時々、転勤族の妻たちが集う掲示板を覗きに行くことがある。
「内示があった!転校先を探さなくては!」
「行き先はプロパンだって!ガス代、大変!」
「半年前に来たのに、もう異動だよ。荷解き終わってない」
「幼稚園の制服やら入園料やら、いちから出直しだ!」
などなど、『わかるわ~、奥さん!』な、
いろいろなカキコミがあって興味深い。
私は今まで、東京・福岡・松江・神戸・今治・広島に住んだことがあるが、
幸いにして、『あそこだけは二度と行きたくない!』と思うような、
ひどい土地に住むはめになったことはない。とても運が良かった。
それと私はだいたい、知らないところへ行くのが好きなので、
これまでの、数年ごとの転勤生活は、基本的に性に合っていたと思う。
友達も誰も知っている人がいない、という理由で、
転勤を心細がる人も世の中には居るようだが、
私にしてみれば、旧悪の数々を知る人のいない見知らぬ土地で、
全くの別人・完全な善人として再スタートするのは最高だった。
そういう意味では、今までで一番盛り上がらなかったのは、
前回の転勤で今治から広島に来たときだ。なんの新鮮味もありゃしない。
知ってる土地に行くほどつまらん転勤は、ないぞ(--#)。
街を歩けば高校の恩師がいたりして、逃げ隠れするのが大変だし(--#)。
転勤のもうひとつの楽しみは、なんと言っても新しい住居だ。
今までのすべてをリセットし、ゴミもことごとく処分し、
身軽くなって新天地におもむく爽やかさと言ったら、ない。
もっとも、新しいというのは勿論、新築という意味ではなく、
自分が今まで一度も住んだことがない、という点で新しいだけだ。
水圧が低いので風呂に水を張るのに二時間かかるとか、
排水が悪すぎて洗濯が全自動では出来ないとか、
建物全体がピサの斜塔状態でフライパンに油が引けないとか、
官舎ごとに、必ずどうしようもない欠点があって笑えたものだ。
だが、この、官舎がボロという点に関してさえも、その転妻掲示板で、
「この社宅に来て以来、洗面所の鏡の前に立つと、後ろに女の人が映る」
「一度、トイレで首つり死体を見たことがある」
などというカキコミを見るに及んで、
私はこんな方々に較べたらまだまだ百倍シアワセだったと知った。
人間じゃないものが断りもなく同居していたというのはよくあったが、
極太毛糸なら上から下に落ちてくるのをただただ見ていればいいし、
ゴキ男なら右から来たものを左に流すだけでいいから、簡単だったのだ。
などということをつらつら考える私は、なんと今年、広島五年目だ。
主人も私も、広島には親が長年、住んでいるから、
将来的に、我々もここに定住するということは以前から決まっており、
ローンを組む年齢のことも考えて、数年前、建設中のマンションを買った。
途中で急に転勤になったら、人に貸せばいいやと思っていたが、
そのマンションもとうとう完成し、昨年四月に入居した。
娘は、小学校を終えてしまい、近所の中高一貫校に入学した。
ただの偶然なのだが、五年間も異動無しで過ごしてしまったのだ。
広島出身者で、広島弁ばりばりの一家で、親も市内にいて、
となると、近所の人は、誰も我々が転勤族だとは思わない。
私自身、去年あたりから、自分が転勤族であることを
しばしば忘れるようになっていたくらいだった(爆)。
来年は、どうなるのか、というのが、今はとても心配だ。
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