さすがに後日譚にかける時間はなかったか。最終回でも丁寧に伏線を回収し続けたその執念には感服する。その分ばたばた感はぬぐえなかった。あと2話、いや1話あればストーリーは名作の領域に達しえたかも。
以下、総括。
新番組当初から∀ゾイドなどと言っていたわけであるが、その名に違わず∀ガンダム並の丁寧な展開を進めることができた。この丁寧さは前に述べた「マジレンジャー」と「響鬼」の逆転現象と似たような事態を「エウレカセブン」に対して引き起こした。
当初、オリジナルロボットアニメとして期待の新作として始まった「エウレカセブン」は高い評判をもって受け入れられたのに対して、「ゾイドジェネシス」は従来の玩具主体作品であり前作「ゾイドフューザーズ」がたいした評判を受けなかったせいで前評判はそこそこ程度でしかなかった。
その後ゾイドジェネシスは丁寧な展開を心がけ、戦記物として正しい方向へ進めた。対する「エウレカセブン」はまだ総括の段階ではないのでここでは触れないが、結果だけを言うなら「エウレカセブン」は評判を落とし、「ゾイドジェネシス」は評判を高めた。
現在多くの作品が戦闘はそこそこ描けるが、その戦闘を理屈付ける戦術戦略をを描けない中で戦術戦略を略さずに丁寧に描けただけでも評判を上げるにたる事といえよう。
それだけではなく序盤に張り続けた伏線を中盤から後半にかけてそれこそ「いや、そこまでやらなくてもいいから」ってまで回収した妥協の無さは感服するに余りある。そのために一つ一つの話に深みが無くなってしまったのは良し悪しではある。
もう一つ忘れてはならないのは萌えアニメとしての進化だ。「陰陽大戦記」もこの進化の道をたどったが、進化の度合いはそれと同程度、キャラ人気と販促という面からすればそれを上回る進化を遂げた。「陰陽大戦記」のような迷走をしなかった分、中途のストーリーは確実に上回っている。キャラのその後にちゃんとスポットが当てられていればストーリー全体としてはもちろん、萌えアニメとしての評価も高まっただろう。
確かに作画面はCGはともかく通常作画において許容範囲を超える程ひどいのもあった。それがこの作品を名作の座からすべり落としたのは残念無念。
最後に指摘しておきたいのは主題歌「夜鷹の夢」の事だ。確かにアニメのオープニングの部分だけ聞くと意味不明な感じを受けるだろう。タイトルも歌の内容も。だが、この曲をフルコーラスで聞くとその意味するところを読み取れる。夜鷹とはF-117ナイトホークの事、歌の内容も湾岸戦争からイラク戦争を歌い上げた反戦歌なのだ。確かにバリバリアクションのロボットアニメにはふさわしくない選曲かもしれないが、戦記物としてならこの選曲は良い選択だったのではないか。(種死もこれくらいの曲を主題歌に持ってきてみせればよかったのに)
反動主義型リアルロボットアニメというここ数年間ロボットアニメスタンダードなるであろうフォーマットのある種理想的な作品となった。プリキュアの裏番組というある意味深夜アニメより絶望的な環境の中にあって、ここまでの徹底を見せてくれたことに惜しみない賞賛を送りたい。
本来総括でアフェリエイトを置くことはしないのだが、今回は設置しておこう。