映画館で見る映画の魅力に目覚め、今年になって 3 本目は、クリント・イーストウッド主演・監督の「運び屋」だ。
88 歳のイーストウッドは、スクリーン上にどんな姿を見せてくれるのだろうか。
STORYはこうだ。
90 歳のアールは、花の農園を経営していたが倒産し差し押さえられている。
娘の結婚式すらすっぽかしてしまうほど仕事に熱中したアールは、今や家族に見放され孤立無援だ。しかし、めげることなくパーティで知り合った男に囁かれた仕事、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」となる。
それは、指定されたガレージからガレージへ車を走らせればよいというもの。映し出された高速道路に「イリノイ」の表示があったから、ミシガン湖畔のシカゴあたりまで運ぶのであろうか、もし積み荷の場所がメキシコ国境近くとすれば 1000km 以上の距離だ。アールは、疲れも見せずラジオの音楽に合わせて歌いながら、陽気に荒漠たる風景の高速道路を飛ばして行く。
3 回目とか、運びの回数が文字で画面に映し出され、何回もその運搬が成功したことが示される。
回を重ねるたび金周りがよくなり、アールの車はおんぼろのフォードのトラックからトヨタの黒塗りの高級車に変わっていく。
13 回目ともなると、さすがに麻薬取締官側も躍起となり、捜査の網がアールに迫ってくる。
一方、麻薬団の組織も、彼の約束にルーズな輸送方法に不満を持つ一派の勢力が強まって、「あの年寄りの運搬人は始末してしまおう」の雲行きとなる。
そんな折りしも、輸送中のアールに、彼の妻が重い病にかかり危篤であると知らせが入る。これ以上時間を遅らせるとアールが麻薬カルテルの一味に消されることは必定だ。しかし、アールは輸送を中断し、しっかりと妻に付き添い、妻や家族の信頼を得る。その葬儀も夫の役割を立派に果たした。
そして、仕事に戻ったとき、高速道路上のヘリまで投入した大捕り物作戦で逮捕される。
アールは法廷で裁かれ、家族が見守るなか、弁護人の熱心な弁護によって有利な判決が期待されるが、突然弁護を断って自ら服役を申し立てる。
最後は、刑務所の花壇で花の世話をするシーン、最初が自分の農園の花壇でユリを摘むシーンであったように。
主人公アールの妻の死が象徴するように、人生の終末は誰にでも確実にやってくるものだ。”だからといって神経質になる必要はなく、生きている間は元気に明るく過ごそう。そして家族の絆は大切にしよう”というのがこの映画のメッセージであるように思った。
(3.15 朝日新聞夕刊に載ったクリント・イーストウッドのインタビュー記事)