おやじのつぶやき

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読書「治安維持法小史」(奥平康弘)岩波現代文庫

2013-10-30 20:36:48 | 読書無限
取材の自由「フリー記者も」 秘密保護法案で岡田副大臣(朝日新聞) - goo ニュース

 1925年制定の「治安維持法」がいかに稀代の悪法であったか。1945年の廃止までの20年間、この法律がどう機能したかを克明に描き出した書。
 日本共産党結党をはじめとする社会主義運動の展開に危機感をもった国家体制が、いかに運動の撲滅、弾圧を巧妙に仕組んで内実化させていったか。法の拡大解釈や恣意的な運用、度重なる「改正」など、戦前の治安立法の実態。
 「普選法」と抱き合わせで成立した「治安維持法」。その目的とその後の経過。暗黒の歴史(ファッショ国家としての歴史)を詳細に追究しています。
 しかし、この書の内容にふれ、「多くの官庁資料が現在でもなお、かたく『極秘』の聖域におさめられている事情をぬきにしても・・・」(執筆時点)との「はしがき」の一節が目にとまりました。悪法たる「治安維持法」そのものというより、その運用過程における言論統制の実態にふれ、あらためて今国会で審議され、自公の圧倒的多数によって通そうとする「秘密保護法」の危うい側面をまじまじと考えさせられました。
 それは、「治安維持法」体制というより、そういう方向に向かっていった(向かっていかざるをえなかった)政府による権力維持体制のもつ、反民主主義的な傾向です。
 一つには、国民統治のあり方、その一端としての言論統制。「治安維持法」の具体的、本格的な運用・執行の際のマスコミへの報道禁止、さらに解禁後の新聞報道の実態にふれた文章に接した時、今回提案の「秘密保護法」のもつ、きわめて危険性を感じました。
 当時、国民の多くは、新聞報道によって世の中の動きをつかんでいました。そういう状況下での「治安維持法」の発動。 
 その一つが、 1928年3・15、総選挙終了後におこなわれた「治安維持法」にもとづく、日本共産党と関係の深い諸団体の事務所、幹部宅などの家宅捜査。検挙者数約1,600名というものものしい「大捕物」でした。

 3・15(事件)は、この種の事件ではめずらしく比較的早く、4月10日には記事解禁となり、・・・新聞の調子は例のとおりデマゴギーで埋められたものであった。・・・各紙とも《共産党の大陰謀事件が暴露された》式の仰々しい解説をほどこし、警察発表を鵜呑みにしながら、・・・田中首相をはじめ政府高官は、声明書または談話を発表したが、新聞はこれら一方的な見解を克明に国民へ普及伝達した。・・・(p100)


 「秘密保護」事項に該当させたとたん、それに関する取材は制限され、記事を掲載することは認められない。違反した場合には、懲罰の対象になってしまう。そうなりはしないか、さらには、政府にとって不都合な内容掲載は認められず、政府の発表のみが許される報道にはなりはしないか、という危惧です。今朝の朝日新聞の社説ではありませんが、掲載差し止めや黒塗り記事が出てしまいそうな「気配」に・・・。
 「治安維持法」違反事件は、弁護を引き受けた弁護士までが懲戒の対象にまでなった、という時代。新聞人といえども、その処罰の対象になりました。
 そのときよりも、いっそう、情報メディアが多彩な今日、「秘密保護」法の名の下に、多くの情報媒体(個人的発信を含め)が当局の監視下におかれはしないか?(「治安維持法」下では、押収した検挙者の中学生頃の日記の記述が「不敬」罪に該当する、として他よりも処罰を重くした、という事例もあったそうです。)
 特に一匹狼的なフリージャーナリストは狙われやすいのではないか、と。反対に、記者クラブはお上御用達の機関に堕するのではないか、と。
 
 「秘密保護法」案には反対!

付:「出版法」(明治26・4・14)
 第18条 外交軍事其ノ他官庁ノ機密ニ関シ公ニセサル官ノ文書及官庁ノ議事ハ当該官庁ノ許可ヲ得ルニ非サレハ之ヲ出版スルコトヲ得ス
法律ニ依リ傍聴ヲ禁シタル公会ノ議事ハ之ヲ出版スルコトヲ得ス

 :「新聞紙法」(明治42・5・6)
 第19条 新聞紙は公判ニ付スル以前ニ於テ予審ノ内容其ノ他検事ノ差止メタル捜査又ハ予審中ノ被告事件ニ関スル事項又ハ公開ヲ停メタル訴訟ノ弁論ヲ掲載スルコトヲ得ス
 第20条 新聞紙ハ官署、公署又ハ法令ヲ以テ組織シタル議会ニ於テ公ニセサル文書又ハ公開セサル会議ノ議事ヲ許可ヲ受ケスシテ掲載スルコトヲ得ス請願書又ハ訴願書ニシテ公ニセラレサルモノ亦同シ



  
 

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