日々是雑感

アニメや映画の感想を中心に雑多に述べていきます

深掘りミュークルみっくす!「南川朝陽」

2022-03-31 11:50:14 | アニメ

これから「深掘りミュークルみっくす!」と題して、「ミュークルドリーミー」「ミュークルドリーミーみっくす!」を深掘りしていこうと思う。その最初を飾るのはやはり朝陽君の話しかない。

参照記事:ミュークルドリーミー キャラクター紹介第5回 「南川朝陽」 

南川朝陽の革新性

19話でれいくんが朝陽君の元に落ちてきて、25話でチームに合流したことは多くの人たちから驚きをもって迎えられた。一方的に助けるだけの白馬の王子様でも足手まといでもましてや性別をただのネタにしただけの男の娘でもない普通の男の子がチームに加わり、同じ立場に立つなんてのは女の子向けアニメとしてはあまり覚えがない。ただユメシンクロできるのはゆめちゃんだけというミュークルドリーミーの特性上、その革新性を十分発揮できたとは言えなかった。

「みっくす!」5話でみんなと同じように朝陽君も共にユメシンクロする。これで本当にゆめちゃん以外のメンバーと対等の位置につき、チームの一員として活躍できるようになった。さらにこの時から朝陽君とゆめちゃんの事を他のメンバーが生暖かく見守るようにも。

仲間と一緒にお世話に参加

その「みっくす!」5話でちあちゃんがやってきて、「ミュークルドリーミー」に赤ちゃんぬいぐるみのお世話という要素が加わった。「ママは小学4年生」以来、女の子向けアニメにお世話要素を入れてくることは珍しくない。しかし女の子だけがメインを張る作品中で赤ちゃんのお世話という要素を入れると赤ちゃんのお世話は女の子の領分、下卑た言い方をすれば「子育てなんて女がやる事」という事になってしまわないか。

だが女の子たちと同じ立場の朝陽君にそんな「甘え」は許されない。ちあちゃんのお世話セットがゆめちゃんではなく、朝陽君の元に届いた事はその象徴と言える。朝陽君もれいくんもちあちゃんのお世話にてんやわんやになるゆめちゃん達に何かできればと相手を気遣う。

その意味で「みっくす!」7話は大きな転回点だ。ゆめちゃんは相変わらずちあちゃんのお世話にてんてこまい。一方の朝陽君は試合を控え、テニスの練習に明け暮れる。これだけを見れば女性が子育てをし、男性が仕事に打ち込むという昔ながらの様式に見える。だが、ゆめちゃんもチア部で朝陽君の応援をするための活動があり、その練習をしているのだ。朝陽君もその事をよく理解している。

事が終わり、朝陽君もみんなと同じようにちあちゃんのお世話に参加する事になる。その後朝陽君はれいくんを練習台に一人でおむつ交換ができるようになり、みんなが夏休みの宿題にかかりきりになった時にはちあちゃんを安心して任せられるくらいになった。だからといって自らを「イクメン」と称してドヤ顔することも無い。なぜならそこにいる仲間として当然の事をしているだけだから。

幼なじみ新時代

近年、幼なじみは「滑り台」とか「負けフラグ」とか言われていることに対するカウンターのような作品を散見する。「二組の幼なじみの物語」として完成された「ミュークルドリーミー」はまさにその流れを汲んだものと言える。杉山先輩を闇から救ったのはその隣で彼を支え続けた幼なじみの百合先輩だった。その二人の姿にあこがれたゆめちゃんの隣にはいつだって朝陽君がいる。

キャンプに行くとき、京都旅行、ハロウィンの仮装、誕生日やクリスマスパーティー、そしてちあちゃんのお世話やユメシンクロで「いつものみんな」が集まった時にはそこに朝陽君の姿もある。仲間として同じように悩み、助け合いながら楽しい時も大変な時も手を取り合って一緒に歩んでいく。男女の差を否定するのではなく、認め合う事で今の時代に沿った新たな「プリンス」像を提示したとも言えよう。そしてサンリオはかなり早い段階からそういった多様性を重要視して、キャラクタービジネスを行ってきた。

この「ミュークルドリーミー」の後、たて続けに女の子向けアニメ(ワッチャプリマジ、デリシャスパーティープリキュア)で「主人公に想いを寄せる幼なじみの男の子」が現れた。朝陽君の後を受け継ぐ彼らがいかなる「プリンス」像を見せてくれるのか注目したい。


ミュークルドリーミー みっくす!総括

2022-03-27 14:33:00 | アニメ
前回で実質的な最終話を終わらせて、余った一話でほぼ全編総集編をやるというある意味前代未聞な最終回。この「みっくす!」自体が急ごしらえ感があったので仕方ないというか、これもまたミュークルらしいというべきか。とはいえアニメといちなる回をきちんとリンクさせた事だけでもこの最終話をやった意味があったと思う。

というわけで今回の総括はクールごとに分けてのものにしていこうと思う。

試行錯誤の第1クール
この第1クールにおいてはいろいろな新要素を投入していても「ミュークルドリーミーみっくす!」という(アニメではなく)番組をどうしていきたいのか見えないまま進んでいた感が強かった。

だからどうしてもこの第1クールのエピソードは低調感が否めず、2期特有の「終わったアニメを無理やり続けた」という感覚を持たざるを得なかった。

元より「二組の幼なじみの物語」として完成された感のある前シリーズを引き継いだものであるだけになおさらだ。

起動の第2クール
それが変わったのは14話ラストであっきーの「きゅーーーーん」が来たことだろう。これでアッキー→ゆめちゃんという流れができて、ようやく「みっくす!」としての物語が起動できた。ここから過去の遺産も有効に活かせるような余裕も生まれてきた。「ミュークルドリーミー」はやはりラブコメ要素あってこそなのだなぁと再確認した。

そしてこの頃になるといちなる(実写)回もフォーマットが固まってきて、楽しみ方も見えてきた。

進行と発展の第3クール
第3クールはアクムーちゃんの過去とアクムーランド建設の本格化から始まり、みんなの夢、サンシャルル結成、まいらちゃん、そして朝陽君と杉山先輩の誕生日、ハロウィンやクリスマスといったイベント盛りだくさんだった。

アクムーちゃんが物語の動力として積極的に動き出し、第2クールから引き続きのラブコメ要素がこのイベント盛りだくさんの第3クールをさらに盛り上げていった。

収束の最終クール
最終クールはちあちゃんのドリームパートナー探しを軸にほぼ約束されたアッキーの失恋、アクムーちゃんの孤独とそれに寄り添い続けたゆに達といったところで物語を収束させていった。

かなりドタバタした収束ではあったけれど、ともかく怖くしないようにハッピーエンドにもっていくんだという意思は感じられた。

まとめ
久しぶりの昼間のサンリオアニメという事でかなり期待していた作品ではあったが、ここまで入れ込める作品になるとは思っていなかった。

ただ2年間コロナ禍に振り回された感があり、「みっくす!」への移行における試行錯誤もシリーズ全体に少なからぬ影響を与えたのではなかろうか。

次からは物語を少し深掘りしていこうと思う。「エピソード紹介」とは異なり、取り上げるのは単独のエピソードとは限らない。