楽しそうに返し

自分の場合をすぐに話し出す

 

私は喋らなければよかった

大抵の人は蔑むような話が

彼女には妬ましく思えてきたらしい

優位に立とうとし始めた

話題や言葉づかいが

私に対してきつくなってきた

しかも最近耳が遠くなって

必ず聞き返されるのが面倒くさい

 

私が話相手の座を譲った

新しい友人たちもいずれ知る

泉さんはこちらを熱心に見ているようで

自分だけを肯定したいのだと

そのせいで家族から疎まれていることも

 

水汲みや洗い物をしながら

とりとめのない話をし

忙しく自分の持ち場に戻る

井戸端が失われて久しい

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細い太いの詩パート1

2025-06-01 17:46:09 | オリジナル

共通テーマ「細い太い」でTが書いた詩を投稿します。

雨の向こう側

 

窓の外は 夕暮れの雨

淋しい涙をそっと集めてきたような

静かな水音に

遠い日の雨を 思い出す

 

ランプが灯る小さな喫茶店で

あの日の雨は伏目がちに

わたしたちの別れの

一部始終を見ていた

 

えっ・・と聞き返すほど

思いもかけなかった 言葉の痛みを

繰り返し繰り返し 洗い流そうとしてくれた 細い雨

つらそうに席を立ち

足早に飛び出して行った 靴音を

ただひたすらに かき消そうとしてくれた 細すぎる雨

 

雨の向こう側が

あの時のわたしには

どうしても 見えなかった

 

あれからの年月 

幾度も 雨の夕暮れはあったけれど

あの日のように

優しく細い雨を 知らない

 

けれど 今ならわたしにも見える

雨の向こうに続く道

 

そして この夕暮れを

どこか遠く 傘もささずに歩くあの人の

トレンチコートの肩の上に落ちる

温かい雨に

今のわたしなら

なれたかもしれない

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茶の詩パート1

2025-05-30 13:22:18 | オリジナル

共通テーマ「茶」でYが書いた詩を投稿します。

水屋

 

稽古を終えて帰宅すると

師からの電話

「すぐ戻って来るように」

忘れ物をしたか

 

「水屋を見て来なさい」

師の静かな声

 

わたしが片付けた茶道具の横

水盤の濁った水に浸かったままの

茶巾が一枚

 

小さく細く光る切っ先を突きつけられたよう

 

若かったわたしはまるで三面鏡の中

永遠に映り込むこざかしく薄っぺらな浅ましく胡散臭い歪なさもしい無価値なわたしに囲まれて

動けなかった

 

気づかぬということ

知らぬということ

 

道具と茶と水

今もわたしはあの水屋で

ただ支度をする

心を込める

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