「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」
ことを趣旨としている成人の日。全国各地で色んな祝賀会が催された。
どこまで続くか先行きの見えない、超就職氷河期。こんな時代に成人を迎える人たちには気の毒な思いがする。
生まれるときが悪かった・・・と言われても、生まれてくる子に時代を選べるわけもない。ただただ気の毒なことである。
ごく一部を除いて、ひと頃のバカ騒ぎをして憚らない無茶苦茶な成人式は影を潜めた。
そんな善良なる青年・淑女に、自覚を持って生きる一つの方法を暗示している。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みにうかぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例しなし。世の中にある人と栖(すみか)と、また、かくのごとし・・・」これは「方丈記」の冒頭。
また、かの有名な「平家物語」の冒頭の一章くらいは暗記するべきではなかろうか・・・とおっしゃるのは田辺聖子さん。
リズム感のある名文なので、すぐ覚えられるし、みずみずしい若い頭に刻みつけられた記憶は、一生消えることはない。
今は深い意味はわからなくとも、歳を重ねていく中でその歳なりに、新しい意味を深く汲み取るようになる・・・と。
そのように、何か心の拠り所を見つけて、今は最悪と言われる時代背景を、なんとか持ち堪え、希望をもって、大人への道を歩んで欲しいな・・・などと思ってしまう。の響きあり。
娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、
唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。