これまで米の需給割合に応じた減反政策を実施してきた国は、方針を180度変え、生産調整を各人の選択制にするという案を検討し始めています。1971年に実施した減反政策は、稲作専業農家を苦しめ、農業力を弱める結果をもたらしました。戦後、米の大増産を旗印に日本一の面積のモデル農村として誕生した大潟村では減産を強いられ、借入金の返済にも窮する事態となりました。その後自ら販路を見出し「ヤミ米」と叩かれながらも安全な食を求める消費者と絆を結び自由販売の突破口をつくったことは農業者の闘いの記録として歴史に刻まれています。1993年、かねてから貿易の障壁といわれてきた「聖域」の米が輸入解禁となり、稲作農家にとっては減反政策とあいまって米価の下落という二重の苦境に立たされることとなりました。今回の「農政改革」が通れば米がさらに余ってきて市場価を下げ、作るほどに生活していけない構図が生み出されてしまいます。前回「土の声」第35号“農政にゆれる現場”でも米山が報告しましたが、全有連稲作連合会副会長の堀純雄氏と宮城地区、佐藤長幸氏にも尋ねてみました。石破農政改革案に対して堀純雄氏は「政府は小さい農家を壊し大農家を作りたい意図が見え見え」と断じ、改革案が食糧の安定生産に結びつくかは甚だ疑問と云います。佐藤氏も「これをすすめていくと農家はなくなる」と危機感を募らせていました。「農業に希望を持てない農村では老人しか残らない。田舎がなくなるってことですよね。」と。
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