うたのすけの日常

日々の単なる日記等

結核療養所 3

2015-08-03 09:48:35 | 結核療養所物語

うたのすけの日常 結核療養所物語 3 

2007-02-25 09:12:48 | 結核療養所物語

                     先ずはベッド周りの整理整頓から

 ベットは木製、年季を経て黒光りしていて、骨組みは頑丈そのものである。マットは見てすぐに小学校当時を思い出す、体操の時間によくでんぐり返しするときに使ったそれと同じようなマット。しかし中味は藁だと教えられる。代々の患者の寝跡がくっきりとへこんでいる様は、不気味といえば不気味である。代々の患者は無事退所したのか、それとも療養空しく身罷ったのか。そんな思いが去来する。
 

 「昨日は寝づらかったでしょう」そういって同室の患者の助言で布団の敷きなおしにかかったのである。マットのへこみを計って先ず下に、古雑誌や古新聞を重ねて敷いてマットを置き、さらに上のへこみに同じように新聞雑誌を重ねて敷布団を敷いた。夕べ布団の中に沈み込むような気分だったのだが、これで改良されたわけである。色々手伝ってくれたりしてあり難いことである。
 

 隣のベットとの間に木製の物いれが置かれていて、枕頭台と称するのか、患者たちはその上に茶飲みセットを置き布巾なんかかけている。かがみこんで引き出しの中に小物類をいれ、ドアを開ければ中は二段づくりでちり紙やタオル等を入れてなにかと大変である。昨日姉ちゃん手伝っていってくれればいいのにと、もう不満がでる。いけないことであると、すぐに反省する。屑入れはブリキ製のがベットの後ろにかかっている。手元にかければとおもったりしたのだが、これは掃除のおばさんが真ん中の通路から収集しやすくしてるのである。合理的である。わざわざ狭いベットの間に入ってきて、埃をたてて集めることはないのである。患者はまた器用にゴミをくずかごに投げ入れたりする。

 枕元の壁にベット幅の棚がある、他の人に見習って、そこに歯ブラシをコップに立てて置いたり、当座のちり紙を重ねる。掛け布団の上に半纏をかけた。寒くなれば丹前がお出ましになるわけであろう。かみさんが送ってくれる手筈になっていた。ざっと整理がついたところでベットに潜り込む。なんといっても肺病病みであり、今は安静が仕事の身の上なのである。安静度は5度?で一番確か軽い部類だったと思う。同室の患者たちもあたしの同程度の病状と見た。なかには退所の近い人もいるらしい。とにかく誰も肺病患者には到底見えないのである。
 
 あたしだって昨日まで普通人と変わらぬ生活をしていたのである。今の置かれている状態が、いかにも不思議な気がした。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿