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いよいよ明日!井岡一翔vs八重樫東

2012-06-19 | ボクシング

ボクシングです。
いよいよ明日となりました!日本で初めて実現するWBA王者とWBC王者の王座統一戦。WBC世界ミニマム級チャンピオン井岡一翔(かずと)vs WBA世界ミニマム級チャンピオン八重樫東(あきら)。
日本での両団体の正式な統一戦が初めてのうえに両王者ともに日本人王者。
世間はそこそこに、ボクシングファンは大いに!盛り上がっています。
正直数日前からこの試合のことで頭がいっぱいです。ドキドキなのです。

Vs

元世界2階級王者井岡弘樹を叔父に持ちアマエリート、サラブレッドとして早くから注目され、僅か7戦で世界タイトルをKO奪取!2度の防衛戦含めこれまで圧倒的な強さと才能を見せつけている23歳のWBC王者に対し、同じくアマの強豪ながら幾度もの挫折を乗り越え29歳にして劇的なKO勝ちで世界王座を奪取したWBA王者。
そのキャラクター的にも、新鋭対ベテラン、天才性対経験値というわかりやすい構図的にも、日本初の統一戦に臨むに相応しい組み合わせとなっています。
そして2人共にボクシングを熱心に観ているファンにとって好ましい存在であることも好試合への期待に拍車をかけます。

井岡選手は本来、一階級上のライトフライ級の選手ながら将来の複数階級制覇と7戦目での王座挑戦のチャンスの問題から無理をして階級を下げ、ミニマム級王座を獲得しました。素晴らしい試合だったけれどボクシングファンの中には、井岡は複数階級制覇の為に「体重がキツイから」と防衛戦をせずに王座を返上、すぐに階級を上げるのではないか?との疑念が渦巻きました。そう、まるでカメダ家のように。
しかし井岡選手は「減量がキツイのは自分が階級を下げたから」と語り、「この階級の世界チャンピオンとしての責任を果たす」と防衛を名言してボクシング好きを喜ばしたものでした。初防衛戦も素晴らしいボクシングで圧勝したものの判定勝ち。転級はせず、更にもう一試合の防衛戦に臨み圧倒的なKO勝ちを収めたのでした。流石に誰もがミニマム級はこれで卒業(返上)との声が高まりました。減量苦の中で王者の責任をしっかりと果たし、才能を見せつけた井岡選手をボクシングファンは皆尊敬を持って迎えたのでした。
ところが2度目の防衛戦の直前にWBAミニマム級王座を八重樫選手が奪取。同じ階級に日本人王者が並び立つことになっていたため、ボクシング界&ファンの悲願でもあった王座統一戦を望む声が高まりました。八重樫選手は初防衛も果たしていない状況ではありましたが、タイトル奪取の試合が素晴らしかったこともあり今こそ統一戦を!との声が高まりました。この声を受け、井岡選手は統一戦限定であと1試合ミニマム級に留まると語り、遂に実現へと動くこととなったのでした。

誰もに歓迎され待望された、この試合にもしひとつケチをつけるとするならば井岡選手が防衛2度、八重樫選手が初防衛もまだであり王者としてのステイタスが確立されていないのでは?という見方があります。
しかし前述のように井岡選手は体重苦で王座返上目前、しかも防衛2度とはいえその才能の高さを見せつけ彼のチャンピオンとしての風格を疑う声など皆無。対する八重樫選手は王座獲得試合は劇的なKO勝利ボクシングファンの感動を呼び、試合はアメリカ最大のスポーツTV局の選ぶ年間最高試合という好評価。初防衛前ながら29歳にしてキャリアの頂点を極めた感があります。これらのことから2人による王座統一戦はまさに「今しかない」タイミングとして歓迎されているわけなのです。

で、試合についてですが…メディアもファンも「井岡有利」でほぼ固まっています。

それも「圧倒的有利」の声もあります。八重樫選手の評価が低いわけではありませんが、それだけ井岡選手の未だ底を見せない圧倒的なボクシングの才能を評価する声が高いのです、未だ苦戦さえしたことのない若者、テクニックとスピードに溢れたそのボクシングスタイルは倒す力も抜群、まだまだ進化中にさえ感じられます。方やボクシングキャリアの頂点に達した感のある八重樫選手。比べると全ての面で差があるように感じられるのも仕方ないのかもしれません。

おそらく普段からプロボクシングを熱心に追っかけているボクシングファンのほとんどは両選手のことを共に好ましく思っていると思います。そして、そのうえで予想は?と聞かれれば「井岡選手有利」なのだと思います。そしてそして、そのうえで八重樫選手に勝って欲しいと思っているのではないでしょうか?

それは感動的な名勝負であった八重樫選手の王座奪取試合に対し、井岡選手はこれまで全てが圧勝でファンの胸を掻きむしるような心の名勝負を残していないからなのです。
もちろんそれは井岡選手が素晴らしいボクサーであるのが原因で彼の落ち度ではないのですが…八重樫選手の惨敗だったイーグル選手への世界初挑戦(アゴを折られて敗退)再起後に辻昌健選手に喫した痛い敗戦。八重樫選手には関係がないけれど、その後に辻選手が日本タイトルのリングで命を落としたこと。ボクシングファンにとっては今世界のベルトを巻く彼の姿を見ていろいろな感慨を抱いている訳なのです。

Vs_3

ボクシングは単純にパンチ力、テクニック、スピードいや、選手の強い弱いだけで勝ち負けが決まるわけではありません。偶然のアクシデント、劣勢に陥った時の対処法。はたまた歯車が狂ったときの修正法。それらがしばしば、勝負のあやとして浮かび上がって勝敗に影響するのを何度も見て来ました。いかにも、な物言いですがボクシングファンは八重樫選手の積み重ねて来たキャリアの「何か」がこれまで挫折を知らない井岡選手のボクシングに棘のように刺さり微かな狂いを生じさせ、彼の見たことのない風景に引きずり込まれるところ、いわばそんなボクシングの深淵をこの大一番で見たいと思っているのです。
この先更なる進化が楽しみな井岡選手のボクシングに新たな「深み」が加わるような…。

と、いうわけで頑張れ八重樫!

試合は明日夜TBSで生中継です。
ちゃんとやれよTBS、変わったことはやらんでいいんだから。