三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『ホメオパシー セルフケアBOOK』

2011年01月21日 | 問題のある考え

中村裕恵監修『ホメオパシー セルフケアBOOK』を見て、ますますホメオパシーは怪しいと思うようになった。
ホメオパシーは1796年、ドイツのハーネマンによって編み出された。
なのに、ドイツでは「抗生物質全盛期の10年前に比べると、ホメオパシーの認知度は上がり」とあって、歴史のわりには認知度が低いということなのだろう。
だけども、ドイツ、フランス、イギリスでは薬局で当たり前のようにレメディが買えるとも書いてあるし、どういうことなんでしょうね。

レメディの作り方。
「原材料から抽出した母液(マザーティンクチャー)を、アルコールと水の混合液を使って、希釈(薄めること)、振とう(振ること)を繰り返し、極微量にまで薄めた超希釈物質がレメディになります。
その成分を解析しても原材料の分子はほとんど、あるいは全く存在しない超ウルトラ級の薄さです。物理的に見れば、ただの水または砂糖粒(乳糖)でしかないこの超微量の薬が、なぜさまざまな病気を癒すのでしょう」
「希釈と振とうを行うほど物質の毒性は消され、また、心身を癒し回復させる効果が高くなる」

イギリスの製薬会社エインズワースでは、アルコールと蒸留水の混合液にマザーティンクチャー(原材料から抽出した母液)を1滴入れ、その液を聖書に強く叩きつけて振とうする。
「聖書に」ですよ。
「聖書の表紙は擦り切れていた」という説明の写真には、たしかに擦り切れた聖書が写っている。
本気だったら怖い話です。

↓も一般人ならひいてしまう。
「エインズワースでは3500種類のレメディが作られ、毎日新しいレメディが生まれています。たとえば、精神的に閉じ込められた人に効果があるベルリンの壁から作ったレメディなど、ホメオパスからの注文によってユニークなレメディもいろいろ生まれてます」
「ベルリンの壁」=「精神的に閉じ込められた」ということらしいけど、「精神的に閉じ込められた」状態とは閉所恐怖症のことなのだろうか。
ベルリンの壁が何を象徴しているか、それは人それぞれ違うわけで、自分が、このレメディはこれに効く、と思えば効果があるというわけで、つまりは偽薬効果だということである。

「実際、レメディに効果があることは科学的にも証明されています。フランスの科学者・ベンベニスト博士が、1980年代に、超希釈されたレメディの溶液が元の分子の作用を伝えることを実験で明らかにしています。また、レメディがなぜ効くかを説明するのに、
「水が記憶する」という仮説は、ホメオパシーの世界でも広く支持されています。原液の分子の特性が、薄める溶液の水の分子により記憶され、伝えられるというのです」
トンデモ説や疑似科学によって証明されたと言われてもね。
でもまあ、帯津良一氏の言ってる「薬の霊魂」よりは「水の記憶」のほうが科学的という感じはするけれども。

「(ホメオパシーは)肉体的な健康状態だけではなく、「物事に対して明るい見方ができるようになった」「体だけでなく心も軽くなった」「睡眠の質がよくなった」などという精神の健康状態の改善の報告もよく聞かれます」とのことで、監修者の中村裕恵医師もこう書いている。
「不登校に悩んでいた中学生の男子が、カルシノシンというレメディで体調が改善し約1年の経過で完全復帰したケースやアルコール依存で悩む糖尿病の男性がナックス・ポミカで大きく改善したケースを経験して、ようやくホメオパシーの実力を実感するようになりました」
アルコール依存症は現代の医学では治らない病気である。
不登校やアルコール依存症がレメディで治ったのなら、全国の悩める人たちの福音なのだが、ご存じない方が多いのは残念です。

なぜホメオパシーで心身の病気が治るのか。
「ホメオパシーでは、生命と健康を支配しているダイナミックなエネルギーを、バイタルフォースと呼んでいます。バイタルフォースは東洋では「気」(略)と呼ばれている生命エネルギーの概念と、相通じるものだと考えられます。
バイタルフォースは、常に外部からの影響(ストレス)に対応して健康を保とうとしていますが、ストレスが大きすぎてバランスをくずすと、ストレスに反応しやすくなり(感受性が高まり)、症状(病気)が現れ始めます。そこでバイタルフォースは、個々の内部の最も奥深い重要な部分を守るため、症状を体の外側へ発散させます。つまり病気のさまざまな症状は、バイタルフォースが体を守ろうと働いている証しなのです」

はいはい、そうですか、というお話だが、フラワーエッセンスというのもあって、これはホメオパシーよりもそそるものです。
フラワーエッセンスはイギリスのバッチ博士によって開発された。
「バッチ博士は、人が病気になる根本的な原因は心の不調和にあると考え、その不調和を癒す薬を植物に求めました。そして、日が当たる場所から集めた花の露に癒しの効果があることを発見し、1930年にフラワーエッセンスを開発しました。実際には、クリスタルのボウルに天然水を入れて花びらを浮かべ、かげりのない太陽光のもとに静かに数時間置いて、花のエネルギーを水に転写するという製造法を用います」
ネットで「フラワーエッセンス」で検索したら、あるわあるわの大盛況。
これで生計を建てている人が少なからずいるというのは、ほんと不思議だし、医学博士といってもこんなものかという冷めた気持ちにさせていただきました。

ホメオパシーを学ぶ学校が日本にもあって、『ホメオパシー セルフケアBOOK』で紹介されている。
インターナショナル・アカデミー・オブ・クラシカル・ホメオパシー日本校は、年4回(12日間)を4年間、350時間の日程で、入学金185,000円、受講料750,000円×4年間(税別・ギリシャでの受講費含む)。
ハーネマンアカデミー日本校も4年間、月一回程度の土・日曜の週末授業が年間20日間と課題の自宅学習で、入学金15万円、年間授業料77万円だから、1日当たりの授業料は38,500円ということになる。
学費が高いのに驚いた。
どうしてそんなに高いのかの説明はない。

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