転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



上質の教養・娯楽に重点 NHKBS、2チャンネルに統合・再編(朝日新聞)
『NHKの衛星放送(BS)のチャンネル数が4月に3から2へと減る。7月の地上デジタル放送完全移行を控えた再編で、各チャンネルのコンセプトも見直した。地上波からBSに移る番組や姿を消す番組もあり、放送のラインアップが大きく変わりそうだ。』『現在NHKのBSには、BS1、BS2、BSハイビジョンがある。これを統合・再編して、4月1日からはBS1とBSプレミアムの2チャンネル体制にする。』

記事によると、この再編成により大きな変化があるのはBSプレミアムだそうだ。
『「本物志向の教養・娯楽」チャンネル』を謳って、扱う主な分野は
「紀行」「自然」「美術」「歴史」「宇宙」「音楽」「シアター」の七つ、
視聴者のターゲットは40~50代だということだ。

……と、ここだけ読めば、まさに中年である私にとっては、
これからのNHKは、うんと魅力的なものになるのか、
と早合点しそうになったが、とんでもなかった。
最後の段落を読んで、私は心底、仰天してしまった。

『一方で、姿を消す番組もある。金曜夜の「芸術劇場」(教育テレビ)と金曜深夜の「ミッドナイトステージ館」(BS2)は3月で終了し、演劇を扱う番組がなくなる。BS2の「プレミアムシアター」はBSプレミアムに残るが、日本で上演される演劇は基本的に扱わないという。演劇番組の関係者の一人は「地方の演劇ファンから、惜しむ声が届いている。なくなるのは残念だ」と話している』

NHKと日本の演劇界の間に、何か悶着でもあったんですか(爆)。
なんという仕打ち。
『上質の教養・娯楽に重点』を置いたら、その結果、
「芸術劇場」と「ミッドナイトステージ館」が終了する、
ってどういうことだよ!?

喧しいコマーシャルが入らず、最初から最後まで通して鑑賞できることと、
大衆が見向きもしないマニアックな企画でも教育テレビならやってくれる、
ということの二点が、昔から私にとってのNHKの魅力で、
中でも「芸術劇場」は、地上波しかなかった頃から、
各種舞台、クラシック音楽、古典芸能を放映してくれた貴重な番組だった。
実のところ、私が今、手元に残してある録画の大半は、この番組からのものだ。
忘れがたい演奏会、一生の宝物にも等しいほどの舞台記録を、
私はこの番組によって手に入れることができた。
私にとっては、NHKの存在意義そのものと言っても過言ではない番組だったのだ。

まあ多分、私のような視聴者など黙殺しても問題ないほどの人数に過ぎず、
これまで通り放映していたって、ろくに観る人間がいない、
という判断があって、NHK側は番組を打ち切る決定をしたのだろう。
大人気の看板番組をわざわざ終了させるはずはないだろうから。

しかし、もしそうなら、なんのためにNHKは
受信料を徴収して複数チャンネルもある公共放送をやっているのか。
見る人がどのくらい多いか少ないかだけで、
どのような番組もすべて終了か存続かを決定するのだとしたら、
視聴率とスポンサーの意向とに振り回される民放と、
全く変わるところがないではないか。

ことわっておくが、私には意見を述べる資格がある。
調べて貰えばわかるが、私はこれまで、親の家から独立して以来、
ただの一度も、NHK受信料の支払いを怠ったことがない。
尾行させれば陰の如し、みたいな薄気味悪い集金人に閉口させられながらも、
私は常に変わることなく受信料を納め、長らく真摯にNHKを支えてきた人間だ。

『「地上波がメジャーで、BSがマイナーだというイメージをなくしたい」』
などと言っているようだが、本当にこのまま演劇関連の放映がなくなるのだったら、
私にとっては、もう地上波もBSも、実質的に超マイナーな存在になるだろう。
いよいよ見る番組のなくなったNHKなどより、CSの専門チャンネルと契約して、
観たいもの三昧で過ごすほうが、よほど確実だからだ。

思い返せば、NHKがイーヴォ・ポゴレリチを取材した番組が、1983年と2005年とにあった。
特に83年のは、ポゴレリチのリサイタルを最初から最後までライブ収録したという意味で、
世界じゅう探してもほかに何本もないだろうという種類の、あまりに貴重な映像だった。
ポゴレリチのような演奏家が、民放で取り上げられるわけがないし、
CSクラシカ・ジャパンも現在までのところ市販映像しか流していないから、
独自に取材してくれたという点で、私はNHKに感謝せねばならないと思っている。
調べてみたら、83年のも05年のも、両方ともやはり「芸術劇場」だった。
どう考えても、私にとってはNHK=芸術劇場、というくらいの重さがあったよなあ。

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