湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

親の詩パート4

2023-11-30 17:33:01 | オリジナル

今月はじめに投稿したAの詩が手違いで消えてしまったので、再度アップします。

 まるわ食堂のアジフライ定食

煙の向こう側

 

家族から逃げ居間から逃げて

活字かピアノか酒に向かっている父だが

食卓には一緒に就かざるを得ない

私がサラダを口に運ぶのを

向かい側でぼんやり見ているな 

――と思ったら 

鏡のように口を開けた

ハンバーグを口に運ぶと

また鏡のように口を開けた

味噌汁を飲むと

鏡のように同時に飲んだ

そして濃い水割りを作りに立ち

母にいい加減にしろと怒られた

 

身籠ると分厚い本を贈ってくれた

「ひとりひとりのお産と育児の本」

最高の選書と

口を開ける姿

あとはなにも残っていない

 

久しぶりに会ったいとこが

焼肉屋の七輪の向かい側で

私が亡き父の鏡であるかのように

口を開けてこっちを見ている

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親の詩パート3

2023-11-29 09:23:52 | オリジナル

共通テーマ「親」でMが書いた詩を投稿します。

親心

 
「お母さん 今度のところ長く続きそう?」
「うん大丈夫 しばらくやっていけそう」
「よかった 安心した」
 
いつの間に 心配する側から
心配される側になったのだろう
 
やっと落ち着き先が決まった私に
優しく言葉をかけてくれた娘はもう二十歳
まだまだ危なっかしい娘だけれど
あちらから見た私も 危なっかしく見えていたのだろう
 
そんな娘の眼差しから 小さな親心の芽生えを感じた
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破くの詩パート5

2023-11-28 09:46:42 | オリジナル

共通テーマ「破く」でMが書いた詩を投稿します。

シンプルな現実

 
何回誓いをたて
何回破ったか
自分との約束は いつだって果たせぬまま
 
こうなりたい
ああなりたい
そんな戯言に時間を費やすのは無駄
 
何もしなければ こうなるという現実
答えは至ってシンプルだ
 
この現実を直視できないのなら
後はやるだけ
 
いつだって その先に答えは待っている
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狭いの詩パート4

2023-11-27 12:55:51 | オリジナル

共通テーマ「狭い」でTが書いた詩を投稿します。

彼女


駅の下りのエスカレーターに
ショッキングピンクのコートを着た女性
目立つ
近づいて来て彼女とわかる
偶然の出会いを大切にする彼女と
カフェバーに立ち寄る
「背が低いから上に派手な色を
持ってくると視線が上に行くでしょ」
ただ単に好きなのでは
あの時彼女は七十五才だった
「マスター、いい男ね」
酔わなくてもシャラッと言う
どこへ行っても遠慮がなかった
十八年間 年に三回程しか会わなかった
どのシーンも鮮やかに私の中に張り付いている
詩に対する狭い見方を
ぐんと広げてくれた人

今年九十才で亡くなった
十年前何気なく
「ここにお墓を作ったのよ」
教えてくれた墓地にお墓参りに行った
たくさんの中で彼女の墓は光って見えた

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破くの詩パート4

2023-11-26 06:27:45 | オリジナル
共通テーマ「破く」でZが書いた詩を投稿します。大船フラワーセンター菊花展の写真もZの撮影です。
忘れた手紙 
 
何時の日か 捨ててしまおうと思った
貴方からの手紙
なんとなく 破り捨てることも出来ずに
机の引き出しの奧の方にしまい込んでしまった
しまい込んだ事すら 忘れていたが
断捨離をしようと 引き出しを開けたら出てきた
再び 読もうとは思ったが
あの手紙で心が かき乱された苦い思いを
味わうことが 嫌で
破らず 貴方の思い出と一緒に ゴミ袋にいれた
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狭いの詩パート3

2023-11-25 06:26:02 | オリジナル

共通テーマ「狭い」でZが書いた詩を投稿します。大船フラワーセンター菊花展の写真もZの撮影です。

長く曲がりくねった林道

何で こんな薄暗い林道を走っているのか考えず
ひたすら 前行く車が作った轍から外れぬよう
ハンドルを 程よい力でコントロールし
時折現れる 崖崩れの石塊をよけながら
ボロ車を 走らせてきた
 
ドアの不具合 塗装の剥離など修理しようとは考えず
ガードレールもない 狭く長く曲がりくねった人生を
操ってきた
ようやく 沢の出合にある高級車ばかりの駐車場に着いた
 
嗚呼 俺も彼らと同じ 長く曲がりくねった林道を
歩かず ずる賢く生きてきたのだ
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親の詩パート2

2023-11-24 18:26:52 | オリジナル
共通テーマ「親」でZが書いた詩を投稿します。大船フラワーセンター菊花展の写真もZの撮影です。
何をあくせくサプリメント
 
父が死んだ 二十年前
母が死んだ 十五年前
叔父も 叔母も 死んだ 十年前
従兄弟も 従兄弟の連れ合いも 逝ってしまった
今度は いよいよ僕ら兄妹の順番
 
充分納得しているつもりでいたが
ドラックストアで カイロを買うついでに
手に取るものは 養命酒にサプリメント
我が心の 意地汚さにウンザリする
何をあくせくしても 
順番が巡ってくることは 必定なのだが
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破くの詩パート3

2023-11-23 06:25:06 | オリジナル

共通テーマ「破く」でTが書いた詩を投稿します。

抜け出した時間


忘れていた日めくりのカレンダー
気付いて三日分を破った

「名島」の鳥居の真ん中に
夕陽が入り光の道がまっすぐに伸びていた日
突然 夕暮れの外側にいた
メタモルフォーゼの時間だ
いつもの日常から抜け出して
裏山に登った
川に入って魚をすくった
夏の海辺で売っていた
海ほうずきを鳴らして歩いた
七十年忘れていた遊びをすると
新しい世界が広がった

三日間の時はあとからついてきた

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狭いの詩パート2

2023-11-22 07:18:21 | オリジナル

共通テーマ「狭い」でEが書いた詩を投稿します。

狭途

 

北穂高から奥穂に通じる

山嶺はかみそりのように狭い

先行者がまず渡り「さあ来い」と言う

ザイルに結ばれている

とは言え 胴震いする

滑落すれば

先行者をまきこんでしまう

 

先行者にはとてもなれない

後続者を信頼することも

ともに滑落することも

 

その後 

広いけれど低地のみ歩いて来た

道理で

年金を得て過ごせてはいる

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自由題「十一月」

2023-11-21 06:09:38 | オリジナル

Iが自由題で書いた詩を投稿します。

十一月

 

十一月とは

秋と冬のさかい目

 

木の葉が木からとびおりるころになると

いつの間にか十一月

 

悲しい季節は

思いもかけぬうれしいことが起こる

 

「涙のとなりに……」と

だれかさんが言った

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