おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

釣りバカ日誌3

2024-01-07 07:20:59 | 映画
「釣りバカ日誌3」 1990年 日本


監督 栗山富夫
出演 西田敏行 三國連太郎 石田えり 谷啓 五月みどり
   戸川純 花沢徳衛 中本賢 TARAKO 加藤武
   前田武彦 三谷昇 笹野高史 丹阿弥谷津子

ストーリー
出世よりも釣りが大事という鈴木建設のグータラ社員・浜田伝助こと浜ちゃん(西田敏行)は愛妻・みち子(石田えり)との間に子供ができないことに悩んでいた。
その相談を受けた浜ちゃんの釣り仲間である社長・鈴木一之助ことスーさん(三國連太郎)は、浜ちゃんが真剣に悩んでいると思わず大笑い。
怒る浜ちゃんにスーさんは週末の釣りに誘う。
浜ちゃんは伊豆・星ヶ浦へヒラメを釣りに行こうと言う。
それを聞いてスーさんはビックリ、そこはスーさんがかつて兵隊として半年ほど駐在していた思い出深い土地。
そこで雪子(五月みどり)という旅館の女将と出会ったスーさんはさらにビックリ、雪子は兵隊時代の恋人・妙子の娘だったのだ。
雪子は毎年母の命日に星ヶ浦へお墓参りをしているが、そのお墓も近いうちにリゾート計画によって立ち退きを迫られているという。
そこで初めて妙子が既に死んでいることを知ったスーさんは、雪子に墓を建てるお金を贈る。
それによって浜ちゃんは、雪子がスーさんの隠し子ではないか!? と早とちりし大騒ぎ。
そんな中、スーさんが中米のパナマに休暇に出ている最中、伝助と雪子は星が浦の公民館でリゾート開発反対運動に参加するが、その開発を進めていたのは鈴木建設だった。
反対運動が盛り上がっているとの新聞報道で急きょ帰国したスーさん、幹部社員一同は新聞の載っていた写真を見て、反対運動に伝助が加わっていたことを知り、就業規則違反で懲罰委員会に呼び出す。
とりあえず開発計画の方はスーさんの取り計らいで中止になるが、社員にもかかわらず運動に参加した浜ちゃんは就業規則違反として二週間の出社停止。
しかし浜ちゃんはその二週間をスーさんと共に釣りを楽しむのだった。


寸評
三國連太郎と西田敏行のコンビで人気を博した「釣りバカ日誌シリーズ」であるが、僕はこの第3作が一番良かったように思う。
このシリーズに於いては西田敏行のドタバタ演技より、三國連太郎のコミカルな演技が何と言っても面白い。
三國連太郎のキャラクター及び数多く演じてきた役柄から考えて特異なシリーズであった。
内容は毎回他愛のないものではあるが、世のサラリーマンからすればこんなにも趣味の世界を楽しく生きられたらいいなと言うあこがれがある。
おまけに出世にまったく興味がない浜ちゃんを支えるみち子という理解ある奥さんがいることも羨ましい。
僕の釣り経験と言えば、子供の頃に家の前を流れる寝屋川でもっぱらフナ釣りに興じたくらい。
海の釣りは辛うじて家人の実家のある淡路島でサビキで小アジを釣ったことぐらいでルアーを使った海釣りはまったくの未経験なのだが、見ていると海釣りの楽しさは伝わってくる。
近所に釣りが趣味で釣り船まで購入した人がいて獲物を頂いたことも有るのだが、やはり新鮮な魚は美味い。
山の旅館と海の旅館を二者択一で選ぶとすれば、僕は新鮮な魚介類の料理を求めて海の旅館を選ぶだろう。

今回はスーさんの忘れ形見と思われる女性の出現と、リゾート開発による自然破壊がテーマとなっている。
スーさんが出会ったのは戦争末期に恋をした人とウリ二つの雪子である。
雪子の亡くなった母は結婚した相手がひどい男で離婚し、雪子にはスーさんの本名である鈴木一之助の名前と共に、彼がどんなに素晴らしい人であったかを語っていたらしい。
スーさんにとっては初恋とも言える人の子供が生き写し状態で現れたなら、援助してやりたいと思う気持ちは少なからず湧くであろうし、経済力があれば援助を惜しまないだろうことは想像できる。
雪子がスーさんの子供ではないかと浜ちゃんが早とちりしたことから起きる騒動が一方のメインである。

もう一方は、スーさんにとっても想い出の地である伊豆・星ヶ浦のリゾート開発問題である。
山を開発することは海も滅ぼしてしまうと反対運動が起きる。
リゾート開発は地域に雇用を生み、地域の発展にも寄与するが、反面豊かな自然を破壊してしまう。
地域の発展と環境破壊は永遠のテーマかもしれない。
環境破壊をもっと前面に出しても良かったと思うが、コメディとして開発会社の浜ちゃんを反対運動に参加させることでお茶を濁している。
浜ちゃんは就業規則違反として2週間の出社禁止処分を受けるが、もとより会社を休むことに無頓着で釣り三昧にひたる浜ちゃんはやはり羨ましい。
浜ちゃんとコンビを組むのはスーさん以外にもう一人、浜ちゃんの奥さんであるみち子さんがいる。
第8作からみち子役は浅田美代子に代わったけれど、僕は初代の石田えりのみち子が好きだった。
画面が真っ暗になり、「合体!」という文字が出るのもシリーズの定番だったが、本作でやっとみち子が妊娠し、子供が生まれることが暗示される。
浜ちゃんとみち子さんの仲睦ましい夫婦関係、若い頃の忘れられない恋と、恋人の忘れ形見との関係、中々子供に恵まれなかった子供がやっと誕生することになる浜ちゃん夫婦。
全編を通じて描かれていたのは家族の物語だった。