暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

ハーフ・ペンション

2007年08月22日 04時40分30秒 | 日常

オランダではペンションというのは普通には、ペンションという、一般家庭で何がしかの料金を取って3食と宿泊を提供する施設、ということとペンション生活、つまり年金生活ということを意味するのだが、だからハーフ・ペンションというのは昼食はなく夕食と朝食だけの宿泊、という意味になる。つまり英語のB&B(ベッド アンド ブレックファースト)プラス サパーである。

年金生活というのは通常は仕事からの引退であるから仕事はしないのであるけれど私の場合、何年か前までの旧オランダの社会福祉制度により通常の63歳からの年金生活が、諸所の事情から58歳から63歳までの間に自己申告で様々な形で、つまり全く引退するのか半分引退するのか引退しないのか決めることが出来る制度であり、特例ではそれ以前にこの制度を適応することが出来て、この旧制度も10年弱しか施行されず我々の年齢の人間以外は殆ど知られなかったものの、今では社会の高年齢化に伴って老齢者にももっと働け、という趣旨からこの弾力性年金制度が廃止されてしまい又旧態依然の一律63三歳定年に戻っている。 議会の議論ではそれをもっと伸ばして65歳から70歳近くまでということも検討されていると聞く。  幸いなことに私はこの旧制度の適応を受け、まだ現在の定年制度まで10年弱あるものの、給料は以前と変わらず、一週間に半分、20時間働き、あとは御随意にということになり、仕事の性格上、仕事場には週に2度ほど顔を出せばよく、あとは自由に年金生活を送ればいいという、まあ、年金生活の予行演習、軟着陸時期、ということで、これが私のハーフ・ペンションである。

あちこちで知り合いや人と話しているときに、どうしてるんだい、と聞かれて、ハーフ・ペンションさと答えると、このハーフ・ペンションはある時期だけの言葉だったこともありオランダ人皆に知られていることでもなく、ま、ちょっと考えればわかることだからそこで、あ、それはいい、昼飯抜きかい、腹を引っ込めるのにはいいじゃないか、と笑って返されることもあり、そのときは、その昼飯のために半分だけ働いているのさ、と返したりもする。

今日は夏休みもほぼ終わり9月の新年度からの仕事の都合もあり、必要事項はメールで済ませられるものの久しぶりに仕事場に顔をだすことにした。

昼頃にゆっくりと家を出て昼飯を仕事場近くのロンドンパブでサイダー、フランスののシードル、を飲みながらシェパード・パイで昼飯にしようと思ったのだがオランダ語をしゃべらないコックニーアクセントの強い女の子に、コックは夏休みだからランチはできないのよと謝られ、仕方なくそこを出てふらふらとまた自転車に乗った。 それで通りすがりの場末の中華料理屋に入った。 そこで焼き飯に肉の煮込み各種の簡単なインドネシア料理、ナシ・ラマスを注文した。 食事のあとコーヒーで読みかけの本を少し読み支払いを済ませ、また自転車にのってぶらぶらと漕ぎ出した。 

考えてみれば自分の住む街ながら、もう2ヶ月も仕事場に出かけていなかったからこの町も少々違った風に見え、ヴァカンスで滞在したゼーランドの町とも重なり、まだオランダにいながら先ほどのどちらの店でもオランダ語が不自由であったことも加えてヴァカンスにいるような気分にもなる。 ヴァカンスで退屈しのぎに読み始めたペーパーバックのレンブラントを題材にした小説を読んでいることもあり、その洟垂れ小僧が実際に走り回っていた場所に来てなるほどと、この見慣れた景色が少々昔にもどったように見えた。 絵描きの父親がまわしていた風車近くのレンブラント橋から見ると、かつてはシーボルトが日本から戻って山ほどのコレクションを保存していた家のあたりも見え、今はそこもタバコ屋か安っぽい会員制のカジノかということになっているから昔日のなごりなどひとかけらも見えない。

そんなことも思いながら先ほど喰った1500円ほどの昼食を稼ぐためにのこのこと仕事場に自転車を漕いだ。