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おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書90「ぼくの脳を返して」(ハワード・ダリー)WAVE出版

2010-03-12 22:20:08 | つぶやき
 かつて「カッコーの巣の上で」という映画を観たことがあった。「ロボトミー」手術をテーマに、精神病院を舞台にした映画で、とても見応えのある内容だった。
 統合失調症(以前は「精神分裂病」と名付けられていた)と鬱(躁鬱)病に効果があるということで、脳の前頭葉をアイスピック(のようなものではなくそのもの!)で傷つけるという手術。それによって凶暴性がなくなるというふれこみで、アメリカでは4万件ほど行われ、日本でも行われた。しかし、術後、廃人同様の生活、人格破壊を引き起こし、死亡例なども続出、一方で薬物療法等の確立によって、今は全く行われていない、悪魔の医療行為。
 この本は、1960年、12歳の時にこの手術を受けさせられ、その後、40年間、精神病院、拘置所、更正施設を出たり入ったりした人間のドキュメンタリー。本人が語った、告発の書である。ほとんどが廃人になってしまった被手術者のうち、まれで貴重な証言者である。
 内容は、幼児期の回想から手術、その後の悲惨な生活、その半生の記録。厳しい現実の話。人生の大半を終え、「暗い」過去を振りかえる「旅」の物語でもある。     一方で、医学の進歩の歴史の中で、病気治療への追求・闘い、ふとそこに生じる功名心や野心という医師と、それに翻弄される患者との心の物語でもある。
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