わたしの開高健

2011-05-27 14:58:20 | 日記
細川布久子著  集英社刊

開高健は決して嫌いな作者ではない。スッキリした『洋酒天国』時代の広告コピーも好きだし、彼のエッセイも好きだ。関西人特有のしつこさと言うか、これでもか、これでもかと言葉を畳み込んでくる、あのねちこさも好きだ(辟易するのだが、懸命に広辞苑や大漢和辞典を捲っている姿が想像できるようで、開高健の別の一面、真面目、誠実、努力家を実感させるのだ)。
本書は『面白半分』の二回目の編集長時代の彼の部下になり、後に非公式の私設秘書になった著者から見た開高健その人を邂逅した本である。
目新しい所はなかった。私がエッセイの中で垣間見る開高健その人だったからだ。プライベートな面で「おや、そんなことがあったの?」という所もあったが、彼自身が言っているように「作家は作品で評価してほしい」という考えに同感しているので、この点はどうでもいい。
ただ、著者は開高健の身近にいることで得たものがたくさんあるようだ。それが羨ましい。貧乏を経験して者は、貧乏している者に優しい。挫折を味わった者は、失意のどん底にいる者の気持を忖度できる。それを全身で受け取った著者もなかなかの者。
私としては、開高健が私が思っていた通りの人だったことに満足している。