わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

レ・ミゼラブル

2005年04月30日 | 観劇記
2005年4月30日ソワレ
帝国劇場 1階L列サブセンター

ちょっとした心境の変化から、今年はリピートしないことにしたので「レ・ミゼラブル」もロングランであるけれど、今回一回だけの観劇となりました。その一回が「レ・ミゼラブル」ってこういうお話だったと改めて感じさせてくれる熱い舞台だったのです。本当に感激しました。
多少の入れ替わりはあったにせよ、03年バージョンとキャストが殆ど同じ、また短縮版ということも同じでした。あの03年は、正直言って、あまりに魅力的な舞台にはなっていませんでした。
しかし、この回は、本当に俳優の方一人一人が、その役として舞台の上で生きていると感じられました。感覚的にはこうなのですが、技術的に言えば、プリンシパルの方たちは歌の安定感が増しましたし、アンサンブルの方たちは演技がとてもとてもとっても細やかになっていました。おお、そこまで動くか、と驚きの連続でした。

心に残ったキャストの方たちへの感想を簡単に。

マリウスの藤岡正明さん。今年からの登場ですが、それがよかったのかもしれません。本当に初々しくて、自分に正直で、好感が持てました。そして、声がとてもよく出ていて、歌は非常に安定していました。

テナルディエのコング桑田さん。この方も今年からの登場だそうですが、歌が上手い。と言っても、テナルディエの歌を自分のものとして歌うってとても難しいと思うのです。ただ、美しく歌えばいいわけではありませんから。それなのに、まったくしょうがない親父だ、と共感してしまうのです。本当に、素晴らしいテナルディエでした。

ジャン・バルジャンは別所哲也さん。歌も安定してきました。ただ、何箇所か、そんな若い声で歌う場面かなぁと感じました。しかし、そんなことさえ忘れさせてくれる絶妙な演技。歌がなくても、バルジャンが何を考え、感じているのかがわかるほどの演技でした。

アンジョルラス。小鈴まさ記さんです。私は、「レ・ミッズ」の中で一番好きな役がこのアンジョルラスです。きっぱり言います。絶対に妥協できないのです。ビクトル・ユゴーの原作に、アンジョルラスは「花のように美しい」という下りがあります。原作では、政府軍に捕まり銃殺刑になるのですが、その刑を執行する人達が、引き金を引くことをためらうほど美しいという設定なのです。
「美しい」という言葉は、外見の美しさは勿論のこと、その内側から溢れ出す美しさがあってこそ、使われるのだと私は感じています。
ユゴーが思い描いたアンジョルラスに、私は昨年12月千葉での「レミコン」で久しぶりに出会ったのです。小鈴アンジョルラスは、仲間を見つめる視線の優しさ、マリウスを見つめる柔らかい視線、グランテールと交わす真の友情を悟った視線、すべてに美しさを感じていました。
そして、コンサートより演技が入るから、本舞台は小鈴さんがさらに輝くだろうと思っていました。その期待以上のアンジョルラスを拝見し、小鈴アンジョルラスが誕生したことを、我がことのように嬉しく思ったのでした。

ジャベールって役もあるんですよね。それに今拓哉さんが演じられたんですよね。語り尽くしたいので、また、今度じっくり書きます。

実は、この回の舞台はいろいろな方が帝劇での千秋楽を迎えられたのです。私は、小鈴さんがアンジョルラス役では最後の登場ということしか知りませんでした。それほど、「レ・ミゼラブル」という作品から距離を置いての観劇だったというわけです。
しかし、小鈴さんのファンですから、当然いろいろ気にはなっていました。私が千葉での小鈴アンジョを素晴らしいと思ったのだから、それ以上何をどうしろというのか、と言う気持ちがあるものの、やはりどうしても気になるものです。ですから、大体の雰囲気は察していました。
が、まさか小鈴さんご本人が、「自分は緊張に押しつぶされたりしないと思っていたのに、初日から3日ぐらいは、独りぼっちになった気がしました。でも、いろいろな人から支えて頂き、アンジョルラスも支えられるリーダーとして演じようと切り替えてからは、とても楽しく演じることができました。」と言うようなことをおっしゃるとは夢にも思っていませんでした。
私は、今さんのアンジョルラスが大好きで、もう他の人が演じるアンジョルラスなんて考えられませんでした。そんな中、小鈴コンブフェールを何度か観て、小鈴さんファンに「小鈴さんになら、アンジョルラス譲ってもいいよ。」と軽く冗談のように言っていました。小鈴さんのどこにそんなに惚れ込んでいるかといえば(こういいながら、結構冷静に見ている)、小鈴さんは自分の考えていることを、もれなく体現出来ますし、それを観客に伝えることが出来る点です。そんなの役者なら当たり前と思われるかもしれませんが、意外にそうでもないのです。笑いを取る場面で、観客が笑わない、なんてことはまさに、このことが出来ていない証拠ですからね。
小鈴さんなら、ユゴーの言う「美しいアンジョルラス」を外見だけではなく、内面から作り出せるし、その内面の美しさを観客に間違いなく伝えられると思ったのです。「譲ってもいいよ」と言いながら、もしWを組んだら、今さんでも食われちゃうかもという恐れを抱きつつ、良い舞台に接することが出来るはずだから、演って欲しいと心から思っていました。
小鈴さんは、当たり前のことを当たり前にやっていらした俳優だと思います。ですから、強い緊張の中でも、当たり前のことが出来る俳優さんのはずなのです。それなのに、ご自分で白状してしまうほどの緊張や孤独に襲われていたのですね。勿論、小鈴さんの中にも問題があったのかもしれませんが、いつもの小鈴さんを失わせてしまう原因は・・・?

でも、きちんと立て直して、こんな素晴らしいアンジョルラスを作り上げたのですから、終わり良ければすべて良し!!!
これからのご活躍が、ますます楽しみです。
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