A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

「名作」というのは、様々な要素が組み合わさった偶然が生み出すもの・・・

2008-02-24 | MY FAVORITE ALBUM
The Great American Songbook / Carmen McRae

ジャズボーカルの醍醐味は、大編成のオーケストラをバックに朗々と歌い上げるものにあるのもひとつ。小さなクラブで聴衆を取り込んだライブの歌に魅力があるものひとつ。
その時、大事なのはバックの演奏との一体感だ。大編成であればアレンジャーとの組み合わせ、小さな編成ではバックを努めるピアノやギターとの呼吸。
そのためにも、大歌手ともなれば専属のピアニストを抱えることが多い。

このアルバムはカーメンマクレーの名作の一つともいわれる。この頃はオーケストラをバックにしたスタジオ録音が多かった時だが、久々にコンボをバックにしたライブでのステージは、新ためてマクレーの素晴らしさを味わうことができる。歌も伴奏も、そして雰囲気も完璧だ。
場所は、ロスの郊外のジャズクラブ”Donte’s”。よく耳にする店の名前だ。
自分の持っているアルバムは日本盤。久々にライナーノーツを読み返してみると、油井正一氏がこのドンテについて記述している。「このダンテは地元のミュージシャンの溜まり場であった」と。「それ故仕事欲しさに集まるミュージシャンも多く、秋吉敏子はこの店の雰囲気をあまり好まなかった」とも。
そのような店だったせいか、この店のポリシーは地元のミュージシャン優先。外様は受け入れなかったようだ。果たしてマクレーはこの当時西海岸に住んでいたかどうかは分からないが。

今回バックを努めるミュージシャンはというと、この”Donte’s”の常連ともいえるメンバー達。
ハウスバンドにマクレーがゲストとして加わった形。そして、ピアノに座っているジミーロウルズがこのグループのリーダー格だ。ロウルズがニューヨークに行く前の演奏が聴ける。
彼女のレギュラーグループではなくとも、歌伴の得意なロウルズの率いるトリオにジョーパスが加わったバックは、マクレーの歌とぴったり呼吸があっている。
マクレーの歌の特徴は弾き語りの延長のような独特の節回し。好き嫌いがはっきり出るタイプの歌手だと思うが、彼女の好さがよく分かるアルバムだ。

このアルバムの素晴らしいもうひとつの点が一日のステージをすべて収めている点。マクレーが歌う新旧の名作(まさにグレートアメリカンソングの数々)がイントロダクション、そして曲の間の語りを含めて2枚のアルバムにぎっしりと詰められている(CD盤ではさらに収容できなかった曲も入ってはいるのだが)。
先日紹介したConcord supper bandと同様「没」になる曲はひとつもなく、ライブステージのすべてを再現しているという点でもこのアルバムは貴重であり完成度の高いアルバムだ。
このアルバムが生まれた経緯は分からないが、用意周到にプランされた作品というよりは、偶然生み出されたある一夜のライブステージの全貌という感がしないでもない。
この”Donte’s”という店、Concordの作品のライナーノーツを見てもよく登場するライブスポットだ。今回のメンバーを含めこの店の常連たちがConcordレーベルを立ち上げたといってもいいかもしれない。
そして、このアルバムの主役マクレーも、その後Concordの専属として活躍することになる。

1. Introduction
2. Satin Doll
3. At Long last Love
4. If The Moon Turns Green
5. Day By Day
6. What Are You Doing The Rest Of Your Life?
7. I Only Have Eyes For You
8. Introduction
9. Medley
   :Easy Living ~ The Day Of Wine And Roses ~ It's Impossible
10, Sunday
11. Introduction
12. A Song For You
13. I Cried For You
14. Behind The Face
15. Introduction
16. The Ballad Of Thelonious Monk
17. There's No Such Thing As Love
18. Introduction
19. They Long To Be Close To You
20. Three Little Words
21. Introduction
22. Mr. Ugly
23. It's Like Reaching For The Moon
24. I Thought About You

Carmen McRae (vol,p)
Jimmy Rowles (p)
Joe Pass (g)
Chuck Domanico (b)
Chuck Flores (d)

Produced By Jack Rael
Recorded live at "Donte's" L.A. November 6, 1971

The Great American Songbook
Carmen McRae
Warner Jazz

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6 コメント

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この頃のカーメン (YAN)
2008-03-01 23:21:42
ソフィアさん

こちらこそご無沙汰しています。
最近は益々ご活躍の様子。お元気そうで何よりです。
こちらも結構仕事が煮詰まっていますが、そんな時こそ一枚のアルバムが一時の清涼剤です。

ちょうどこの頃のカーメンはメジャーレーベルに決別し新たな世界を広げていく変革期ですね。彼女の語りかけるような歌い方の真髄に迫っているような気がします。
返信する
Unknown (ソフィア)
2008-03-01 05:18:06
お久しぶりです。

私にとって神でもあるカーメン♪

とっても大切な1まいです(あ、2枚でした)

日本に来た時に、突然弾き語りのアルバムを作ることになってしまった、あのダグの1枚が、これでわかる気がしますね。
返信する
こちらこそよろしくお願いします (YAN)
2008-02-29 06:56:10
私もリンクさせて頂きました。
よろしく。
返信する
リンクさせていただきました (bob)
2008-02-25 15:05:10
YANさん、こんにちは
>bobさんの、ブログも時々お邪魔しています。

ありがとうございます。恐縮です。
リンクさせていただきました。
こちらこそよろしくお願いします。
返信する
来訪&コメントありがとうございます。 (YAN)
2008-02-24 22:06:23
bobさん
こんばんは、はじめまして。

カーメンマクレーは好きな歌手です。特に、このような雰囲気の彼女が。
おっしゃるように、このアルバムでジョーパスも忘れてはいけませんね。
CDは、曲は多いのですが、彼女のライブの雰囲気が伝わらないのが残念です。

bobさんの、ブログも時々お邪魔しています。
今後ともよろしくお願いします。

返信する
パスも最高です (bob)
2008-02-24 01:15:15
はじめまして

このアルバムが国内発売された時、
友人が購入して、とても羨ましく思った思い出があります。
未発表曲をふんだんに収録したCDもいいですね。
CDは確か曲の配列が違っていましたか。

「SATIN DOLL」におけるジョー・パスの登場場面は
いつ聴いてもゾクゾクします。
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