きのうは月と600円の日でした。
とりあげた歌集は大野誠夫『薔薇祭』。 私は今回この人の作品をまとめて読んだのは初めてだったのですが。
う~ん・・・・ ちょうど仕事が超ハード時期だったせいか、読めば読むほど暗さが増してきて、3首選ぶの・・・? 選ぶ歌がないよ、といった状態でした。
時代が戦後直後のことを詠っているせいかとも思いましたが、高安国世の『真実』とか近藤芳美の『埃吹く街』も同じ時代なのに、もう少し違うものがあるのにな、と思っていました。
確かに戦後直後の風俗を描写しているのですが、その歌のなかに「訴えてくるような、迫って来るような」ものがキャッチできないのはどうしてだろうと思いました。 普通、歌集を読んでいれば、一瞬でも作者と繋がる感じとか、「受け取った」気がするものなのですが、それがまったくなかったのです。
レポーターのおふたりの発言により、幼少期に両親や家族と離れて暮らしていたこと、母親に疎まれて育ったことなどがわかって、ああ、それで「伝わった」感じがしないのかも、と思いました。
誰かに感情を伝える、というプロセスがないままに大人になって短歌に出会ったため、歌に体温のようなものが欠けているような気がしたのかもしれません。
でも、参加者(13人だったかな)の中には「明るいほうへ向かおうとしている」「短歌は人を楽しませるものと思っている、ということがわかる」というような意見もあって、同じ歌集でも受け止め方や心の状態によって違うものだなと思いました。
私が選んだのは次の歌。
・兵たりしものさまよへる風の市白きマフラーをまきゐたり哀(かな)し
・坂上に風呂屋があれば家々の小溝を白くゆく水のこゑ
・をりふしに情熱的に仕事するわれを机の前に見出す
選んだひとが多くて、3首からはずした歌は
・いつのころよりかわれの室にも河童棲みさびしきときに低く歌へり
現実と幻想の合間を漂うような歌がやっぱり私は好きなのです。 「情熱的に仕事する」もなにか可笑しみがあって、狂気に近い集中を感じて、こういうことあるな、と思いました。
次回は森岡貞香の『百乳文』。 すごく楽しみです。
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