おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ドラゴン危機一発

2024-01-16 07:38:49 | 映画
「ドラゴン危機一発」 1971年 香港


監督 ロー・ウェイ
出演 ブルース・リー マリア・イー ジェームズ・ティエン
   リュー・イェン ハン・インチェ ノラ・ミヤオ

ストーリー
大雨による洪水のため農作物に大被害を受けたチェン・チャオ・ワンは、従弟のシュウ・シェン一家を頼って都会で働く決心をかためた。
旅立つとき、母は喧嘩早い彼の行末を安じて人との争いをかたく禁じ、チェン自身も母から贈られたヒスイのペンダントにかけて、絶対に喧嘩をしない誓いを立てた。
その彼が身を寄せることになったシュウの家は、妹のチャオ・メイを始めとする大家族で暮していたが、男たちは町の南にある製氷工場で働いていて、チェンもそこで働くことになった。
町の有力者であるマイが経営するこの製氷工場は、氷の塊の中に隠した麻薬の密売が本業だった。
そんなこととは知らないチェンは工場で働き始めたが、ふとした手もとの狂いで氷をレールから落としたため、中に隠してあった麻薬が飛びだしてしまい、それを目撃した工員のチンとウォンの二人が行方不明になった。
不信に思ったシュウは、マイを訪ねるが、その彼もマイの息子に殺されてしまう。
残されたチェン、チャオ・メイ、クオンたちはようやくマイ一味を疑い始め、情報を要求してストライキに入った。
その結果、暴力をもって働かせようとするマイの部下たちとの間で乱闘が始まり、静観していたチェンもまきぞいをくい、母が贈ってくれた大切なペンダントが真二つに割れた。
さしものチェンもこれ以上がまんできなかった。
チェンの強さに驚いた工場長は、この有様をボスに報告し、彼を新しい班長に任命した。
その夜、工場長に招かれたチェンは、飲みつけない酒に酔いつぶれ、翌朝、眼を覚ましたのはウーという女のベッドの中だった。
驚いてはねおき、表へ飛びだしたチェンは運悪くチャオ・メイと出くわしてしまった。
かねてからチェンに思いを寄せていたチャオ・メイにはショックだった。
それ以来、チェンに対する仲間の態度が急変した。


寸評
アメリカから香港に凱旋したブルース・リーが主演した一連のカンフー映画の第4作目に当たる「燃えよドラゴン」が大ヒットしてカンフーブームを巻き起こしたので、さかのぼる形でブルース・リーのカンフー映画が連続して公開されることになり、まず第1作目の本作が2本目として公開された。
ドラゴ・ンシリーズの公開を順に追えば、1973年12月の「燃えよドラゴン」を皮切りにして、1974年4月の「ドラゴン危機一発」、1974年7月の「ドラゴン怒りの鉄拳」、1975年1月の「ドラゴンへの道」と続いた。
「燃えよドラゴン」でアクションスターとして世界的に知名度が上昇した時には、すでにリーは亡くなっていたのだが、大ヒットしたことでその他の作品も世界中に配給されたのである。
ブルース・リーの死亡は1973年7月20日で、32歳の若さだった。

事実上の第1作なので筋書きは荒っぽい。
そもそも最初の企画ではシュウ役のジェームズ・ティエンが主演の予定だったのに、あまりにもブルース・リーのキャラクターが際立っていた為に彼を主演にして脚本が書き替えられたという作品だということが影響していると思われる。
したがってジェームズ・ティエンのシュウは途中で殺されてしまっている。
チェンがやってきた製氷工場は麻薬の密売が本業なのだが、その裏家業が判明するプロセスはいかにもB級作品といった感じである。
麻薬が簡単に出てきてしまい、目撃した人間が殺されてしまい行方不明扱いとなってしまう。
どうやらその前にも行方不明者がいたようなのだが、その男とのつながりは描かれていないので、先に行方不明になった男のことに唐突感がある。
行方不明者が出たことで仲間たちが工場長や社長のもとを訪れるが、いきなり社長を犯人扱いしだすのも飛び過ぎていて違和感が大いにある。
映画を見ている我々にとって社長たちが犯人側であることは明白なのだが、彼らが何の証拠も根拠もなく犯人と決めつけているのはよくわからない演出である。

安っぽさが否めないのは省略しているシーンが多いことにもよる。
クオンたちが全員殺されているのだが、殺されるシーンはないし、予期せぬ出来事を目撃してチェンが驚くという演出も、チェンの驚きがこちらに伝わってこない。
誘拐されたチャオ・メイが何事もなかったように監禁されていて、メイドによって助け出されるのも安易と言えば安易な演出である。
最後に対決するマイはカンフーの相当な使い手であることが、ドラ息子への指導場面だけで示されているのだが、その場面はものすごい腕の持ち主には見えなかった。
チェンが誘拐されたチャオ・メイを残して母親のもとへ帰ろうかと悩むなんてヒーロー物としてはあり得ないだろう。
結構重要な役だった工場長は結局どうなったのか不明のままである。
ツッコミどころ満載なのだが、それがB級映画の醍醐味ともいえる。
ブルース・リーはまだ発展途上という感じがするが、そのアクションと表情はすでに片鱗を見せている。