先の戦争は自衛のためだったと主張する人がいる。
宮下展夫氏は木村隆『演劇人の本音』で「あの時代を生きてきた人間として、日本は悪くなかったかというと、相当ひどいことをやったんじゃないかという思いがある。日本が満州や、朝鮮半島で何をやったか。あの戦争は何だったのか」と語っている。
こうした発言に対して、サヨクだとか自虐史観だとか非難する人がいる。
かなり古い話だが、「読売新聞」(2005年10月27日)が次のアンケートをしている。
質問:先の大戦については、次のような指摘があります。この中で、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。
中国との戦争、アメリカとの戦争(イギリス、オランダ等連合国との戦争も含む)は、ともに侵略戦争だった 34.2%
中国との戦争は侵略戦争だったが、アメリカとの戦争は侵略戦争ではなかった 33.9%
中国との戦争、アメリカとの戦争は、ともに侵略戦争ではなかった 10.1%
その他 1.1%
答えない 20.7%
3分の2の人が侵略戦争だと認めているのである。
正直なところ、日本は戦争に負けてよかったと私は思う。
こてんぱんにやられたから平和憲法を手にすることができたわけだし。
保阪正康『仮説の昭和史』に、日本での原爆製造に関わった理研の研究者が「私たちに製造する能力はなかったのがよかったのです。私は大量殺戮兵器の製造者にならなくてよかった」とつぶやいたことが記憶に残っていると、保阪正康氏は書いている。
彼らは戦後、ほぼ全員が非核運動の有力な一員となったそうだ。
読売新聞のアンケートの結果について、加藤陽子氏はこのように書いている。(「時代の風:「12・8」から70年」毎日新聞2011年12月4日)
「1941年に開始されたアメリカと日本の戦争を侵略戦争だとする人は34・2%。それに対し、37年からの中国との戦争を、日本の侵略だったとする人は、そう思う、ややそう思う、を合わせると68・1%に達する。注目すべきは、日中戦争を侵略戦争ではなかったとする積極的な否定論が、1割程度にとどまったことだろう。
当時も激しかった歴史認識論争の中で、調査結果を読んだが、第一印象として、先の大戦に対する日本人の戦争観は思いのほか穏当なものだと感じたことを思い出す。(略)
戦場や戦争を知る世代が退場してゆく今後が正念場となる」
戦争を体験し、なおかつその体験を他者に語ることができるのは、敗戦時に10歳以上の人だろうと思う。
その人たちは2005年では70歳以上だが、2013年では78歳以上である。
国会議員の84%が憲法改正に賛成し(回答率は62.3%だけど)、参議院議員の28%が核武装検討に賛成(つまりは核兵器保有に賛成ということ)している。
加藤陽子氏は「戦争を知る世代が退場してゆく今後が正念場」と言うが、危惧すべき状況だと思う。
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