移行化石の発見

2011-04-18 14:53:22 | 日記
ブライアン・スウィーテク著  文藝春秋刊

この本を手に取ったのは、著者略歴による。著者はラトガーズ大学在学中、教育実習で小学生にクジラの進化について教える準備をしていたところ、校長から面倒を起こすようなことはやめてほしいと横槍が入ったそうである。それをきっかけに進化生物学を志した、と言う記述による。その反骨精神にひかれた。
知る人は知っていることだが、アメリカで進化論を信じていない人が40%、州によっては60%を超す。進化論を教えた教師が有罪判決(罰金100ドル、金額はともかく教師にとってはその州での教職からスポイルされたに等しい)を受けたことさえある。「自由」を国是としているアメリカにしては、不思議なことではある。

話はかわる。ダーウィンが『進化論』を発表した時、彼を悩ましたのは進化の移行を示す証拠(化石)が十分でなかったことだ。当時を考えれば無理もなかったのだが。それが今や様々な証拠が発見されている。とくに21世紀に入ってからの成果は目を見張るものがある。これは学際を越えた遺伝学や分子生物学の協力が大きい。
著者はサイエンスライターとしての能力を十分発揮して、それらを紹介してくれる。進化論に興味がある人にとって、21世紀に入ってからの数々の発見を十分楽しめる。特に2009年に発表された「私達と進化の歴史をつなぐミッシングリング」だとされたイーダと呼ばれる化石が、アダピス類(キツネザルの仲間)でしかなかったことが判明した事情なかなか面白い。一読の価値あり。