正月二日。風一つない穏やかな晴天に恵まれて、気持ちよく初詣。
我が力の及ばぬところを、神様や仏様におすがりして力を与えてもらおうと祈りを捧げる。
実際、神も仏もこの世に存在して、時として大きな応援をしてくれることがある。それが「まぐれ当たり」という形で、この身に跳ね返ってくる。そんな話しを、ひとくさり。
タイトル 『石にかじりついても』
製紙会社に勤めていたが、このまま60歳定年を迎えたら不完全燃焼のまま会社を去ることになるのではないかと思ったのが50代半ば。
もしわがままが許されるなら、いま一度気持ちを奮い立たせ、持てる力を最大限発揮して燃え尽きたい、と自ら配置転換を申し出た。
折良く新しい職場が見つかった。
産業医と協力、工場で働く従業員や協力会社員計1800人の健康・衛生管理を担当する仕事だ。
労働基準監督署や保健所などとの対外折衝が主要業務で、衛生管理者の国家試験免許が必要だという。
そんなこととは知らずに喜び勇んで配転に応じた私だが、今更後には引けない。
晩酌はもとよりタバコも断った。夕方7時のニュース以外はテレビも断って猛特訓が始まった。法令編・管理編の参考書と首っ引きの2ヶ月半。
結果は1回目で大きなまぐれ当たり。世の中には神も仏もいてくれた。
残された5年、無我夢中で健康診断の制度設計や、職場の分煙などに取り組んだ。
思い切って踏み出したあの時の一歩が、長い会社生活最後の花道を飾ってくれた。
そんな現役時代を穏やかに振り返れるのはありがたいことだ。
朝日新聞「声」年始特集テーマ「有言実行」 2011.1.1 掲載