知性誕生

2011-04-14 15:15:42 | 日記
ジョン・ダンカン著  早川書房刊

内容的には、非常に面白い本。
ところで、書名『知性誕生』は概ね正しいと思うのだが、少々違和感を憶える。原題は『how intelligence happens』である。オックスフォード英語中辞典によれば、intelligenceとは「the power ofseeing,learning,understanding,andknowing,mental ability」とある。そして、本書の構成もほぼこれに従って展開されている。だからこそ、脳の話が中心にもかかわらず「眼の誕生」(目とニューロン)についても記述されているのだろう。
つまり、人類の頭脳のなかで、これらの能力がどのような発達段階を経て獲得されてきたのか、しかも今なお欠陥を持っていて、完成には程遠い段階だあると言っている。
言いたいことは、タイトルは素直に『インテリジェンスは、如何に誕生したか』とした方が理解しやすかったのではないか、ということなのだ。
最高の知性(インテリジェンス)とは、「整然とした明瞭な思考の構造が見え、そこでは、関連するすべてのことが最適の位置に組み立てられている。それぞれが最適の行動選択と最適の結果をもたらす」ことだろう。ところが、例えば肺癌の治療法で、手術はより効果的であるが、放射線治療では誰も死亡しないが、手術では患者の10%が死亡する。あなたはどちらを選ぶ。実際の実験では約65%の人が手術を選んでいた。では、バージョンを変えて、手術はより効果的だ。治療行為自体に関しては、放射線療法後100%の患者が生存し、手術後90%が生存する。この時、手術を選んだ人は85%に跳ね上がった。
この問題が論理的に同じであることが問題なのではない。「死亡」という言葉に引きずられてしまうのだ。お分かりだろうか。自分の立場、主張、目先の欲によって、同じ確立の問題ですら違う答えを出してしまう。我々が、最高の「知性(インテリジェンス)」を持つには道遠しということらしい。