575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

若狭の海幸山幸物語       遅足

2014年02月23日 | Weblog
名古屋の風媒社から出版された本のタイトルです。
誰もが知っている海幸山幸のお話。

このお話の絵巻、彦火々出見尊絵巻。(彦火々出見尊とは、山幸のこと。)
作者のふるさと、若狭の明通寺に残されています。

後白河法皇の命によって描かれた日本三大絵巻のひとつ。
法皇の死後、誰の手に渡ったか?不明でしたが、
江戸時代には、若狭の明通寺にあったという記録が残っています。
それが小浜藩主の手元に。さらに将軍、家光に献上されて江戸に。
ところが絵巻は江戸城とともに燃えてしまいました。

現在、明通寺に残されたものは江戸時代に模写されたものです。

故郷にかえった作者、この絵巻に強く心惹かれました。
そこから、絵巻の元となってる海幸山幸神話が、どのように伝わってきたのか?
と、いう謎を解いてみたいと思い立ちました。

若狭の国の大社、若狭彦、姫神社に伝わる「秘密」縁起に注目。
(若狭彦神社の祭神は彦火々出見尊。姫神社はトヨタマヒメのミコト。)
絵巻の詞書と、秘密縁起が、よく似ていることに気付きます。

絵巻は、この秘密縁起をもとに描かれたのでは?
また、なぜ「秘密」縁起なのか?
さらに調査を進めると、小さな集落にも若狭彦、姫神社が・・・。
謎が謎を呼び、作者の推理が続きます。

作者の竹中敬一氏は、私の大先輩。数多くのテレビ・ドキュメンタリーを手掛けた方です。
歴史には素人とおっしゃっていますが、とても読みやすい本です。
ドキュメンタリー作家が挑んだ故郷の謎、結末は書かないことにします。

                  

国の宝ともいえる美術品は、時の権力者の手から手へ。
海幸山幸神話も、日本書紀など天皇の神話のなかに編入されていきました。
しかし口承の神話は、やがておとぎ話となって庶民のもとに。
そんな歴史の不思議なダイナミズムを感じました。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする