おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

時をかける少女

2024-01-11 07:01:18 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2019/7/11は「地獄門」で、以下「シコふんじゃった。」「史上最大の作戦」「七人の侍」「自転車泥棒」「死の棘」「シベールの日曜日」「下妻物語」「市民ケーン」「ジャージー・ボーイズ」と続きました。

「時をかける少女」 1983年 日本


監督 大林宣彦
出演 原田知世 高柳良一 尾美としのり 上原謙
   内藤誠 津田ゆかり 岸部一徳 根岸季衣
   入江たか子 松任谷正隆 入江若葉

ストーリー
土曜日の放課後、掃除当番の芳山和子(原田知世)は実験室で不審な物音を聞きつけ、中に入ってみるが人の姿はなく、床に落ちたフラスコの中の液体が白い煙をたてていた。
フラスコに手をのばした和子は不思議な香りに包まれて気を失ってしまう。
和子は、保健室で気がつき自分を運んでくれたクラスメイトの堀川吾朗(尾美としのり)や深町一夫(高柳良一)らと様子を見に行くが、実験室は何事もなかったように整然としていた。
しかし、和子はあの不思議な香りだけは覚えていて、それはラベンダーの香りだった。
この事件があってから、和子は時間の感覚がデタラメになったような奇妙な感じに襲われるようになっていた。
ある夜、地震があり外に避難した和子は、吾朗の家の方で火の手があがっているのを見て駈けつける。
幸い火事はボヤ程度で済んでおり、パジャマ姿で様子を見に来ていた一夫と和子は一緒に帰った。
翌朝、寝坊をした和子は学校へ急いでいた。
途中で吾朗と一緒になり地震のことを話していると突然、古い御堂の屋根瓦がくずれ落ちてきた。
気がつくと和子は自分のベッドの中にいた。夢だったのだ。
その朝、学校で和子が吾朗に地震のことを話すと、地震などなかったと言う。
そして授業が始まり、和子は昨日と全く同じ内容なので愕然とした。
やはりその夜、地震が起こり火事騒ぎがあった。
和子は一夫に今まで起った不思議なことを打ち明けるが、一夫は一時的な超能力だと慰める。
しかし、納得のいかない和子は、一夫を探していて、彼の家の温室でラベンダーの香りをかぎ、気を失った。
気がつくと和子は、一夫が植物採集をしている海辺の崖にテレポートしていた。
そこで和子は不思議なことが起るきっかけとなった土曜日の実験室に戻りたいと言う。
一夫は反対したが和子のひたむきさにうたれ、二人は強く念じた。


寸評
1982年の「転校生」、1985年の「さびしんぼう」と並んで尾道三部作と呼ばれている作品群の第2作目であるが、三作品の中では一番出来が悪いと思う。
ファンタジー性を出すためにテクニカルに走りすぎていることもあるが、主演の原田知世と高柳良一の演技力不足が作品を壊している。
角川が原田知世を売り出すための彼女のデビュー作だが、棒読みのセリフ回しは如何ともしがたい。
アイドル映画の典型の様な作品で、テーマ曲と共に撮影シーンの中でそれを歌う原田知世の笑顔が紹介されて彼女のアイドル化が成し遂げられる。
三部作はすべてファンタジックな作品だが、最後に未来人まで登場してくる本作は少し子供じみている。
大学生になった和子は吾郎と付き合っていそうなのだが、そこに再び未来から深町がやってくる。
本格的な三角関係が始まりそうなのだが、どうして大学生になった和子はあんなにも暗いのだろうか?
なにかパッと明るくなるような青春映画と感じなかったなあ。

尾道を訪ねる機会があって、彼女が行き来するタイル小道にも行ってみた。
この映画が封切られた当初は、原田知世人気もあって結構な人でにぎわっていたようだが、僕が行った時にはブームも去って随分と淋しい小道だった。
小道と言うよりも路地と言ったほうが良い通路で、敷き詰められたタイルもどこか薄汚れていた。
同行の者は「なんだ、つまんない所だな」と言っていたが、僕は原田知世が駆け回っていたのだと思うだけで感慨深くなれた。
尾道はその街並みを映すだけでも絵になる雰囲気を持っている。
僕はこの街が好きで二度も訪れている。

岸部一徳の福島先生と根岸季衣の立花先生がコミカルなコンビを演じているが、どうもその描き方は中途半端だったな。
ネクタイの出来事のためだけに登場していたような気がする。
芸達者な二人なので、青春映画をサポートする役割をもっと演じさせることが出来たのではないかと思う。
上原謙、入江若葉 の老夫婦には深町一夫の姿は見えていなかったはずで、そのあたりの様子ももう少し上手く描くことが出来ていればと感じる。
帰宅途中の和子をお茶に誘うエピソードだけでは弱かったと思うし、その表現方法も少し物足りないものだった。
青春映画としてはもう一人の女子高生の描き方もお飾り的だった。
和子との恋のバトルがあるかと思っていたが、そのような出来事は一切なかった。
子供の頃のひな祭りで傷つけた指の怪我のエピソードももう少し膨らませてほしかった。
こうなってくると、演出よりも脚本に工夫がなかったのだと思わざるを得ない。
監督の大林宣彦が脚本にも名を連ねているのだから責任逃れは出来ない。

主題歌を松任谷由実が歌っていて、音楽を彼女の夫である松任谷正隆が手掛けているが、その松任谷正隆が故人として写真だけでわずかに登場しているのはご愛敬だ。