三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

北京オリンピックと人権と

2008年08月15日 | 日記

人と話していて北京オリンピックのことになると、「北島の2種目2連覇」よりも、「チベットが」とか「人権が」という話になることが多い。
いささか古いが、東京新聞8月9日の社説「北京五輪開幕 中国が変わる機会に」にも、
「中国の民衆はいまだに自らの意見を投票や言論、あるいは集会やデモで表現する十全な自由を得ていない。抑圧された民意はときに騒乱や暴動などの極端な形で噴き出し、日本やフランスへの攻撃といった排外の様相も帯びる。
チベットやウイグルなど少数民族の不満は高まり漢民族中心の中央政府に反抗が強まっている。北京五輪は息が詰まるような厳戒で開かれる事態に追い込まれた」
と、中国の人権無視の施策が問題にされている。

オリンピックにからめて中国批判を井戸端会議でしているわけだが、毎日新聞の内田樹「北京五輪後を見据えて」というエッセイを読むと、こういうことが書かれてある。
「「なにごともなく」中国がその国威を大いに発揚することを願っている人もいるし、「なにごと」かが起こって、中国が大いにその国威を損なうことを切望している人もいる。週刊誌、月刊誌を徴する限り、わが保守系の論客の過半は後者のようである。他国でのオリンピックが失敗することを祈願している日本人がこれだけ多いのはおそらく前例のないことだろう。
正直に申し上げて、私はこのような態度を好まない。何より「おとなげない」と思う」

そうか、私にしたところで中国が人権を弾圧するからオリンピックも批判したくなるのではなく、ただ単に中国が好きではないからオリンピックが成功しなければいいというだけのことかもしれない。

パリで記者会見したダライ・ラマも
「私は北京五輪を全面的に支持している。中国国民は五輪を開催する権利がある」
と語っている。
さすがダライ・ラマ、見習わなくてはと思った。
で、毎日新聞の「ダライ・ラマ14世:北京五輪を全面的に支持…パリで会見」という記事が、なぜか「ダライ・ラマ14世:五輪中も抑圧続く…パリで中国を非難」に変わっている。
「ダライ・ラマは「北京五輪の期間中も中国はチベットでの抑圧を続けている」と、厳しい口調で中国を非難した」
どうして正反対の記事に変えられたのか、ダライ・ラマの伝えたいことはどちらなんだろうか。

先日、ビルマ難民のココラットさんとダライ・ラマ法王日本代表部事務所の方の話を聞く機会があった。
やっぱり中国政府の人権弾圧はひどいと思う。

その時に「チベットとダライ・ラマ法王」をもらったのだが、それには「チベットのアイデンティティーの崩壊」「人口流入」「組織的に破壊されるチベット文化とアイデンティティー」「環境破壊」「チベット高原の軍事化」「鉄道と植民地化」といった章がある。

「チベットにおける中国人とチベット人の比率はおよそ3対1で中国人の方が多いのです。しかも、ほとんどすべてのビジネスの経営者は中国人です。12,827件の商店やレストランのうち、チベット人が経営するのはわずか300件足らずです」
「チベット人女性に対する強制的避妊政策が実施されていることも、チベットのアイデンティティを脅かす大きな問題となっています(今日までに数千人のチベット人女性が強制的に中絶や避妊手術を受けさせられています)」


「1949年以降、中国による政治的迫害、投獄、拷問、飢餓によって死亡したチベット人は、チベット人人口の約6分の1にあたる120万人以上にのぼります。また、6,000以上の寺院が跡形もなく破壊され、様々な文化施設も破壊されました」
寺院は一部復興していて僧侶もいるが、新米僧侶を指導する僧がいない。

ココラットさんは話の中で、北京オリンピックに対して次の提案された。
・オリンピックを見に行かない
・オリンピックの映像を見ない
・オリンピック記念品を買わない
・オリンピック開催中はオリンピックスポンサー関連製品を買わない

そうはいっても、やっぱりテレビを見てしまう私です。
だが、お二人の話が頭にあるものだから、ダライ・ラマが「北京五輪を支持する」と言っても、どこかのどに骨が刺さったような感じがしてオリンピックを楽しめない。

で思うのが、各国政府の中国に対する弱腰である。
「外務省は12日、中国製ギョーザ中毒事件で、中国国内で発生した中毒事件の被害者が4人だったことを明らかにした。被害は6月中に発生し、北海道洞爺湖サミット初日の7月7日夜に中国外交部から在中国日本大使館に情報が伝えられた。外務省は「捜査に支障が出る」との中国側の要請に従い、秘密情報として8日、秘書官を通じて福田康夫首相に報告、公表はされなかった」産経新聞8月12日
という新聞記事を読むと、「消費者としての国民がやかましくいろいろ言う」のにもかかわらず政府がこれじゃあね、と思ってしまう。

中国の巨大な市場、資源、そして独裁政権でも支援する寛容さが好きな国が多いらしく、オリンピックの開会式には100人を超える国家元首・首相・各国要人が出席している。
だが、スピルバーグは北京オリンピックのアーティスティック・アドバイザーを降板した。
開会式と閉会式における演出を支援することになっていたが、「中国政府がスーダンのダルフール問題解決に尽力を注いでいないことに抗議し、辞任を発表した」そうだ。
これまた大したものだと感心。

本願寺派の人たちが中心となって、チベット支援やビルマ政府抗議の集会やデモが行われている。
日本の地方都市で集会やデモを行なっても、中国やビルマの政府は何ら痛痒を感じないだろう。
だからといって、何もしないでいるのでは彼らが人権を弾圧していることを認めることになる。
オリンピックはひとまずおいといて、ささやかでもできることをしたいと思う。

             
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29 コメント

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Unknown (ふくえんじ)
2008-08-17 15:42:08
個人的には中国の大学に一年在籍していたことや中国語を今も学んでいることもあり、基本的に中国は好きな国です。

ただ人権問題をはじめたくさんの問題があるのは事実ですし、中国や中国人の嫌いな面ももちろんあります。

しかし、今年に入ってからやけに目立つここぞとばかりの中国バッシングはちょっと気になります。

以前安田弁護士が死刑廃止運動に関わっていたり、著名な刑事事件の弁護をやっているということで、「自己実現に裁判を利用している」とか「売名行為」とかいったレッテルを貼られていた時のような、これだから○○は・・・的なものを感じます。

そういえば「コマンダンテ」という映画の中でキューバのカストロ前議長が何度も対アメリカのシンボルに担がれかけたことに触れ、「自身の敵はアメリカではない。アメリカというときには善良なアメリカ市民をも敵とみなすこととなる。我々が打倒すべきは権力の腐敗であり植民地主義である。」と述べられていましたが、中国についても権力者や為政者のチベットへの対応こそが批判されるべきなのではないかなと思います。

とりあえずオリンピックは無事に終わってほしいものです。
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坊主憎けりゃではね ()
2008-08-18 08:01:11
おっしゃるとおりです。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いじゃないけど、なにもかも悪くとって、オリンピックの失敗まで期待するというのはたしかに大人げないですね。
そもそもメディアを通して伝わってくる中国像がどれだけ真実を伝えているのか、光市事件などの大政翼賛的報道がありますから、眉につばをつけたほうがいいのかもしれません。
仮想敵国を作り、猫も杓子も攻撃することでガス抜きをさせ、現実から目を背けさせるのは国がよくやる方法です。
オリンピックについては内田樹氏が書いているように、ほどほどに成功がベストでしょうか。
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本当の敵 (スペルマン)
2008-08-18 13:54:26
北京オリンピックに関しては大失敗して欲しい。
なぜなら、彼等のやってることは中華思想の拡大であって、真の平和とは全くほど遠いものである。
オリンピックに開催の為に違法な立ち退き、役人の腐敗とかが表面化しただけであって、決してあら探しやガセネタでわざと中国を陥れたりはしていないのである。
確かにお坊さんの言う通り、中国人の一般人は悪くはない。一番の悪は中華思想(左翼や平和団体、反核団体はこの考え方をわざとらしく無視している。)を第一にする者であり、その中でも胡錦濤や江沢民が一番の中心人物である。
コイツらが権力の中枢にいる限り、中国自身も決して良くならないと思う。
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ほどほど ()
2008-08-19 07:41:05
毎日新聞に載った内田樹氏の「北京五輪後を見据えて」というエッセイはネットでは読めないようなので、一部引用します。
「オリンピックの失敗を願っている人々は、国威をかけたこのイベントが惨憺たる失敗に終わった場合、中国人は深くこの失敗を反省し、「旧来の陋習」を改め、自国を「よりましな国」にする方向に舵を切るだろうと予測しているのであろう(隣国民が国際的に「恥をかく」ことだけを専一的に願っているような幼児的な人間が、まさかメディアで発言を許されているはずはないからである)。
だが、私自身はこの楽観には与することができない。私が知る限り、人間はそれほど向上心のある生き物ではないし、中国人だけが例外的に向上心に富んでいるとも思えないからである。
北京オリンピックがもし痛ましい失敗のうちに終われば、そのできごとは中国人に深い精神外傷を残すだろう。その外傷的経験は、そののち彼らが国民的連帯と国際協調を通じて何かを実現しようとするたびに、間歇的に甦って、そのつど衝動的で不条理な国家的行動を選択させるように仕向けるだろう。
13億の隣人たちが「間歇的に衝動的で不条理な国家的行動」をとるようになる可能性の芽はできるだけ摘んでおく方がよいと私は考えている。
それゆえ、私はできれば北京オリンピックには「ほどほど」の成功のうちに終わって欲しいと願っている」

なるほどなと思いませんか。
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中国思想 (スペルマン)
2008-08-19 09:51:30
毎日新聞…
あの変態報道が問題になった新聞社ですか。
そんなもん引用するなんざ底が見えてますなぁ。そもそもあの新聞社は朝日に並んで反日、親中色が強いからね。全くもってお話にならないなぁ。
それ以前に中国人が被害者で、中国批判をする他国、他国民を悪と考えてる時点で全く取り上げる価値も無い。批判されるべきは中国人のアイデンティティであり、華夷秩序、中華思想であり、それを推進している中国政府である。
さて、北京五輪であるが、民衆が変わろうとしても所詮不当逮捕されるのがオチ。その民衆のガス抜きの為に出てきたのが南京大虐殺というガセが出てくるのである。なので、未だ「謝罪しろ!」と言っているようでは全く話にならん。これを「指桑罵槐」という(この思考方法も左翼や平和団体、反核団体も徹底的に無視しているよなぁ…)。
中国人はあらゆる場面で世界中で迷惑かけてるんだから(観戦マナー、著作権侵害、犯罪行為etc…)、五輪大失敗でも生ぬるいくらいだし、何しろ成功なんてした日には中華思想や華夷秩序をますます助長することにしかならない。
「中華思想」「華夷秩序」「指桑罵槐」これら3つの思想を廃棄しなければ中国自体世界から総スカン喰らうと思うがどうだろうか?
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どうなったら失敗か ()
2008-08-19 19:56:40
毎日新聞に載っているエッセイだからダメ、というのはあまりに単純でしょう。
どうして是々非々ということにならないのか不思議です。
スペルマンさんこそ偏向しているように思います。
内田氏の「ほどほど」という意見のどこが問題なのですか。
成功か失敗かの二者択一ではないでしょう。
失敗したからといって中国政府の政策が変わるわけでもないでしょう。
内田氏の言うようにかえってひどくなるかもしれません。

そもそもどういう失敗を期待しているのですか。
ミュンヘンオリンピックのようにテロが起きたらいいわけですか。
ダライラマの「私は北京五輪を全面的に支持している。中国国民は五輪を開催する権利がある」という発言を見習うべきだと思います。
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民族壊滅作戦 (硝煙)
2008-08-21 00:22:41
>チベットやウイグルなど少数民族の不満は高まり

高まり・・・どころじゃないでしょう。

>「なにごと」かが起こって、中国が大いにその国威を損なうことを切望している人もいる。

というか ただ単に真実が浮き彫りになればいい。

>ダライ・ラマも「私は北京五輪を全面的に支持している。中国国民は五輪を開催する権利がある」と

知れば知るほど、無いでしょう。  そして彼らは今日も 実態を隠滅し正当化に努めています。

>やっぱり中国政府の人権弾圧はひどいと思う。

人権弾圧??? ではなくて 民族壊滅作戦ですよ。 ま 国威発揚のためには当然のことをしているだけです。

「チベットにおける中国共産党の罪」 http://humanzu.hp.infoseek.co.jp/genron/tibet.html

その頃、中共は「民主改革」という名の新たな大虐殺を開始し、
チベットの民衆を幾つかの階層に分け、「富裕階級」は撲滅すべき階級で、「下層階級」でも処刑に反対すれば同罪とした。
そして、「密告制度」と「人民裁判」が導入され、家族に於いては子供は両親の、
両親は子供の罪を糾弾せねばならなくなり、民衆の新しいリーダーとされた乞食達は、「富裕階級」を次々と摘発した。

鞭打たれ、はりつけにされ生きながら焼かれ、生きたまま解剖され、生き埋めにされ、腸を取り除かれ、首を切られたりして殺害された。
この様な殺人行為は、いずれも公衆の面前でなされた。
犠牲者の友人、隣人、同じ村の人々は、それを見物する様に強制され、犠牲者は自分の家族や知人が見ているその目の前で殺されたのである。
ある者は目に釘を打ち込まれて殺された。
ある者は後頭部を打ち抜かれ、脳味噌が飛び散り、飛び散った血と肉塊を見た中国人達は「花が咲いた様だ。」と言った。

そこに住み、民衆の尊敬を受ける僧侶達は、糞を食べたり、小便を飲む様に強制され、人々はその光景を見る様に強要された。




反抗した僧侶達は次々と虐殺され、
絞首刑の際には首を絞める重りに仏像が使われ、「仏がいるなら助けてもらえ」と言われて、高所から蹴落とされた。

現在でもチベットの監獄・収容所では凄まじい処刑、拷問が行なわれ、
ゴム管を使っての囚人のロヘの放尿、血液・体液の強制抽出、中国人看守たちによる強姦等が行なわれている。

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民族浄化 (硝煙)
2008-08-21 00:25:10
「チベット大虐殺」

1959年の3月チベットの首都のラサで「改革解放」の名のもと「民族浄化」が開始、殺戮・破壊・強奪・強姦が行われた。
15万人の僧侶と尼僧は公開虐殺によって1400人に減らされた。
僧侶に対しては、滑車を使い仏像の重みによる絞首刑や、尼僧に対し警棒の形をした5万ボルトのスタンガン
を性器に入れて感電死させ彼女の死体は裸のまま路上に捨てられた。
一般民衆の犠牲者は120万人におよぶ。中国は「強制断種(チベット男性の生殖機能を手術によって奪う事)」
や「強制交種(チベット女性を中国男性と交わらせ民族の血統を絶つ事)」等の民族浄化に力を入れた。


生き残った証言者によると、「親の死体の上で子供に泣きながらダンスをさせ」人民解放軍はそれを笑いながら銃殺した。


「ジュネーブ法律家国際委員会」が受理した供述書によると
「何万というわが国民が殺された。軍事行動においてばかりでなく、個人的に、また故意に殺されたのである。
(略)彼らは銃殺されたばかりでなく、死ぬまでむち打たれたり、磔にされたり、生きながら焼かれた。
溺死させられたり、生きたままで解剖されたり、餓死させられた者もあった。絞め殺されたり、首を吊って殺されたり、
熱湯による火傷で殺された。又、ある者は生き埋めにされたり、はらわたを取り除かれたり、
首を切られたりして殺された。こうした殺人行為はいずれも公衆の面前でなされた。
犠牲者の同じ村人、友人たち、隣人たちは、それを見物するよう強いられた。」とある。
ちなみに侵略や粛清、失政による飢餓など、歴史上その数において世界最大の虐殺者は、まぎれも無く中国で、
犠牲者は自国民、他国民含め四~六千万人といわれる。

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中国の意図 (硝煙)
2008-08-21 00:27:53
「チベット動乱~北京五輪出場への条件~」 http://www.noguchi-ken.com/message/b_num/2008/0322.html
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毎日新聞の信用性 (スペルマン)
2008-08-21 12:34:38
毎日新聞もインターネットであんな変態記事出さなければ少しは信用できたのにねぇ。その変態記事を出した毎日新聞を信用しているお坊さんは自分の息子や娘が記事で出てた変態行為を実践してる、ってことかしら?
さて、毎日新聞を偏見云々おっしゃってるようなので、例の内田樹氏をウィキペディアで見てみた。
…護憲派としての側面、アメリカへの愛憎、安倍政権の教育三法改正への断固反対…
…駄目だこりゃ。ガチ左翼で中国寄りじゃねぇか。
こんなもん信頼に値しない。もっとましなもん用意してきて下さいよ。頼みますよ。
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