日々是雑感

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深掘りミュークルみっくす!「二年越しのバレンタイン」

2023-02-10 20:41:12 | アニメ

「深掘りミュークルみっくす!」をサボってはや2月。いろいろな予定をすっ飛ばしてあのイベントの話をしようと思う。最近では少し変わってしまった感もあるが、ラブコメには欠かせないあのイベントを。ではそれぞれを見ていこう。

 

41話「バレンタイン和菓子配っちゃお!」

ゆめちゃん達がバレンタインをどうするかという話題からの流れでクラスメイトである和菓子屋の娘、白玉すあまちゃん(注1)が「バレンタインにチョコだけなんておかしい。和菓子だっていいじゃない」と言い出したことから始まるこのエピソードは徐々にゆめちゃんとみゅーちゃん、朝陽君とれいくんの二組へと収束していく。

バレンタイン前日、各所で怪しい動きを見せる杉山先輩への疑念を口にする朝陽君に対して、尊敬しているはずの先輩を疑うなんておかしいと言うゆめちゃんとのすれ違いからこの物語は実質的に始まる。ここで朝陽君はゆめちゃんとケンカしてしまったと思い込んだけど、ゆめちゃんは「疑う朝陽を理解できない」と言っただけでケンカしているという意識がない。ここで認識のずれが生まれる。

バレンタインと縁のない男子のブラックスキーマを糾合した怪物は当事者であるゆに達の予想を大きく超えて町中からバレンタインを奪っていく。その中には前日にケンカしたと思い込んだ朝陽君のものもあった。

不条理な夢の世界でみゅーちゃんと奮闘する最中にミュークルステッキを失うゆめちゃん。現実世界ではまいらちゃん、ことこ先輩、ときわちゃん、そしてこの怪物を生み出したゆに達すらバレンタインを奪われる絶望的な状況。

その中で朝陽君とれいくんは朝陽君が女装(注2)して和菓子を配るという奇想天外な方法でこの事態を解決へと導く。

 

このエピソードを通じて杉山先輩と百合先輩の姿はない。ゆめちゃんは杉山先輩へのチョコについて「ファンクラ部に任せる」旨の発言をしている。32話でゆめちゃんが杉山先輩について自らの想いを吐露したことでラブコメとしての「二組の幼なじみの物語」はほぼ決着がついていた。だからこそこの物語は「朝ゆめ」の物語に収束したのだ。そしてゆめちゃんが朝陽君にチョコを渡したことで「認識のずれ」も解消された。

 

「みっくす!」44話「アクムーちゃんもバレンタイン」

前のエピソード(43話「入れ替え作戦やっちゃうにゅい!」)でアッキーは自らの過ちを悟り、アクムー陣営から離れる決断をする。それに納得できないアクムーちゃんはアッキー離反の裏にいるゆめちゃんを消そうとたくらむ。そうする事でアッキーが自分の元に帰ってきてくれると信じて。

ここでゆに達も大きな決断をしている。アクムーちゃんが間違っていることを知り、ボスと袂を分かつ事になってもゆにはアクムー陣営に残ると決めたのだ。ボッチの人をボッチのままにしないために。それはかつての啓蒙本をうのみにした姿じゃない。自らの経験からいっぱい悩んで出した答えだ。

アクムーちゃんはアクムーアビスチョコをばらまくことでわくわくキラキラなバレンタインをひやひやゾゾゾにしてゆめちゃん達をおびき寄せる策に出る。それをゆに達から聞いたブラザー律(今井律)とはるる(杉山遼仁)は自らが売り子に入り、アクムーアビスチョコと普通のチョコをすり替える事でその被害を食い止めようとする。だがこの対応策は致命的な戦略ミスとなる。二人は自分たちの価値を計算に入れていなかったのだ。イケメン二人が売り子に入る事でアクムーアビスチョコショップは大盛況(注3)となる。すり替え作業を行っていたゆに達もてんやわんやになってしまい、二人も動くに動けない。結果、ゆめちゃん達のユメシンクロを止められなかった。

罠にはまったゆめちゃん達はアクムーちゃんに捕らえられてしまう。アッキーが救援に入ったが、アクムーちゃんの攻撃の前に手も足も出ない。朝陽君だけはゆめちゃん達と別行動をとっていたためにいまだに自由に動ける状態だった。ゆめちゃん達の危機を知った朝陽君はかつて使ったプリンスストーンでユメシンクロして救援へと向かう。ミュークルレインボウが無い状態で事態は絶望的かと思われたが、ちあちゃんの力でいつも連絡用に使っているおもちゃの弓矢を仮のミュークルレインボウとしてゆめちゃん達の救出に成功(注4)する。

ゆめちゃんのために懸命な朝陽君、その朝陽君を信じることができたゆめちゃん。二人の姿を見てことこ先輩は「またあの幼なじみコンビに救われちゃった」とつぶやく。そしてアッキーはゆめちゃんにとってのプリンスは自分ではないと悟るのだった。

 

このエピソードは「みっくす!」全体のストーリーにおける強力な軸であったアッキーの想いを終わらせるためのもの。そのために朝陽君に必要だったのは女装ではなくプリンスとしての姿だった。その姿を見せつける事でアッキーに身を引かせることを決断させた。ゆに、アッキー、アクムーちゃん、それぞれの思いが変化していき物語は最終決戦へと加速していく。それにしても次のエピソード(45話「ボクたちサンシャルルです!」)でこれが前座に思えてしまうほどのラブ要素を見せるのが「みっくす!」のすごさだよなぁ。

 

二つのバレンタインエピソード

二つのバレンタインエピソードが決定的に異なるのは全体のストーリーの中での位置づけだ。「バレンタイン和菓子配っちゃお!」は全体のストーリーとは少し離れた独立したエピソード。それに対して「アクムーちゃんもバレンタイン」は全体のストーリーと密接にかかわった物語であった。

どちらも中心となるのは朝陽君やアッキーといった男の子だ。だがこれは「多様性」じゃない。男の子にご褒美が欲しいならこうやって頑張りなさいよという話だ。「多様性」ならば「アクムーちゃんもバレンタイン」の中でドリーミーメイトみんなでチョコをかき混ぜている場面(注5)や杉山兄弟が日米のバレンタインデーの扱いの差を語る場面がそれに相当するだろう。

決定的に異なる部分もあるが、相似の部分も多い。そうやって見比べると脚本家(注6)のバレンタインデーに対する感性の違いも垣間見えてそこも興味深い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注1:彼女はシリーズを通してなかなか面白い進化を遂げたので後に紹介する予定

注2:少年役を演じられることが多い(というかほとんど)れいくん役の田村睦心さんにこんなヒロインボイスが出せるのか、などと失礼な事を思ってしまった。

注3:昨年の白玉庵の失敗はイケメンを入れなかった事ではないだろうか。しかしここまで大盛況だったのに売れ残るなんてアクムーちゃんどんだけ作ったのよ。

注4:この時ほど以前教わった(16話「いちなるとチアふるに挑戦!」)チアふるをしようと思った事はなかったし、弓矢を放つ前のれいくんと朝陽君とのやり取りも熱い!

注5:「バレンタイン和菓子配っちゃお!」では女の子(みゅーちゃん、すうちゃん、ねねちゃん)がチョコを作っている様子を男の子(ぺこくん、れいくん)が眺めるという構図になっている。

注6:「バレンタイン和菓子配っちゃお!」は横谷昌弘さん、「アクムーちゃんもバレンタイン」はシリーズ構成の金杉弘子さん。


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