暇つぶし日記

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モロッコの旅(8)エッサウィラで映画「イヴ・サン=ローラン(2014)」を観た

2014年07月01日 21時21分59秒 | 日常
 
 

エッサウィラでは5日借りたアパートで2日ほどは自炊をして外で食事をすることへの疲れを少しは癒したのだが自宅で食事をするとその後時間が余る。 読書をしたり音楽を聴くのは昼寝のときにするから夕食後のまだ大分明るい外を散歩して海を見たり閉める前の店を覗いてから戻りベッドでその日の日本やオランダのニュースをアイパッドで見ているともう11時半を周っておりそのうちコトリと眠りに落ちている。 あるとき町を歩いていると映画放映のポスターが貼ってあるのが目に付いた。 ホテルのレストランのコース・メニューで食事をしながら毎日違った映画が安価で観られるというものだ。 その日は比較的新しいというか出来たてのフランス映画「イヴ・サン=ローラン(2014)」を見せるというので出かけた。 アパートで食事を済ませていたのでコーヒーだけを頼むとコーヒーにちゃんとしっかりしたお茶請けがついてきた。 小さなホテルのレストランには我々を入れて3組のカップルが居るだけだった。 他の二組はモロッコのスープの前菜、それからタジン、フルーツにヨーグルトのデザートという献立を摂りながらホテルの従業員がコンピューターを操作してプロジェクターで壁に映画を写すホーム・シアターのようなものだ。

イヴ・サン=ローランというのは名前は知っているけれど取り立ててファッションに興味のない自分にはどうということもなかったのだが、ここに来る前にマラケッシュの町を歩いていて公園めぐりをしたときに我々のホテルのある旧市街から世界中どこでも大都市に見られるような現代的な新市街まで歩いたときに暑さを凌ぐためにイヴ・サン=ローランが70年代から住んでいて死後近しいものが受け継ぎ故人の遺志をついでそのまま公園としているという場所があるとガイドブックに載っていたのでそこに出かけた。 金をとって人を入れる公園というのはここぐらいだった。 当然宮殿や遺跡、宗教建築物には庭がありそこで一息つくことはあったけれどそこに入るまでに些細とはいえ入場料を払っていて庭だけに金を払うというのは珍しい。 イヴ・サン=ローランの名前に惹かれてくるのか観光客で一杯だった。 けれど入場料を払って入った庭は他のものとは格別に違っていた。 入ると京都の竹林を思わせる竹薮が続いており格段に涼しい。 そのあとは様々なサボテンや砂漠の植物が植えられ手入れが行き届いている。 潤沢な水が湛えられ真昼に涼を取るには最適だった。 その中にあるベルベル族の民族博物館的な展示スペースや衣料、装飾品のブティックをみていると明らかにフランスの香りがしたのだが、何故パリのデザイナーがマラケッシュにこんな屋敷を、、、というのが疑問だった。 そのうえ中にあるのが何とも言えない70年代にアメリカで流行ったような眼を見張る色彩の家だったのだがその種明かしをしてくれたのがこの映画だった。

マラケッシュにいるとこの家の芥子色というか狐色は別として紺色には気がつかなかったけれどここエッサウィラでに来て町が白と紺、薄い青で統一されているのを見て納得がいくとともに映画の中で70年代に触発されたのがピート・モンドリアンの構図、色彩だったという件がありなるほどと思った。 面白かったのは現在の庭にある建物と映画の中の当時の建物が少し違うことだった。 当時には三角形の屋根が現在の建物の上についていたのかそのように撮られていた。 それに映画ではイヴ・サン=ローランの父親はモロッコで保険会社の代理人をしておりそイヴの幼少時の思い出、パリの生活から一時逃避するための場所だったということが示唆されていた。 エッサウィラにはジミ・ヘンドリックスが滞在していたというようなヒッピー全盛の時代なのだ。 マラケッシュのあちこちで今では老人となったその頃からの居残りヒッピーが見かけられたことを思い出す。

映画が終わり薄暗い路地をエッサウィラのメインストリートに来ると老若男女で賑わっていた。 この町にはブランドものの店などどこにもなくメインストリートといってもショーウインドウなどあるような店もない。 マラケッシュでも旧市街はここと同じだ。 世界中に見られるファッション・ブランド物の店は新市街に行かなければならない。 そういうところがこの町の城郭に囲まれた旧市街が世界遺産に登録されている所以なのだろう。  門の中に一日中寝そべる浮浪者を含む人々全てがこの旧市街で生業するその総体が世界遺産なのだと思った。