暇つぶし日記

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ゼーランド日記(5) ミドルブルグで一日遊ぶ 上

2007年08月23日 10時01分28秒 | 日常


2007年 8月1日 (水)

この日は私たちが滞在しているフリッシンゲンの町から6km離れた、かつて島だったゼーランド州の中心である州都ミドルグルブルグに一人で自転車に乗って一日遊びに行った。

この町の粗方の説明ははウィキペディアにまかすとして現在のオランダの国が出来る前、北フランスからベルギーを通過して多くの移民がアムステルダムを形作りオランダ語といわれるものが歴史に記される平安中期以前に既に日本の平安初期にはこの町は形成されていたのだから文化的にはローマ時代とはいかないまでも、ローマ帝国が北の方はイギリスにまでのぼっていたのだからここにもローマ兵が駐屯していたことは確かであるし、そのまえのケルト文化さえあるのだから明らかにローマ、フランスの、南のヨーロッパ文化の香りがこの古都で充分感じられて当然という地である。

それはここから南東のオランダ最南端の古都マーストリヒトでもそのような「南」が感じられる。 これは一概に、オランダ、ドイツなどの北ヨーロッパの硬質な文化に対して柔らかかなものが、まさに文化の地域差、温度差となって感じられるのだろう。 だから光と暖かさを求めて北の住人、ドイツ人が北の海から温かみのある光のゼーランドの海岸に押し寄せるのも充分理解のできることである。

家人と娘は家でぶらぶらしている私を放って自分たちでピクニックのバスケットに色々なものを詰めて海岸に一日出かけ水に入ったり日光浴をしたり、また、読みかけの本を砂浜に寝転んでページを風に吹かせながらうとうとと日がなすごすつもりで自転車にのって出かけていた。

私たちが今いる町、フリッシンゲンはもう大体どこにどんなものがあるか分かってきたので興味は徐々に外に向かっていて、ここにいるときは極力車は使わず自転車か徒歩で済ませたいと思うから、あちこちを眺めながらこの島を古くから縦断する運河に沿ってその今日はミドルブルグに向かった。 町の中は別としてそこから外に出ると平らな島だからどこからでもミドルブルグの教会の塔、これは「のっぽのヤン」と呼ばれているのだが、これが見える。 50mほどの党は10km程度の距離でも田舎の広がりの中では目に付き、今は夜には下から照明があてられるからまるで光る陸の灯台といった風情があるのだが普通の灯台と違うのは先からは光が出ないことで、照明で白く光った塔自体が存在を示して中心にたっているから古来親しみをこめて「のっぽのヤン」と呼ばれているのだ。 25年以上前からはこれを何度も眺めているのだが今日は初めてここに昇ってみようと決めた。

街中に入るとどこでも同じ、町の中心に沿ってショッピングが出来るような通りが沢山ありオランダ人観光客と地元の人たちが混ざって皆のんびりと買い物をするのが見られるのだが早速わたしはヤンの壁に自転車を停め3ユーロ50セントを払い、まず狭い石の螺旋階段を200何段か上って45mほどの「のっぽのヤン」の展望台まであがった。 はばが1mもない螺旋階段だから途中で降りてくる人がいればどちらかが石の壁に体をぺタリとくっつけて、大抵は降りるほうがそうするのだが、一方をやり過ごすこととなる。 幸いなことに私が上ったときには小学生の子供とやせたその親たちが降りてきただけだったが観光客がどっと繰り出したときには途方も無い肥った御仁が男も女もいるのだから難儀なことになるに違いない。

直径7,8mの窓のついた塔の展望台にくるとここは丁度この教会の鐘の下にあたり、毎日鳴るに違いないこの鐘が鳴り響くときにはここにいると鼓膜が破れるほどに違いない。 だから多分、一日の拝観時間が過ぎて夕方の6時に鳴らしているのかもしれない。 ガラスがまだ今ほど均質で平らでなかった頃の小さいものを木の窓枠にはめ込んだ小窓を開けると涼しい風通しとなり、それぞれ10km未満のこの島の端々が見える。 我々の滞在するフリッシンゲンの灯台や海岸のプロムナードに沿った高層ホテルがここからはっきり見えるし、塔下には中世の町並み家並みがぐるりと取り囲んでいる。 

近代以後の工業地区は町の外郭、田園地帯との境目に作られているようだしこの町も例外ではないのだが概観を考慮してか無粋な工場などの建築物は高い立ち木の茂りで遮蔽して見えなくしてあるようだ。 はるかかなた、ベルギー方面20kmほどのところに原子力発電所の太い冷却煙突から蒸気を出してそのまま雲になるようなものが見えるとここはまさしく現代だと時間を覚醒するのである。


ミドルグルフが正式な日本語表記のようだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%95