ようこのかまど

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「①穀物―白パンと黒パン」 ~ぱんれぽNo.5~

2007年03月12日 | ぱんれぽ~高2夏休みの自由研究
<白パンと黒パン>
4種のムギの特性を紹介する。
・コムギは経済的生産のためにはセ氏14℃以上が必要であるが、秋播き種、春播き種があるので、栽培地に出穂条件の適したほうを選ぶことが出来る。また乾燥に強いもの、湿潤な気候に強いものなどなど、幅広い順応性があるので、栽培地域は広く、世界最大の穀物生産量を誇っている。コムギ粉は色が白いので、白パンが出来る。(ちなみに「小麦色の肌」というのは、コムギ粉の色ではなく、稔ったコムギの穂の色を指しているそうだ。)
・ライムギはコムギに比べ、耐寒性に優れ、セ氏-25度以下の所でも越冬でき、痩せ地でも容易に生育する。しかし栽培地域は限られており、現在ではロシア、ポーランド、北欧、ドイツ、オーストリア、スイスといった国々である。ライムギパンは色が黒いので、黒パンと言われる。
・エンバクはカラスムギ族で別名オートムギ。パンのほかカユ(オートミール)の原料にもなる。ライムギよりさらに厳しい自然環境下で生育する。北フランス、スコットランド、アイルランド、アルプス山中から北欧でも北緯60度から69度まで、アフリカでは南緯40度、標高は2800メートルまで栽培できる。特にコムギやライムギの育たない地域では、パンやカユの好材料になっていた。エンバクパンはコムギを少量混ぜるが、それでも煎餅のように薄く、色は薄黒いので、黒パンの部類に入る。現在ヨーロッパでは廃れてしまったが、第二次世界大戦後まで、前記地域の主要な食料であった。
特に、アルプス以北の人々は1950年頃まで自給自足の生活を送っており、もっとも収穫量の多いエンバクのパン(ドイツ語では「ハーファークーヘン」、スコットランド人もよく食べていたが彼らは「オートケーキ」と呼ぶ)を日常多く食べ、ライムギパンはよりおいしいもの、コムギパンは年に一度の復活祭のお楽しみだったという。エンバクは、オーブンの余熱の中に入れておかないと水車で挽くこともできない程硬い。エンバクやライムギのパンにコムギを混ぜるようになったのは1950~60年以降のことで、人々は民宿経営や林業、酪農によって現金を得るようになり、自家栽培のムギではなく買った粉でずっとおいしいパンを食べるようになった。
しかし、エンバクはたんぱく質や脂質に富み、他のムギより栄養価が高いため、今日でも馬の飼料としてよく栽培される。(ちなみに、広島のバッケンモーツァルトというお菓子屋さんでは歯ごたえの良いエンバクのクッキーがとても人気だ。)
・オオムギはコムギに比べ生育期間が短く、耐寒性もあるので、コムギより高地、北方で栽培できるが、現在オオムギはパンにするより、粒のまま煮たり、ビールやその他の酵造原料、飼料に利用されたりしている。しかしメソポタミアでは、灌漑による塩害に強いため、パンの初期段階から新約聖書の時代まで、オオムギパンはコムギパンより庶民の間では一般的だった。しかし、コムギの生産高が安定するにつれて、しだいによりパンに適したコムギに取って代わられた。

このように、ムギ全体について言えば、それぞれ生態に違いがあるため様々な異なる栽培条件にも適応できて、広い地域に渡ってヒトの食用とされてきたし、また種類によって栽培に適した地域が異なった結果、素材の異なるパンの地域が発生したのである。その中でもパン用穀物には特にコムギとライムギに絞られていき、地域ごとに伝承されて、白パン地域と黒パン地域が生まれたのだった。


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